著者
板垣 雄三 黒田 壽郎 佐藤 次高 湯川 武 友杉 孝 後藤 明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

イスラムの都市性を比較の視点から検討しその総合的解明を目指す本研究において、総括班は共同研究の実をあげるために、研究全体の活動の相互の連絡・調整に当たった。即ち、互いに関連する研究班の合同研究会やセミナーの開催、研究成果の発表のための出版活動、海外の研究者・研究機関との交流などに努めた。具体的には、1.研究会の開催:個別研究班を統合した合同研究会、外国人招聘研究員Anouar Abdel-Malek, Nurcholish Madjid氏を中心とした国際セミナー、在日中のMochtar Naim, Abdallah Hanna, Mahmud Hareitani, EmileA. Nakhleh氏を招いた研究集会や公開講演会を開催した。これにより、個別研究の枠を超えた情報交換を実現し、国際的共同研究を進展させ、成果を広く社会に還元することに努めた。2.成果の流通:研究成果を研究分担者全員が随時共有するため、ニューズレター「マディーニーヤ」(創刊準備号〜15号)、研究報告シリーズ(1〜23号)、研究会報告シリーズ(1〜7号)、Monograph Series(No.1〜8)、広報シリーズ(1〜2号)を出版し、国内外の研究者・研究機関に配布し、研究連絡網を確立した。3.総括班副代表の後藤明をアメリカ合衆国に派遣し、本研究活動に対する当地の研究者の協力を要請するとともに、関係学会、研究機関との研究協力態勢の確立につとめた。4.来年度開催予定の国際シンポジウムにむけて、数次にわたる準備連絡会議をもち、各セクションのテーマの設定、招聘研究者の選定などの作業を行った。すでに第二次サーキュラーを内外の研究者に配布した。以上の諸活動により、イスラム世界の都市性についての研究視角が明確化し、都市研究における新たな参照テーマとしてイスラム圏の都市研究の重要性が広く認識され、活発な比較研究を刺激・促進する結果を生んだ。
著者
黒田 壽郎 前田 成文 竹下 政孝 霜垣 和雄 沢井 義次 大塚 和夫
出版者
国際大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

前年度は、イスラ-ムの都市性、とりわけイスラ-ム的宗教意識と都市形成原理の相関関係を明らかにするため、タウヒ-ド、ウンマ、シャリ-アが構成する三極構造の本性と、それが帰結するイスラ-ム世界固有の社会形成原理について研究を行ってきた。この基礎研究の成果をふまえ、今年度は、共同体形成原理の法的側面から研究を進めた(第6回研究会)。またマスジドがイスラ-ムに固有の聖俗関係を保持しつつ、共同体形成に密接に関わっている点に着目し、キリスト教社会、仏教社会との比較研究も行った(第9回研究会)。以上の基礎的、理論的研究ではそれなりの成果を上げ得たが、イスラ-ム的宗教意識と都市形成原理の相関関係は、現実のイスラ-ム都市に引き当ててその理論的妥当性を検証しなくてはならない。H班ではシリアのアッポを研究対象とし、対象研究の方法について討議、検討を重ね、またイスラ-ム社会と都市における異教徒の調和的共存とイスラ-ム共同体の形成原理に関する討議を行った。(第5、8回研究会)第7回研究会では、上記とは異なる視点からイスラ-ム的ネットワ-クと都市、イスラ-ム経済と都市の問題などについて討議を行った。これらの問題も単独で存在するものではなく、上記三極構造と密接な関係をもつことが確認された。具体的成果としては、第6回研究会報告書を出版、同時に都市性と深く関わるイスラ-ム経済活動の基本構造に触れたシャイバ-ニ-の『利得の書』を訳出、刊行した。他の研究会成果も発表予定である。また以上の研究に伴い、イスラ-ム共同体論、共同体形成論、都市形成論などの基礎的文献を収集するとともに、シリア,アレッポ関係の文献、地図などの収集にも務めた。