著者
鹿内 健志 南 孝幸 官 森林 上野 正実
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-36, 2007-03-15
参考文献数
7
被引用文献数
1 6

沖縄県におけるサトウキビ生産の担い手として設立が推進されたサトウキビ生産法人は,圃場分散と土地生産性の低さの問題を抱えている.サトウキビ生産法人の圃場は広域に分散しており,作業効率が低下し適期作業に大幅な遅れが生じている.また,単収は県の平均単収を下回っているのが現状である.本研究では集積された農地の分散を示す地理的な指標をGISにより解析し,これらの指標と単収との関係を調査し,圃場分散が生産性に及ぼす影響を検討した.分散を表す地理的な指標として周囲圃場面積,事務所からの距離,圃場面積の3つの指標を提案したが,周囲圃場面積と単収については正の相関があり,事務所からの距離と単収については,負の相関があることが示され,圃場分散がサトウキビ収量に影響を及ぼしている可能性があると示唆された.
著者
鹿内 健志 大城 梨実 官 森林 赤地 徹
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.142-154, 2017

<p>機械による効率的な農作業を進めるためには,圃場毎の作業実態に応じて作業機を最適な方法で利用する計画を策定する必要がある.最適な作業計画のためには,作業機の作業面積,作業内容および作業時間などの作業履歴を記録し,データを詳細に分析し,その結果から最適な作業方法を明らかにする必要がある.サトウキビ機械収穫作業において収穫機と搬出機の両方に市販の安価なGPSを取り付け,両者の軌跡を分析することで,数パーセントの誤差で,収穫機と搬出機の作業実態を分析することができた.有効作業効率は小型収穫機は0.29(一方向刈)および0.37(往復刈),中型収穫機では0.27(一方向刈)および0.38(往復刈)であった.圃場作業量および有効作業量は中型収穫機は小型収穫機のほぼ二倍であった.収穫機と搬出機の相互の挙動を解析することで,作業の非効率な部分を明らかにし,効率の改善の可能性を示すことができた.そのことにより,小型収穫機については搬出機との連携作業を最適化することで,現在より能率向上できる可能性があることがわかった.また,降雨量と機械稼働の関係から小型収穫機は中型収穫機より稼働率が6%程度高い可能性があることがわかった.</p>
著者
鹿内 健志
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.53-107, 1998-12-01

本論文は軟弱地盤において作業を行なう農用車両の走行性に関して, 車輪と土の力学的相互作用の面から究明し, さらに, 耕盤を有する圃場の車両に対する支持力特性について解明し, 農用車両走行部の力学的設計に不可欠な基礎的知見を提示したものである。まず, 車輪と土の力学的作用を把握するため走行車輪下の土の変形計測システムの開発を行なった。本システムにより気乾豊浦標準砂を対象に車輪走行実験を行い, 走行車輪下の土の変形およびけん引力, 接地応力など走行性に関する力学的諸量の計測を行なった。また, 車両の支持力特性について, すべり線法による理論解析を行なった。耕盤を有する圃場の車両に対する支持力問題を, 剛盤上の摩擦性塑性体の二つの近接する荷重に対する支持力問題と理想化した。荷重間隔, 荷重幅および耕盤深さに応じて五つのすべり線場を設定し, これらに基づき支持力の計算を行なった。以下, 各章ごとの総括と結論を述べる。第1章において, 新たに開発した走行車輪下の土の変形計測システムの構造と特徴について論じた。厚さ25μm, 直径5mmのポリエステル製の円形マーカを土槽側壁の内側に設置し, マーカの土に伴う動きを透明な土槽側壁を通し連続写真撮影した。2軸X-Yテーブルと拡大CCDカメラからなる平面位置検出装置により写真からマーカ座標を読取った。これにより土中の変位分布を計測し, さらに有限要素解析における方法を用いて土中ひずみ分布を算定した。計測の不確かさ解析により, 従来の土の変形測定法に比較し, 簡易な方法で, 微小変形から大変形にわたり高精度で計測が可能であることが確認された。また, 新たに開発したマーカは薄いポリエステル製で周辺土壌へ影響を与えることなく, また, 含水比が比較的高い一般の圃場の土に対して使用可能である。第2章では, 土の変形解析システムにより計測した走行車輪下の土の変形解析結果について述べた。車輪は剛性車輪を対象とし, 車輪表面材の摩擦係数による違いを比較するため, 鋼鉄製車輪と鋼鉄製車輪の表面に加硫したクロロプレンゴムを5mm厚さでコーティングしたゴム被覆車輪の2種類を供試した。静的沈下時の土粒子の動きの変位ベクトルは, ゴム被覆車輪および鉄製車輪とも車輪中心を通る鉛直線を中心軸として対称に分布する。車輪が回転すると, 変位ベクトルは車輪前方部で, 前向きの水平成分を持つものと後向きの水平成分を持つものの二つの領域に分けられることがわかった。土の経時的な動きを明らかにするため, 深さ毎の土粒子の変位の軌跡を求めた。また, 土粒子の軌跡を指数関数を用いて表現した。土粒子は車輪中心線が真上にくると, 大略, 最大深さまで動く。ゴム被覆車輪下の土粒子の描く曲線は鉄製車輪のものより土中深くまで移動し, 後方への変化も大きい。車輪と土の接触面では土は車輪表面に固着して動くのではなく, 車輪と土との間にすべりが生じる。鉄製車輪では摩擦係数が小さく, 接触面での車輪と土とのすべりが大きくなり土粒子の変位が小さいと考えられる。ゴム被覆車輪および鉄製車輪下の土中ひずみ分布を等値線図により詳細に示した。各すべり率における鉛直方向・水平方向の垂直ひずみおよびせん断ひずみの特徴について述べ, ゴム被覆車輪と鉄製車輪のひずみ分布の比較を行なった。第3章では, ゴム被覆車輪および鉄製車輪の接地面法線・接線応力分布とけん引力の変動現象について述べた。法線および接線応力の分布はいずれの車輪においても車輪前方部で最大値を示す凸型の曲線を描く。また, 法線および接線応力の最大値はすべり率の変化に伴い変化する。すなわち, 最大法線応力はすべり率の増大とともに減少する。最大接線応力はゴム被覆車輪ではすべり率40%付近まですべり率とともに増加し, その後一定値を示すが, 鉄製車輪ではすべり率40%付近で極大値を示す。接線応力の法線応力に対する比(接地応力比)は, ゴム被覆車輪および鉄製車輪とも車輪と土の接触が始まる部分と接触が終わる部分で高い値を示し, 最小値はその間に現れる。最小値が現れる位置はすべり率が大きくなると車輪前方部に移動する。けん引力の経時的な変動現象を究明するため, その波形を車輪回転角を変数とする正弦関数で近似した。ゴム被覆車輪のけん引力の変動はすべり率によらず, 短周期の振幅の小さい微小振動を示し, 鉄製車輪の場合, 長周期で, すべり率が増大するほど振幅の大きくなる波形を示す。ゴム被覆車輪と鉄製車輪のけん引力の変動の周期と振幅について車輪下の土の破壊態様と照応して論じた。第4章では, 耕盤を有する圃場の車両に対する支持力問題について論じた。すなわち, 本支持力問題を, 二つの近接する荷重が剛盤上の摩擦性剛塑性体に作用するものとしすべり線法により解析を行なった。2荷重によるすべり線場が干渉し, 一般にPrandtl場は成立しないが, 荷重幅, 荷重間隔および耕盤深さに応じて5種