著者
細矢 治夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.340-343, 2012-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

元素の周期表で第6周期のほぼ中央に位置する金と水銀の化学的な性質が,量子化学的計算と相対性理論による補正計算からどのように理解されるかを主に解説する。あわせて,ランタノイド元素のランタノイド収縮などの第6周期元素の性質についても若干議論する。
著者
細矢 治夫 時田 澄男 浅本 紀子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

われわれはこれまでの研究で、n次元の水素原子のシュレーディンガー方程式の解の角度部分の縮重度の一般式を導出し、それがパスカルの三角形を若干修正した非対称パスカル三角形によって容易に表現できることも示した。これは、化学者の帰納的直観に基づいて得られた代数的な処方箋であるが、この波動関数に数学的に厳密な裏付けを行うこと、及び得られた波動関数を動的にグラフィック表示するという二つの目的をもっている。以下に、本研究で得られた結果を列記する。i)アニメーション技法の開発簡単な操作で、原子軌道のn次元のイメージを把握しやすくするアニメーション技術を、市販のQTVRというソフトウエアを利用して実現した。ii)3次元の原子軌道表示の見直し3次元のd軌道も、切断する面の方向と位置を変えることによって、s型、p型、d型等いろいろな対称性をもった断面を得ることができた。iii)4次元の原子軌道の多面的な可視化ii)で得られた可視化の手法を4次元の原子軌道に拡張して適用することによって、4次元の原子軌道関数の極座標表示を直交座標系に変換してから、様々な等値曲面表示を行う手法を開発した。iv)原子軌道の縮重度とパスカルの三角形n次元の原子軌道の縮重度が、変形した非対称パスカルの三角形によって容易に表されることは既に見出しているが、微分方程式の解の代数的な構造の解析から、その数理的意味についての考察を若干進めることができた。
著者
鳴海 英之 細矢 治夫
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.295-296, 2014 (Released:2014-12-31)
参考文献数
7

A solution of 3d-Ising Model with boundary conditions was studied. Because of the lack of 3d-Pfaffian we used the symmetry of a cubic lattice to obtain the final results. We obtained 23% upper value of the transition point compared with the one which was given by Monte Carlo Method for a cubic lattice.
著者
鷹野 景子 細矢 治夫 岩田 末廣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1395-1403, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

古典的な酸化数概念を検討するために分子内のある特定の原子種に注目し,原子のまわりでの精密な電子数解析を,非経験的分子軌道法(ab initio MO method)に基づいて系統的に行なった。対象とした原子種は,H,C,N,O,F,P,S,Clである。正四面体型イオン,XO4n-(X=si,P,S,Cl,Ar)の系列についても計籏を行なった。ある原子を中心とし,半径Rの球における差球平均電子密度,Δρo(R)=ρo(R)-〓 ρoi(R)を種々の精度で計算し,基底関数依存性も調べた。その結果,原子のまわオりの電子数の変化は古典的な酸化数から予測されるほど大きくないが,Δρo(R)の値はわずかながらも段階的な有意の差を示し,古典的な酸化数に比例する量として解釈できることがおかった。このことは無機化合物だけでなく,有機化合物にもあてはまる。さらに,著者らの電子数解析と古典的な概念の間の一致を得るためには,CH,PH,NH,NOのようなイオン性の小さい結合に対して,酸化数の古典的な割りふりをつぎのように小修正すべきであることがわかった。C-H+1 → C-H+0.5 ; P-H+I → P-H0N-H+1 → N-H0.5 ; N-O-II → N-0-1
著者
細矢 治夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.782-785, 2000-12-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

電子が発見されたのが百年前だから, 科学者が原子や分子の存在を実証的につかんだのも百年前である。更にその後誕生した量子力学とエレクトロニクスの助けを借りて, 20世紀の化学は大きく発展した。自然科学や社会の中での化学の重要性と役割は, 原子や分子の実体を知らなかった化学の祖ラヴォアジェーが考えていたものよりはるかに大きい。世間の人の化学に対する認識もここまで上げる必要がある。こういう見方で, 化学だけでなく, 20世紀の諸科学や技術の発展を評価することができる。
著者
細矢 治夫
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第37回情報化学討論会 豊橋
巻号頁・発行日
pp.O06, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
7

現在世界的に流布している有機化学の成書や教科書の中で、不飽和共役炭化水素に関 する交差共役(cross conjugation)の概念の重要性について説いてあるものはほとんどない。演者は、グラフ理論的分子軌道法による解析を行った結果、この概念が有機電 子論の基礎的な裏付けに重要な役割を果たしていることを明らかにし、その適用限界の指摘も行うことができた。この理論は、芳香族性、反芳香族性の議論にまで展開することができる。なお、この議論はHMO法レベルのものであるが、より精度の高い理 論にも十分耐え得るものである
著者
小野寺 光永 井須 芳美 長嶋 雲兵 吉田 裕亮 細矢 治夫 永川 祐三
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Chemical Software (ISSN:09180761)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.113-128, 1999-09-15 (Released:2000-03-28)
参考文献数
7
被引用文献数
2

生体の断層イメージを測定する核磁気共鳴(NMR)のシグナルや、Belousov-Zhabotinsky反応(BZ)などの振動反応の酸化還元ポテンシャルには、測定環境によりSN比が急激に悪くなる時系列データが見られ、そのノイズ除去が問題となっている。また、生体における時系列データの一つである心電図においても、ノイズによる心電図解析の妨げが問題となっている。そこで本研究では、フーリエ変換、ベイズモデル、トレンドモデルの3手法を用いたノイズ除去を行い、それぞれのモデルによる結果の比較、検討を行った。数値実験には、NMRのシグナルに代表的なMultiple nonstationary frequenciesの近似関数と心電図の2種類のデータを用いた。その結果、Multiple nonstationary frequenciesの近似関数では、ベイズモデルが最も有効であった。心電図では、フーリエ変換により、基線の揺れを抑えることができ、ベイズモデルやトレンドモデルを用いて平滑化を行った後に、フーリエ変換によってノイズを除去する方法が有効であることが示唆された。
著者
細矢 治夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
情報化学討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.J14-J14, 2006

演者は1971年にトポロジカルインデックスZを提案し、鎖式飽和炭化水素の沸点等の熱力学的諸量との構造活性相関を調べた。更にそのZを用いたグラフ理論的分子軌道法への展開をはかってきた。最近そのZが、情報化学的な役割だけでなく、ピタゴラスの3角形、ヘロンの3角形、ペル方程式の解等の,基礎数学や整数論の分野の諸定理や未解決問題に極めて有用な役割を果たすことが分かって来たので、その概略を紹介し,情報化学的な面への展開を議論したい。
著者
細矢 治夫
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.64-65, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
15

既知化合物の少なさや、目立たぬ性質等の原因で、ポリエンの化学は等閑視されて来た。「交差共役」も有機化学の中では軽視されて来た。しかし最近、新化合物や、物理学者の興味をひく性質が見出され、交差共役というキーワードが頻出している。我々はその交差共役の重要性を認め、ポリエン化学の理論的な再構築を始めている。先ず、最も基本的な交差共役炭化水素を、ケクレ構造を1個しかもたない、直鎖以外の非環式、及び単環のポリエンと決めた。これにより、ラジアレン、フルベン、キノイド等も交差共役系にふくまれる。これらの安定性は、トポロジカルインデックスZと極めて高い相関関係にある。同様に、「平均共役長」Lによってもその安定性を半定量的に予測できる。更に、これらの議論を「有機電子論」の理論的裏付けと適用限界の示唆にまで拡げる。
著者
細矢 治夫
出版者
社団法人日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, 2006-02-20
被引用文献数
1
著者
細矢 治夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.288-293, 2000
被引用文献数
1

昨年科学技術振興事業団から,「量子化学文献データベース (QCLDB) の開発・構築への貢献」により科学技術振興賞の功労賞を受けた量子化学研究会 (Quantum Chemistry Database Group) の発足と,量子化学文献データベース (Quantum Chemistry Literature Database) について解説する。まず,量子化学と量子化学計算,特に非経験的計算(ab initio 計算)が化学の中で果たす役割と,その歴史的な流れを解説する。次に,ab initio 計算の増加に対応してQCLDB が科研費の特定研究から生まれ,今日に至るまでの経緯と,そのデータベースの作成過程とその問題点に触れる。
著者
山邊 信一 小原 繁 松下 叔夫 鷹野 景子 長嶋 雲兵 細矢 治夫
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

3年間にわたりデータチェックプログラムの改良を行い、データの追加における標準化、定式化をすすめた。また、データの誤り検出に活用するQCLDB辞書とそれを作成・充実するプログラムを改良したこの誤り検出プログラムは、収集済みの全文献データを対象として辞書を作成することと、粗データ中の全単語と辞書中の単語を高速に比較し、粗データ近傍に誤り内容を出力する機能を有する。このプログラムを利用して、1996年の収集粗データをある程度精製し、その後の本研究の班員が目の子作業による再精製を行ったところ、年号の間違いなど新しいミスを見つけだし、本検出プログラムの有効性を確認した。平成9年度加えたデータは、4005件で、全データ数36856件に上り、データ増大に対応できる新しい検索システムの構築が急務である。そこで次期データ検索システムのデザイン検討のため、市販のデータベースソフトを試験的に購入し、検索システムとしての評価をおこなった。さらにインターネットに対応したデータベース配布と検索支援システムの構築に関し、現在持っている検索プログラムをcgiとして利用して、分子科学研究所電子計算機センターのWWWで試験公開し、本格的な公開に向け、リレーショナルデータベースとの連係を中心にデータ内容と管理・運用の技術的な問題点の検討をすすめた。また海外のミラーサーバー構築のため、スイス、アメリカの研究グループと交渉をはじめた。この他、粗データの質的向上を目的に収集・査読者を対象とした講習会を分子構造総合討論会期間中に行った。またQCLDBを量子化学者のみならず実験家にもより広く利用してもらうため、ICQC(アトランタ)及び国際会議(福岡カンファレンス)でデモンストレーションを行った。研究成果として、1996年分QCLDBを冊子として学術雑誌THEOCHEMに掲載し、別に磁気デ-プ版を作成、配布した。
著者
細矢治夫著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1983