著者
平松 亮 田辺 英紀 近藤 明悳 村尾 健一 中澤 和智 島野 裕史 安田 宗一郎 井上 洋人 柴田 真帆 高畠 望 國枝 武伸 三木 義仁 黒岩 敏彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.264-268, 2009 (Released:2010-03-20)
参考文献数
14

Terson's syndrome (TS) is a vitreous hemorrhage that develops in patients with subarachnoid hemorrhage (SAH) most frequently due to ruptured aneurysm. The reported incidence of TS has varied between 1.4 and 16.7%. Of 36 consecutive SAH patients that we treated, TS was diagnosed in 12 patients (33%). The reason that the incidence of TS in our patients series was much higher than previously reported was due to the use of a mydriatic agent to accurately diagnose TS and the examination of all 36 consecutive patients, including those with a high Hunt and Kosnik grade. In our study, the incidence of TS was significantly greater among patients with a higher grade of SAH according to a H & K classification, as noted in past reports (P-value=0.0047<0.05). Additionally, the incidence of TS was greater in patients with a higher SAH grade according to the classification proposed by Fisher (P-value=0.088>0.05). In this connection, we speculated that the mechanism of TS was the reflux of an abundance of blood drained into the orbital cavity via the Virchow-Robin space. Long-term retention of blood in the vitreous body may cause cell damage and delay the start of rehabilitation. Therefore, early treatment is preferable.
著者
矢木 亮吉 宮地 茂 平松 亮 川端 信司 藤城 高広 黒岩 輝壮 谷口 博克 山田 誠 山田 佳孝 大西 宏之 山下 太郎 松原 功明 黒岩 敏彦
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.oa.2017-0008, (Released:2018-01-29)
参考文献数
13

【目的】今回われわれは,本邦で承認されている脳血栓回収療法機器それぞれにおける医療費およびその治療成績を比較するために,患者毎の保険請求額,手技料,デバイス料と治療成績を集計し検証した.【方法】本学および関連施設にて「K178-4 経皮的脳血栓回収術30,230 点」を算定した患者126 例を対象とし, Penumbra system を使用した症例を「P 群」,Stent-Retriever を使用した症例を「S 群」,両デバイスを併用した症例を「P+S 群」とし,各症例の入院にかかる総保険請求額,手術にかかる手技料およびデバイス料,治療成績について比較した.【結果】全体では費用に対する治療成績に優劣は認めなかったが,後方循環病変ではS 群でmodified Rankin Scale (mRS)0-2が高率であり,1 日平均請求額が低額であった.前方循環病変ではP 群でmRS0-2 が高率であり,1 日平均請求額および総保険請求額が低額であった.【結論】急性期血栓回収術施行症例では,デバイス料がS 群で最も安価であった.また閉塞部位が前方循環ではP 群,後方循環ではS 群が治療成績良好で費用も低額であり,良好な治療と判断した.
著者
森田 大 河野 龍而 黒岩 敏彦 冨士原 彰
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.309-319, 1995-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage,以下SAHと略す)発症時の多彩な心電図変化はよく知られている。このうち,ST上昇を呈する症例の冠動脈所見ならびに左室壁運動に注目した報告はない。1988年10月から1994年2月に経験したSAH226例のうち21例(9.3%)に入院時心電図でST上昇が認められ,このなかの8例に検討を加えた(ST群)。対象は頭部CTにてFisherのgroup分類がST群のそれに類似し,入院時にST上昇を認めない5症例とした(C群)。冠動脈造影と左室造影は破裂脳動脈瘤確認造影時に引き続き,ST群はST上昇の持続している入院9.3±6.4時間に,C群は入院9.1±4.5時間後に行った。左室局所壁運動の解析にはcenterline法を用いた。ST上昇はST群全例にV4からV6誘導にみられた。ST群の冠動脈には攣縮や器質的病変による閉塞所見は認めなかった。ST群の左室心尖部の局所壁運動はC群に比べ有意に低下していた(-2.58±1.03 vs -0.45±1.61, p<0.04)。ST群の1例は入院2日目に死亡した。経過中の心超音波検査にて壁運動は回復傾向にあった。ST群のうち3例に発症3週後の慢性期冠動脈,左室造影を行ったところ,局所壁運動は急性期のそれに比べ改善していた(-3.15±0.10 vs -1.22±0.72, pp<0.05)。発症3週後の心電図ではST群5例にT波の陰性化と,その5例のうち3例に新たな異常Q波が認められた。C群ではT波の陰性化やQ波の出現はなかった。ST上昇を伴うSAH症例にみられた一過性の左室心尖部における壁運動低下は気絶心筋といえるが,その機序は不明である。