著者
安中 進 鈴木 淳平 加藤 言人
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.1_212-1_235, 2022 (Released:2023-06-16)
参考文献数
29

本稿では、日本の有権者の間で消費税をめぐる政治対立がどのように展開しているかを明らかにする。先行研究では、受益者の幅を広げた普遍主義的給付と、消費税を中心とした逆進的な課税構造を持つ福祉国家が、中・高所得者や右派からの支持を獲得し、高い平等を達成するとされる。しかしこの主張には、低所得者や左派は一様に福祉国家の拡大を支持する、という暗黙の前提がある。この前提を検証するため、消費増税に注目し、増税によって実現され得る福祉給付の性質と消費税の逆進的性質が有権者の態度形成に影響を与えるか、その影響が所得・イデオロギーによって条件付けられるかを、サーヴェイ実験を用いて検討した。結果は、福祉の普遍的な給付、または税の逆進的性質を強調すると、高所得者の間では高率な消費税がより許容される一方、低所得者の間では低率な税がより志向される傾向を示した。ただし、普遍主義と逆進性を同時に強調しても、これらの傾向は増幅されなかった。また、所得に対してイデオロギーは、実験刺激効果に対して明確な条件付け効果を持たなかった。これらの知見は、福祉・増税政策をめぐる政治対立の理解に有権者の態度形成の側面から重要な示唆を与えるものである。
著者
大和 裕幸 松本 三和夫 小野塚 知二 安達 裕之 橋本 毅彦 鈴木 淳
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

東大総長・海軍技術中将 平賀譲氏の残された40,000点にのぼる資料をディジタル化して公開準備をおこなってきた。本研究ではディジタル化を完了し、東大附属図書館のディジタルライブラリーで公開すること、さらに東京大学などで平賀譲展を開催し、成果を一般に広め、さらにその図録をまとめることにした。その結果、(1)平賀譲文書のディジタルアーカイブを東大図書館に開設した。URLは以下のようである。http://rarebook.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/hiraga/ (2)平賀譲展-高生から東大総長まで-を東京大学駒場キャンパスで平成20年3月から5月にかけて開催し、あわせて講演会も行った。来場者は2,000名を超えた。また、呉市海事歴史科学館で開催された「平賀譲展」にも本研究での成果を反映して協力した。 (3)図録「平賀譲 名軍艦デザイナーの足跡をたどる」を文藝春秋社から刊行した。平賀譲の資料が多くの研究者の目に触れることが出来るようになったが、その意義は大きい。共同研究者は、経済史、社会学、日本史、技術史、造船史、工学と多方面にわたっており、様々な見地から新しい資料に取り組み、今後の研究のポイントと手法について検討する。具体的なテーマとしては、(1)軍艦建造の過程(計画から訓令・進水・竣工まで)から見た設計学への寄与、(2)イギリス製軍艦の建造報告を主とした艦船技術導入・移転の分析、(3)軍艦建造予算(材料費・工費)の推移をめぐる研究の進展、(4)平賀の講義ノートの復刻・解析、などがあげられた。また今後の課題として、(1)書誌情報の追加作業、(2)ポータルサイトの検討とインプリメンテーション、(3)講義ノートのディジタル化、(4)個別研究テーマの検討などが考えられる。
著者
鈴木 淳子
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.62-80, 2017 (Released:2018-07-20)
参考文献数
116
被引用文献数
4

Despite the increasing participation of women in the workforce and the establishment of laws prohibiting gender discrimination, it is not clear why gender inequality still persists in Japanese society. To address this question, this paper explains the mechanisms of the persistence of gender inequality from the perspective of work and family. First, the rapid changes in the Japanese society, laws, and economic structure over the past four decades are presented. Next, I review literature on the psychology and sociology of gender role attitudes and the longitudinal changes in these attitudes. In addition, seven gender disparities in the workplace (e.g., gender wage gap and proportion of women in managerial positions) are discussed in relation to family roles.The overall results reveal that the following five factors contribute to the persistence of gender inequalities: 1. division of labor by gender; 2. long working hours, employment systems, and employment practices; 3. gender role stereotypes and expectations; 4. inconsistent management practices between positive attitudes towards promoting women and traditional gender role attitudes; and 5. traditional gender role attitudes and gender identity of a woman as a wife.
著者
鈴木 淳子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.34-41, 1994-04-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
23
被引用文献数
27 30

This article describes the construction of a 15-item short-form of the Scale of Egalitarian Sex Role Attitudes (SESRA-S) based on factor analysis and examines the reliability and the validity of the short-form using data from a sample of 109 men and 93 women. SESRA-S is a self report measure of the level of egalitarian attitudes toward the roles of men and women. Its reliability coefficient was .91, the test-retest coefficient with a four-week interval .89, and the correlation coefficient with the full form .94. These support the reliability of the short-form. Evidence of the construct validity was derived from the confirmation of five hypotheses regarding gender, educational attainment, women's employment status, age, and surname change after marriage. The findings of the present study provide evidence for the utility of the short-form as a satisfactory and time-efficient substitute for the SESRA full form.
著者
今西 祐一郎 伊藤 鉄也 鈴木 淳 青田 寿美 呉 格 太田 尚宏 寺島 恒世 谷川 惠一
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.31, pp.1-16, 2013-05-10

●メッセージ国文学研究資料館41年●研究ノート『和泉式部日記jの本文異同への新視点一傍記混入から見えてくるもの-合羽摺り絵本『彩色画選』とカラリスト松寿堂「蔵書印データベース」にできること-つながるデータ、可視化する書脈『中国古籍総目』の編纂について●トピックス平成24年度日本古典籍講習会人間文化研究機織連携展示「記憶をつなぐ一津波災害と文化遺産一」国文学研究資料館常設展示「和書のさまざま」百人一首たまてばこ平成25年度アーカイブズカレッジ(史料管理学研修会通算第59回)の開催新収資料紹介総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況.
著者
松野 陽一 長谷川 強 山崎 誠 鈴木 淳 小峯 和明 岡 雅彦 新藤 恊三 松野 陽一
出版者
国文学研究資料館
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1990

古典籍の成立事情と書写伝流の経路を究明する上で、写本の巻末に記載される奥書・識語を収集して、これを整理することは極めて重要、かつ有効な方法である。国文学研究資料館文献資料部では、可能な限り広範な古典籍の奥書を集成し、研究することに着手したが、2年間にわたる本研究において得られた具体的な成果は、以下に記すとおりである。1.国文学古典籍は日本各地の文庫・図書館等に所蔵されるが、質、量ともに豊富で、本研究の目的に合致するものとして、宮内庁書陵部本6,300点と陽明文庫本3,400点とを対象にして、奥書を抽出した。2.記載年時の明示されない奥書は、書写者の生没年時など周辺の事項から推定するなどして、抽出した奥書を年代順に配列して、文庫別にデ-タファイルに蓄積した。3.集成した奥書デ-タを、ジャンル別、作品名別、奥書記載者別などいくつかの要素に分析して、サンプリングデ-タの作成を試みた。4.サンプリングデ-タの一具体例として、文庫形成の面で独特の蔵書構成を示す真福寺本の奥書を悉皆調査して、書名による分析を通して書名索引を作成した。その成果は「研究成果報告書」に掲載した。5.奥書集成の具体例として、藤原俊成の家集『長秋詠藻』の諸本の奥書を写真版で収集し、書承経路をつきとめた。この作業では対象を書陵部本と陽明文庫本に限定せず、諸本を博捜して目的を達成することに務めた。この成果も「研究成果報告書」に掲載することができた。
著者
上野 健爾 西村 慎太郎 落合 博志 鈴木 淳 三野 行徳 入口 敦志 田中 大士 陳 捷 青田 寿美 神作 研一
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.42, pp.1-16, 2016-01-22

●メッセージ異分野間の共同研究と国際ネットワーク構築への夢●研究ノート東日本大震災で被災した医学書と近世在村医――福島県双葉町泉田家文書の世界――『毘沙門堂本古今集注』の書誌的問題シーボルト本『北斎写真画譜』の行方●トピックスマレガ・プロジェクトシンポジウムinバチカン「キリシタンの跡をたどる」特別展示「韓国古版画博物館名品展」と国際ワークショップ「東アジアの絵入刊本」平成27年度国文学研究資料館「古典の日」講演会第39回国際日本文学研究集会大学共同利用機関シンポジウム2015「研究者に会いに行こう! ――大学共同利用機関博覧会――」参加記ようこそ国文研へ総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況
著者
野家 啓一 川本 隆史 篠 憲二 清水 哲郎 鈴木 淳子 座小田 豊
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ヘラクレイトスの「万物は流動する」(panta rhei)やゼノンのパラドックスを引くまでもなく、哲学の源流をなす思想家たちにとって《動き》は重要なテーマであった。モノの動きとヒトの動きにはどれほどの共通性があり、どこが違うのか。あるいは同じ動物の動きの中で、人間の動きにはどんな特徴があるのか。「人の移動の哲学」は、そうした哲学の根本問題に立ち返りながら知の組み替えを図り、同時に現代の社会と文化の変動が突きつけてくる実践的な難問に応答することを試みるものである。1年目は、「人の移動」を《哲学する》方法論の探究に主力を費やし、研究代表者の野家啓一は、「人の移動」がもたらす境界領域としての「異界」に注目する作業を始めた。2年目は、「人の移動」を可能にする空間のあり方を主たる検討課題とした。次いで、「人の移動」に関連する文化現象の一例として、「メタファー」を取り上げ、東北哲学会との合同シンポジウムを開催した。3年目は「人の移動」を可能にする時間のあり方の吟味から共同研究をスタートさせた。次いで、「人の移動」の哲学の基礎理論を固めるべく、世界的に再評価の動きが見られる哲学者ディルタイを取り上げ、東北哲学会との合同シンポジウムを開催した。哲学・倫理学の研究者を核として、社会心理学、比較文化論・農業経済学という関連領域の第一線のメンバーを分担者に加えた本研究の成果は、すでに各種のシンポジウムで公開したほか、東北大学倫理学研究会の協力のもと三冊におよぶ資料集を発行し、関係諸機関に送付してある。さらに研究代表者・協力者の個別の論文・報告にも共同研究の成果は折り込み済みである。
著者
鈴木 淳子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.160-172, 2004-06-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
118
被引用文献数
1 1

A review of the cross-cultural research on gender in psychology since 1990 reveals (1) conceptual confusion of the definitions of sex, gender, man, and woman; (2) diversification, refinement, reification, and a problem-solving orientation in the research topics; and (3) the possibility of the elucidation of the psychological sex-difference mechanism in relation to the biological sex differences. A comparison of 1990 and 2000 cross-cultural psychological articles published in “Sex Roles” found that overall, the research is Western-centered and some methodological problems remain to be solved concerning the measures and the sampling. These findings lead to the following suggestions for cross-cultural research on gender to resolve the problems and contribute to the development of psychology in general: (1) use of an operational definition for conceptual equivalence; (2) conducting more etic-approach research; (3) avoiding ethnocentric or androcentric research attitudes; (4) use of a theoretical framework; (5) strict examination of methodologies; and (6) examination of the specific context of participants in terms of cultural diversity, dynamics of husband-wife relationships, and relationships with husbands and fathers.
著者
横井 勝彦 竹内 真人 小野塚 知二 倉松 中 高田 馨里 松永 友有 福士 純 永岑 三千輝 田嶋 信雄 鈴木 淳 西牟田 祐二 奈倉 文二 須藤 功 西川 純子 山下 雄司 千田 武志
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、総合的歴史研究を通じて軍縮と軍備管理を阻む近現代世界の本質的構造を解明することにある。第二次大戦以降、武器取引は急速に拡大し複雑化したが、その構造はすでに第一次大戦以前に形成されていた。その点を明らかにするために、われわれの研究プロジェクトでは武器移転という事象を、経済史・国際関係史・帝国史・軍事史などの多角的な視点から分析した。分析概念として武器移転を歴史研究の分野に適用したのは、わが国でも本研究プロジェクトが初めてである。
著者
鈴木 淳
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.64-67, 2010-07-31 (Released:2010-12-13)
参考文献数
11
著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 満行 泰河 鈴木 淳 吉田 ますみ
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.267-277, 2018-02-15

近年,デジタルアーカイブの普及にともない,インターネットを介した歴史資料(以下,史料)へのアクセスが容易となっている.一方,研究者が研究対象とする史料のすべてがインターネット上で公開されているとは限らず,また実証的な歴史研究が現存するすべての関係史料を検討することを基本にするため,実際に文書館や図書館に赴き,史料の収集を行う例も多い.本研究では史料収集や整理に多大な労力を要する歴史研究の支援を目的とし,複数の研究者の共同作業による史料収集・整理プロセスの効率化,および異なる専門知識を有する研究者の協調的な史料分析を支援するシステムを開発する.また,外交文書の送付先の決定過程に関する歴史研究を行い,開発したシステムの有用性を評価する.