著者
下島 優香子 井田 美樹 西野 由香里 石塚 理恵 黒田 寿美代 仲真 晶子 平井 昭彦 貞升 健志 甲斐 明美
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.209-214, 2015-12-30 (Released:2016-01-08)
参考文献数
28

2010~2013年に都内の食肉処理場および小売店で購入した牛内臓肉104検体について,糞便系大腸菌群,VTEC,C. jejuni,C. coli,SalmonellaおよびL. monocytogenesの調査を行った.その結果,糞便系大腸菌群は, 85検体(81.7%)が陽性であった.VTECは25検体(24.0%)から31株検出された.そのうち1検体は糞便系大腸菌群陰性であった.血清群O157は 17検体(18株),O26が1検体(1株),O103が1検体(1株),その他の血清群(O1,O28,O91,O153,OUT)が7検体(11株)から検出された.付着遺伝子保有状況を調べた結果,eaeは血清群O157,O26,O103の20株が陽性,saaは血清群O28,O153,OUTの5株が陽性であった.aggRはすべての株が陰性であった.C. jejuniは42検体(40.4%)から50株,C. coliは16検体(15.4%)から16株が検出された.Salmonellaは4検体(3.8%)から5株検出され,血清群はO4群が4株(いずれも血清型Derby),O3, 10群が1株(血清型Amsterdam)であった.L. monocytogenesは22検体(21.2%)が陽性であった.以上の結果から,牛内臓肉は腸管出血性大腸菌を含む食中毒菌に高率に汚染されていることが明らかとなった.
著者
下島 優香子 神門 幸大 添田 加奈 小池 裕 神田 真軌 林 洋 西野 由香里 福井 理恵 黒田 寿美代 平井 昭彦 鈴木 淳 貞升 健志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.178-182, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
14
被引用文献数
6

パスチャライズド牛乳によるBacillus cereus食中毒のリスクを把握する目的で,汚染実態および分離菌株のセレウリド産生性を調査した.国産パスチャライズド牛乳14製品101検体中66検体(65.3%)からB. cereusが分離された.分離されたB. cereus90株についてces遺伝子を調査した結果,3検体(1製品)由来3株が陽性であった.分離されたces遺伝子陽性株,標準菌株および食中毒事例由来株の計3株を牛乳に接種して32℃で培養後,近年開発されたLC-MS/MS法を用いて測定を行った結果,いずれもセレウリドの産生を確認した.LC-MS/MS測定は,牛乳中でB. cereusが産生したセレウリドの検出にも有用であった.今回,国産パスチャライズド牛乳におけるB. cereus汚染実態およびセレウリド産生性B. cereus株の存在を明らかにし,牛乳中のLC-MS/MS法によるセレウリド検出法の妥当性を確認した.
著者
西野 由香里 下島 優香子 森田 加奈 井田 美樹 福井 理恵 黒田 寿美代 平井 昭彦 新藤 哲也 貞升 健志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.45-51, 2019-06-25 (Released:2019-08-07)
参考文献数
14
被引用文献数
3

食肉から分離された大腸菌における薬剤耐性の動向を把握するために,2011~2017年に東京都で流通した鶏肉,牛肉,豚肉,鹿肉および猪肉から分離された1,115株の大腸菌について,14薬剤の薬剤感受性試験を行った.その結果,14薬剤すべてに感受性であったのは,鶏肉由来株の18.7%(135/721株),牛肉由来株の77.0%(117/152株),豚肉由来株の47.6%(89/187株),鹿肉由来株の100%(28/28株),猪肉由来株の92.6%(25/27株)であった.14薬剤の中では,テトラサイクリン(TC)に対して耐性の株が多く,鶏肉由来株の56.7%(409/721株),豚肉由来株の40.6%(76/187株)が耐性であった.鶏肉由来株では,国産由来株の4.9%(25/506株),輸入由来株の23.7%(51/215株)がセフォタキシム(CTX)に耐性であった.国産鶏肉由来株のCTX耐性率は,2012年(10.6%,17/161株)よりも2016年(0.9%,1/111株)と2017年(0.8%,1/121株)で有意に低かった.本調査の結果から,食肉由来大腸菌株のTC耐性率が高いこと,鶏肉由来株では,輸入由来株の方が国産由来株よりもCTXへの耐性が高いことが示された.