著者
秋元 望 本多 健治 松本 恵理子 川田 哲史 右田 啓介 牛島 悠一 高野 行夫
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.478-484, 2010-09-25 (Released:2010-10-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:神経障害痛の発症機序にミクログリア細胞の関与が示唆されている.ミクログリア細胞の活性は抗生物質ミノサイクリンで抑制されることが報告されているので,神経障害痛発現に対するミノサイクリンの抑制効果を検討した.方法:神経障害痛モデルはマウスの坐骨神経を部分結紮し,作製した.痛みの強さはvon Frey フィラメント刺激に対する痛み様行動をスコア化し,評価した.脊髄グリア細胞の変化は,免疫組織染色法とウエスタンブロット法により検討した.結果:坐骨神経部分結紮後,結紮側で痛みスコアが上昇(アロディニア発現)し,脊髄ミクログリアの発現量が増加した.ミノサイクリンを結紮前(20 mg/kg)とその後7日間(20 mg/kg/日)の反復投与によりアロディニアの発症と脊髄ミクログリアの発現量が抑制された.ミノサイクリンを結紮3日後から7日間(20 mg/kg/日)の投与により,アロディニアの発現は一部抑制されたが,ミクログリアの発現量は抑制されなかった.結論:神経障害痛に対してミノサイクリンは有効であり,その作用機構に脊髄ミクログリア細胞の活性の抑制が一部関与することが示唆された.
著者
高野 行夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.134, no.10, pp.997-1005, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

Pain control is very important since, even today, 20 million people suffer from neuropathic pain. Although many basic science and clinical researchers have made efforts to control pain, the mechanism of neuropathic pain is unfortunately still not fully understood. Morphine, a prototypical opioid, is a useful medicine to relieve severe pain. However, repeated or continuous use of morphine and other opioids are associated with a potential risk of analgesic tolerance, which requires an increase in dosage to maintain the same efficacy. In addition, morphine is not always effective in neuropathic pain. In this review we focus on: (1) the role of muscarinic receptors in the spinal cord and anterior cingulate cortex (ACC) in neuropathic pain, (2) how chemokine (C-C motif) ligand 1 (CCL-1) is involved in neuropathic pain, and (3) the novel mechanism of morphine tolerance. The findings in this study may cast new light on novel mechanism of neuropathic pain and development of novel clinical medicines in the future.
著者
本多 健治 高野 行夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.1, pp.39-44, 2007 (Released:2007-07-13)
参考文献数
12
被引用文献数
2 6

近年,痛みに関する研究はめざましい進歩をとげているが,臨床では治療困難な痛みが数多く存在し,特に既存の非ステロイド性抗炎症薬が無効であるうえ麻薬性鎮痛薬に抵抗性を示す神経因性疼痛(Neuropathic pain)が問題になっている.そのような背景から,神経因性疼痛モデルの開発とその評価を行う疼痛試験法が研究されてきた.著者らは,ここ数年,神経因性疼痛モデル動物を用いて,その発症機構とそれに有効な鎮痛薬の検索について研究している.そこで本稿では,著者らの実験経験を基に神経因性疼痛と炎症性疼痛の疼痛評価法について解説する.