著者
鷹野 景子 細矢 治夫 岩田 末廣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1395-1403, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

古典的な酸化数概念を検討するために分子内のある特定の原子種に注目し,原子のまわりでの精密な電子数解析を,非経験的分子軌道法(ab initio MO method)に基づいて系統的に行なった。対象とした原子種は,H,C,N,O,F,P,S,Clである。正四面体型イオン,XO4n-(X=si,P,S,Cl,Ar)の系列についても計籏を行なった。ある原子を中心とし,半径Rの球における差球平均電子密度,Δρo(R)=ρo(R)-〓 ρoi(R)を種々の精度で計算し,基底関数依存性も調べた。その結果,原子のまわオりの電子数の変化は古典的な酸化数から予測されるほど大きくないが,Δρo(R)の値はわずかながらも段階的な有意の差を示し,古典的な酸化数に比例する量として解釈できることがおかった。このことは無機化合物だけでなく,有機化合物にもあてはまる。さらに,著者らの電子数解析と古典的な概念の間の一致を得るためには,CH,PH,NH,NOのようなイオン性の小さい結合に対して,酸化数の古典的な割りふりをつぎのように小修正すべきであることがわかった。C-H+1 → C-H+0.5 ; P-H+I → P-H0N-H+1 → N-H0.5 ; N-O-II → N-0-1
著者
山邊 信一 小原 繁 松下 叔夫 鷹野 景子 長嶋 雲兵 細矢 治夫
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

3年間にわたりデータチェックプログラムの改良を行い、データの追加における標準化、定式化をすすめた。また、データの誤り検出に活用するQCLDB辞書とそれを作成・充実するプログラムを改良したこの誤り検出プログラムは、収集済みの全文献データを対象として辞書を作成することと、粗データ中の全単語と辞書中の単語を高速に比較し、粗データ近傍に誤り内容を出力する機能を有する。このプログラムを利用して、1996年の収集粗データをある程度精製し、その後の本研究の班員が目の子作業による再精製を行ったところ、年号の間違いなど新しいミスを見つけだし、本検出プログラムの有効性を確認した。平成9年度加えたデータは、4005件で、全データ数36856件に上り、データ増大に対応できる新しい検索システムの構築が急務である。そこで次期データ検索システムのデザイン検討のため、市販のデータベースソフトを試験的に購入し、検索システムとしての評価をおこなった。さらにインターネットに対応したデータベース配布と検索支援システムの構築に関し、現在持っている検索プログラムをcgiとして利用して、分子科学研究所電子計算機センターのWWWで試験公開し、本格的な公開に向け、リレーショナルデータベースとの連係を中心にデータ内容と管理・運用の技術的な問題点の検討をすすめた。また海外のミラーサーバー構築のため、スイス、アメリカの研究グループと交渉をはじめた。この他、粗データの質的向上を目的に収集・査読者を対象とした講習会を分子構造総合討論会期間中に行った。またQCLDBを量子化学者のみならず実験家にもより広く利用してもらうため、ICQC(アトランタ)及び国際会議(福岡カンファレンス)でデモンストレーションを行った。研究成果として、1996年分QCLDBを冊子として学術雑誌THEOCHEMに掲載し、別に磁気デ-プ版を作成、配布した。
著者
平野 恒夫 長嶋 雲兵 鷹野 景子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本年度は、1)剛体近似の代わりに分子自由度を許す分子性結晶構造予測プログラムMDCPを作成し、テストとしてアルコールなど若干の分子に適用して期待した成果を得た。2)MDCPプログラムの並列化をほぼ終了した。3)ab Initio分子軌道法の分子動力学への導入分子動力学の最大の問題点はいかにして良いポテンシャル関数を手に入れるかという問題である。我々は、力を分子軌道法で求めながら分子動力学の各タイムステップを進めていく方法をとることを考えていたのであるが、まず手始めに、炭酸ガスの分子性結晶の構造を化学式CO_2のみから予測することを試みた。すなわち、炭酸ガス分子の2量体に関する相互作用エネルギーを高精度のab Initio分子軌道法で求めてexp-6型のポテンシャル関数にフィットし、その結果得られたポテンシャル関数を使ってMDCPによる分子性結晶の構造予測をやってみたところ、常圧および高圧での結晶構造、および10万気圧あたりから始まる相変化まで十分な精度で予測出来ることが判明した。なお、本来の目的は、分子集合体についての分子動力学計算において、ポテンシャル関数を使うかわりに、分子動力学の各ステップで量子化学的に力を計算することにあるので、計算が早く、かつ精度がよいという密度汎関数法の適用を考え、予備的な計算を行った。