著者
三谷 章雄 大澤 数洋 森田 一三 林 潤一郎 伊藤 正満 匹田 雅久 佐藤 聡太 川瀬 仁史 高橋 伸行 武田 紘明 藤村 岳樹 福田 光男 稲垣 幸司 石原 裕一 黒須 康成 三輪 晃資 相野 誠 岩村 侑樹 鈴木 孝彦 外山 淳治 大野 友三 田島 伸也 別所 優 前田 初彦 野口 俊英
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.313-319, 2012-10-31

目的:欧米では,心臓血管疾患と歯周病には関連性がみられるというデータが得られているが,日本人における心臓血管疾患と歯周病の関連についてはほとんど報告がない.そこで今回われわれは,東海地方での心臓血管疾患の罹患状況と歯周病の指数を比較することで,日本人における心臓血管疾患と歯周病の関係を明らかにすることを目的とし,健診のデータを基にその関連性の検討を行った.対象と方法:2008年に豊橋ハートセンターのハートの日健診において,一般健診を受診した者でかつ歯科健診を受けた者549名についてのデータを分析対象とした.心臓血管疾患データとして,血圧,脈拍,動脈硬化・不整脈の有無,狭心症・心筋梗塞の既往の有無,手術歴を,歯周病データとして,現在歯数,Community Periodontal Index (CPI)を用いた.これらのデータを用いて,心臓血管疾患の有無と健診時点での歯周病の指数を比較し,統計分析を行った.結果:対象者の平均年齢は61.7±13.6歳であった.狭心症,心筋梗塞,手術(経皮的カテーテルインターベンション)のいずれかの既往のある者を冠動脈心疾患(coronary heart disease: CHD)群(82名:男性44名,女性38名)とし,それに該当しない者,すなわち非CHD群(467名:男性122名,女性345名)と比較検討したところ,女性ではCHD群の現在歯数が有意に少なかった.また男性では,糖尿病,BMI,中性脂肪,HDL,総コレステロールおよび年齢の因子を調整してもなお,CHD既往のあるオッズ比は,CPIコード最大値2以下の者に比べ,CPIコード最大値3以上の者が3.1倍(95%信頼区間1.2〜7.7)高かった.結論:CPIや現在歯数と,CHDの既往があることの関連性が認められ,日本人においても歯周病とCHDに相関がみられることが示唆された.
著者
杉石 泰 稲垣 幸司 黒須 康成 夫馬 大介 坂野 雅洋 山本 弦太 吉成 伸夫 野口 俊英 森田 一三 中垣 晴男
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.10-16, 2006 (Released:2006-08-07)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

歯周病と骨粗鬆症の関係を明らかにするために, 閉経後女性歯周病患者の歯周病態と骨粗鬆症所見の関連性を検討した。対象は, 本研究の主旨に同意の得られた慢性歯周炎の閉経後女性81名 (59.1±6.6歳) で, 腰椎骨萎縮度から, 腰椎骨萎縮正常群26名 (N群, 58.4±6.1歳), 腰椎骨萎縮群55名 (A群, 59.4±6.8歳) の2群に分けて比較した。評価した口腔内所見は, 現在歯数, プロービングデプス (PD), クリニカルアタッチメントレベル (CAL), プロービング時の歯肉出血 (BOP) 率および歯槽骨吸収率 (ABL) である。さらに, 各口腔内所見の平均から2群に分け, 腰椎骨萎縮度に対するオッズ比を算出した。PD7 mm以上部位率とCAL7 mm以上部位率はA群が高値であった (p<0.05)。腰椎骨萎縮度に対するPD平均, PD4 mm以上部位率およびBOP率の年齢補正したオッズ比は, それぞれ, 3.1 (95%信頼区間 (confidence interval (CI) ) 1.1—8.7), 3.0 (95%CI 1.0—8.7) および3.1 (95%CI 1.1—9.3) であった。したがって, 閉経後女性における歯周病の進行と, 腰椎骨萎縮との関係が示唆され, 骨粗鬆症所見に留意して閉経後女性の歯周病治療を行う必要性があると考えられた。