著者
菅田 耕 黒木 浩史 濱中 秀昭 猪俣 尚規 増田 寛 樋口 誠二 帖佐 悦男
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.86-88, 2012-03-25 (Released:2012-06-26)
参考文献数
5

Cervical anginaはPhillipsによって1927年に初めて提唱された病態で,何らかの頸椎近傍の病変に由来する狭心症発作性前胸部痛と定義され,さまざまな報告がなされている.この胸痛は生命への危険性を有する虚血性心疾患と同様な疼痛を呈することから,心疾患による胸痛との鑑別が重要である.頚椎・頚髄疾患による胸痛の発生機序に関しては後根への刺激,前根への刺激,椎間板や椎間関節からの関連痛,交感神経系の関与などが提唱されているが,明確な原因は不明である.今回我々は,心疾患に由来する胸痛が否定され,CTMやMRIでC7神経孔部での神経根の圧迫を認め,神経根ブロックをおこない,症状の軽快を認めたことから,C7神経根由来のCervical anginaと診断し,椎弓形成術+椎間孔拡大術を施行し,症状の改善がみられた1例を経験した.
著者
黒木 浩史
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.14, no.11, pp.1346-1353, 2023-11-20 (Released:2023-11-20)
参考文献数
38

側弯症学校検診は1963年にアメリカのミネソタ州で開始され,その後,世界中に側弯症学校検診モデルが拡散した.2018年までに出版された文献をもとにした調査で,側弯症学校検診の実施が確認できた国は本邦を加え23ヶ国で,うち4ヶ国(イギリス,ノルウェー,カナダ,オーストラリア)では,現在中止されていた.検診方法の多くは前屈テストであり,スコリオメーター,モアレ,シルエッターでの評価を単独であるいは併用し実施している国々もあった.各国の検診の有効性に関する考え方については,肯定が16ヶ国,否定が4ヶ国,合意なしが3ヶ国であった.国家レベルでの検診の法制化に関し,本邦以外で確認が取れた国はなく,検診実施国であっても自治体ごとで違いがあるなど,国ごとに状況は様々であると推測された.以上より,検診意義に関する意見の統一がなされていない中,各国独自に,検診の導入を判断し,それぞれのシステム,方法で検診事業を運営している現状が明らかとなった.またここ最近,これまで側弯症学校検診に関する報告のなかったロシアからも側弯症学校検診に関する総説が発刊されており,側弯症学校検診に対する国際的な方向性は前向きであると考えられる.
著者
帖佐 悦男 田島 直也 松元 征徳 黒木 浩史 後藤 啓輔
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.100-104, 2001 (Released:2008-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
5 3

職業性腰痛の疫学を各職種に従事している2,778名を対象にアンケート調査を行い,特に職種と腰痛の関係について検討した.アンケートの結果から腰痛歴の既往を約半数に認め,職場での発症が最も多かった.現在の腰痛に関しては,運輸職,看護職で腰痛との因果関係があると回答した者が多かった.発症状況では,徐々に発症したものは看護職や事務職に多く,急に発症したものは保安職や運輸職に多かった.腰痛発症の要因として,特に中腰作業,運転作業や重量物の取り扱いや介護作業が考えられた.腰痛発症と従事年数との関係では,看護職は初年度から腰痛の発生が高く,また業務との因果関係がありとの回答が多かった.この結果から,特に作業姿勢や作業関係などに関する指導や腰痛の予防に対する啓発を行う必要がある.