- 著者
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渡邉 健太
寳川 拓生
福澤 康典
上野 正実
川満 芳信
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
- 巻号頁・発行日
- vol.90, no.3, pp.324-333, 2021
- 被引用文献数
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<p>南大東島では大規模かつ効率的なサトウキビ生産が行われている一方で,サトウキビの単収は低く,年次変動が大きい.この理由として,夏場の降水量が少なくしばしば干ばつに見舞われることが挙げられる.島では積極的に灌漑設備の導入に取り組んでいるが,依然としてサトウキビ生産は降雨に大きく左右されている.その影響を解明し合理的な灌漑方法を提案するため,本研究では南大東島の過去の気象データに基づき株出しサトウキビ畑における水収支を算出し,特に夏季の水収支とサトウキビの生育および収量との関係について明らかにした.梅雨明け後の降水量は少なくサトウキビの消費水量が有効雨量を大きく上回ったため,7~9月における不足水量は多く,この3か月間の不足水量は年全体の46%にも相当した.そこで,7~9月に着目し解析を行ったところ,各月の不足水量と茎伸長量および単収との間には負の相関関係が確認され,特にこの時期の不足水量が増加するとサトウキビの成長が著しく制限され,収量を低下させると考えられた.また,この傾向は最大風速が25 m s<sup>–1</sup>以上となる台風年度を除くとより顕著であった.非台風年度において7~9月の合計不足水量から合計伸長量および単収を推定する回帰式を用いると,この時期の不足水量が100 mm増加するごとに伸長量が25.1 cm,単収が14.1 t ha<sup>–1</sup>低下することが明らかになった.以上より,7~9月の水収支がサトウキビの生育および収量に強く影響を与え,この時期における灌漑が高単収の実現に必要不可欠であることが本研究から改めて示された.</p>