著者
吉岡 京子 黒田 眞理子 蔭山 正子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.28-36, 2017 (Released:2017-06-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1

目的:近隣住民等からの苦情・相談(近隣苦情・相談)で保健師が困難ケースと認識した精神障害者と,それを契機に医療につながった者の特徴を解明する.方法:全国53自治体の精神保健担当保健師261人に無記名自記式郵送調査を行い(有効回答率39.6%),ロジスティック回帰分析を行った.結果:医療につながった者は156人(59.8%)で,医療につながったことに有意な関連が見られたのは,属性では男性であること,家族要因では精神科医療機関受診時に親族の協力が得られたこと,精神科要因では不潔な身なりと自傷のおそれがあることであった.結論:精神障害者のセルフケア能力の低下への着目は,早期受診の一助になると考えられる.
著者
吉岡 京子 黒田 眞理子
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.20-27, 2015

<b>目的</b> 本研究の目的は,行政の保健福祉専門職が対応に苦慮する困難な事例のうち,その支援を拒否する住民の特徴および関連要因を検討することである。<br/><b>方法</b> 本調査は,対応困難事例への支援について精神科医等が助言する専門相談事業を2006年から実施している A 自治体と共同研究協定を締結し実施した。この事業に2006~2012年に提出された372人を分析した。対象者の基本属性,家族要因,精神科的要因,問題行動,保健福祉専門職による支援への拒否の有無について個人名を特定できない状態でデータ提供を受けた。保健福祉専門職による支援への拒否の有無とその関連要因を検討するためロジスティック回帰分析を行った。<br/><b>結果</b> 分析対象とした309人のうち,支援拒否なし群は102人(33.0%),支援拒否あり群は207人(67.0%)だった。ロジスティック回帰分析の結果,生活保護を受給していること(Odds Ratio=1.86, 95%CI=1.02–3.39),拒薬があること(Odds Ratio=2.07, 95%CI=1.10–3.90),暴言があること(Odds Ratio=1.97, 95%CI=1.09–3.55)が,保健福祉専門職による支援への拒否があることに有意に関連していた。<br/><b>結論</b> 本結果から支援拒否あり群は,支援拒否なし群よりも病状悪化の危険性や危機介入の必要性がより高い者である可能性が示唆された。
著者
吉岡 京子 黒田 眞理子 蔭山 正子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.69-78, 2017 (Released:2018-04-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的:精神障害者に関する近隣苦情・相談への保健師の対応の実態と困難について精神保健福祉業務の経験年数別に解明することである.方法:53市区町村で精神保健を担当する659人の常勤保健師を対象に自記式郵送調査を2015年に実施した.調査項目は保健師の属性,最も対応が困難だった近隣苦情・相談について,苦情・相談を寄せた者とその内容,保健師の対応と感じた困難をたずねた.保健師の精神保健福祉業務経験年数が10年未満の者を「10年未満群」,10年以上の者を「10年以上群」の2群に分け,各調査項目についてt検定,χ2検定,Kruskal-Wallis検定で比較した.統計解析にはIBM PASW Statistics 22.0(Windows)を使用し,有意水準は5%未満とした.結果:有効回答の264人(40.1%)のうち10年未満群は159人(60.2%),10年以上群は105人(39.8%)であった.近隣苦情・相談は住民や行政機関内外の職員から寄せられ,精神障害者の入院を要求する内容が最多だった.精神保健福祉業務経験年数と近隣苦情・相談で感じた困難との間には有意な関連は認められなかった.10年以上群の方が10年未満群よりも近隣苦情を寄せた者に「精神疾患について理解を深めてもらう」対応をしていた者の割合が有意に高かった.考察:10年以上群の保健師は,近隣住民と精神障害者の双方が互いに生活しやすい地域づくりを目指して,近隣苦情・相談を寄せた者に精神疾患について理解を深めてもらうための対応を行っていた可能性が考えられる.
著者
吉岡 京子 笠 真由美 神保 宏子 鎌倉 由起 齋藤 夕子 野村 理恵 大熊 陽子 大屋 成子 平林 義弘 黒田 眞理子
出版者
日本ヘルスサポート学会
雑誌
日本ヘルスサポート学会年報 (ISSN:21882924)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-10, 2016 (Released:2016-09-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の目的は、特定妊婦のうち精神疾患を有する者の特徴とその関連要因を解明することである。平成25年に特定妊婦として登録された55人のうち、精神疾患なし群は31人(59.6%)、精神疾患あり群は21人(40.4%)であった。二群比較の結果、精神疾患あり群の方が精神疾患なし群に比して、母子世帯である者、近隣の相談相手がいない者および妊婦健診の受診状況が不定期な者が有意に多かった。また、抑うつ状態や不眠、不安といった症状を精神疾患あり群の方が精神疾患なし群に比して有意に多く有していた。保健師が予測した支援でも、産後の病状悪化や医療機関への受診支援、母親の睡眠確保の必要性が精神疾患あり群の方が精神疾患なし群に比して有意に多く、治療継続支援を行った者の割合も有意に高かった。本結果から、精神疾患を有する特定妊婦に対して、妊婦健診の受診状況の確認や困り事について相談にのることと、妊娠期から精神科や産科と緊密に連携しながら支援していくことの必要性が示唆された。
著者
吉岡 京子 黒田 眞理子 蔭山 正子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.28-36, 2017

<p>目的:近隣住民等からの苦情・相談(近隣苦情・相談)で保健師が困難ケースと認識した精神障害者と,それを契機に医療につながった者の特徴を解明する.</p><p>方法:全国53自治体の精神保健担当保健師261人に無記名自記式郵送調査を行い(有効回答率39.6%),ロジスティック回帰分析を行った.</p><p>結果:医療につながった者は156人(59.8%)で,医療につながったことに有意な関連が見られたのは,属性では男性であること,家族要因では精神科医療機関受診時に親族の協力が得られたこと,精神科要因では不潔な身なりと自傷のおそれがあることであった.</p><p>結論:精神障害者のセルフケア能力の低下への着目は,早期受診の一助になると考えられる.</p>
著者
吉岡 京子 黒田 眞理子 篁 宗一 蔭山 正子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.76-87, 2019

<p><b>目的</b> 精神障害者の子を持つ親が,親亡き後の当事者の地域での生活を見据えて具体的にどのような準備をしているのかを明らかにすることを目的とした。</p><p><b>方法</b> 関東近郊に在住の精神障害者の子を持つ親22人に対して2016年12月から2017年2月までインタビュー調査を行った。インタビューデータは質的帰納的に分析し,逐語録から親が行っている準備に関する記述をコードとして抽出した。コードの意味内容の類似性と相違性を検討し,類似するコードを複数集めて抽象度を上げたサブカテゴリとカテゴリを抽出した。なお各々のカテゴリをさらに類型化し,なぜその準備が行われたのかという目的を考察した。</p><p><b>結果</b> 研究参加者のうち父親が9人(40.9%),母親が13人(59.1%)であった。彼らの年代は60歳代が9人(40.9%),70歳代が10人(45.5%),80歳代が3人(13.6%)であった。</p><p> 親亡き後の当事者の生活を見据えた具体的な準備として10カテゴリが抽出された。すなわち 1)自分の死を予感し,支援の限界を認識する,2)親の死について当事者との共有を試みる,3)自分の死後を想定し,当事者に必要な情報や身辺の整理を進める,4)親族に親亡き後の当事者の生活や相続について相談するとともに,社会制度の利用を検討する,5)当事者の住まいと生活費確保の見通しをつけようとする,6)親が社会資源とつながり,当事者の回復や親自身の健康維持に努める,7)当事者の病状安定や回復に向けて服薬管理や受診の後押しをする,8)当事者が自分の力で生活することを意識し,生活力を把握する,9)当事者の生活力や社会性を育み,親以外に頼れる人をつくる,10)当事者が楽しみを持つことすすめ,就労を視野に入れて支える,であった。親は,親亡き後に残された当事者が生活する上で困らないようにすることと,当事者が地域で安定して暮らすことを目的として準備を進めていた。</p><p><b>結論</b> 親が自分の死後を視野に入れて当事者の地域での生活に向けた具体的な準備を進めるためには,当事者の自立生活の必要性を意識することの重要性が示唆された。</p>
著者
吉岡 京子 黒田 眞理子 篁 宗一 蔭山 正子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.76-87, 2019-02-15 (Released:2019-02-26)
参考文献数
34

目的 精神障害者の子を持つ親が,親亡き後の当事者の地域での生活を見据えて具体的にどのような準備をしているのかを明らかにすることを目的とした。方法 関東近郊に在住の精神障害者の子を持つ親22人に対して2016年12月から2017年2月までインタビュー調査を行った。インタビューデータは質的帰納的に分析し,逐語録から親が行っている準備に関する記述をコードとして抽出した。コードの意味内容の類似性と相違性を検討し,類似するコードを複数集めて抽象度を上げたサブカテゴリとカテゴリを抽出した。なお各々のカテゴリをさらに類型化し,なぜその準備が行われたのかという目的を考察した。結果 研究参加者のうち父親が9人(40.9%),母親が13人(59.1%)であった。彼らの年代は60歳代が9人(40.9%),70歳代が10人(45.5%),80歳代が3人(13.6%)であった。 親亡き後の当事者の生活を見据えた具体的な準備として10カテゴリが抽出された。すなわち 1)自分の死を予感し,支援の限界を認識する,2)親の死について当事者との共有を試みる,3)自分の死後を想定し,当事者に必要な情報や身辺の整理を進める,4)親族に親亡き後の当事者の生活や相続について相談するとともに,社会制度の利用を検討する,5)当事者の住まいと生活費確保の見通しをつけようとする,6)親が社会資源とつながり,当事者の回復や親自身の健康維持に努める,7)当事者の病状安定や回復に向けて服薬管理や受診の後押しをする,8)当事者が自分の力で生活することを意識し,生活力を把握する,9)当事者の生活力や社会性を育み,親以外に頼れる人をつくる,10)当事者が楽しみを持つことすすめ,就労を視野に入れて支える,であった。親は,親亡き後に残された当事者が生活する上で困らないようにすることと,当事者が地域で安定して暮らすことを目的として準備を進めていた。結論 親が自分の死後を視野に入れて当事者の地域での生活に向けた具体的な準備を進めるためには,当事者の自立生活の必要性を意識することの重要性が示唆された。