著者
金子 圭子 内田 啓一 大木 絵美 髙谷 達夫 森 啓 藤井 健男 富田 美穂子 吉成 伸夫 石原 裕一 田口 明
出版者
日本口腔診断学会
雑誌
日本口腔診断学会雑誌 (ISSN:09149694)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.212-215, 2017-06-20 (Released:2017-06-24)
参考文献数
6

An external dental fistula involves formation of a fistula or granulation as an excretion pathway in the jaws or face, due to chronic purulent odontogenic inflammation. We describe a case involving a 30-year-old male patient who had an external dental fistula-like scar in the right buccal region. A diagnosis of an external dental fistula, caused by an infected right mandibular first molar, was made; endodontic therapy was performed without symptomatic improvement, and the patient was referred to our university. Tenderness in the masseter region and scarring in the right buccal region were found upon examination. Diagnostic imaging revealed a cylindrical structure suggestive of an external dental fistula in the soft tissues. Removal of the external dental fistula was performed under general anesthesia and the course was good. Patients with an external dental fistula may show symptoms for a prolonged period before a definitive diagnosis is made; however, diagnosis can be facilitated by early, accurate imaging examination.
著者
杉石 泰 稲垣 幸司 黒須 康成 夫馬 大介 坂野 雅洋 山本 弦太 吉成 伸夫 野口 俊英 森田 一三 中垣 晴男
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.10-16, 2006 (Released:2006-08-07)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

歯周病と骨粗鬆症の関係を明らかにするために, 閉経後女性歯周病患者の歯周病態と骨粗鬆症所見の関連性を検討した。対象は, 本研究の主旨に同意の得られた慢性歯周炎の閉経後女性81名 (59.1±6.6歳) で, 腰椎骨萎縮度から, 腰椎骨萎縮正常群26名 (N群, 58.4±6.1歳), 腰椎骨萎縮群55名 (A群, 59.4±6.8歳) の2群に分けて比較した。評価した口腔内所見は, 現在歯数, プロービングデプス (PD), クリニカルアタッチメントレベル (CAL), プロービング時の歯肉出血 (BOP) 率および歯槽骨吸収率 (ABL) である。さらに, 各口腔内所見の平均から2群に分け, 腰椎骨萎縮度に対するオッズ比を算出した。PD7 mm以上部位率とCAL7 mm以上部位率はA群が高値であった (p<0.05)。腰椎骨萎縮度に対するPD平均, PD4 mm以上部位率およびBOP率の年齢補正したオッズ比は, それぞれ, 3.1 (95%信頼区間 (confidence interval (CI) ) 1.1—8.7), 3.0 (95%CI 1.0—8.7) および3.1 (95%CI 1.1—9.3) であった。したがって, 閉経後女性における歯周病の進行と, 腰椎骨萎縮との関係が示唆され, 骨粗鬆症所見に留意して閉経後女性の歯周病治療を行う必要性があると考えられた。
著者
脇本 仁奈 吉成 伸夫 小笠原 正 薦田 智 河瀬 瑞穂 河瀬 聡一朗 大木 絵美 伊能 利之 金銅 英二 岡田 芳幸
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.84-90, 2021

<p>歯肉肥大を誘発する薬物の服用や遺伝的素因はないが,水平性歯肉肥大を認める重症心身障害児・者を散見する.重症心身障害児・者病棟入院中の患者で,歯肉肥大を誘発する薬物の服用や遺伝的素因がなく,3.5mm以上の水平性歯肉肥大がある者の比率,臨床的特徴を検討した.</p><p>対象者は,重症心身障害児・者病棟入院中の患者73名であった.入院記録から年齢,性別,疾患,ADL,常用薬,栄養摂食状況を調査用紙に転記した.口腔内診査は,プロービング検査,咬合状態,Plaque Index,3.5mm以上の水平性歯肉肥大の有無を評価した.水平性歯肉肥大は,歯肉肥大を誘発する薬物の服用はなく,WHOプローブにて水平的に3.5mm以上の肥大を1カ所でも認めたものとした.水平性歯肉肥大を認めた者は,入院記録からフェニトインなどの服用経験を調査し,保護者へ家族で遺伝性歯肉線維腫症を認めた者の有無を聴取するとともに水平性歯肉肥大の臨床的特徴を検討した.</p><p>特発性水平性歯肉肥大の発現率は,重症心身障害児・者で73名中4名(5.5%),胃瘻のみでは18名中4名(22.2%)であった.特発性水平性歯肉肥大を認めた者は,そうでない者と比較して平均年齢が低く,経管栄養と開咬の者の割合が有意に多かった.特発性水平性歯肉肥大の特徴は,上顎前歯部と上下顎臼歯部の口蓋側・舌側への水平性の肥大で,薬物性歯肉肥大症や遺伝性歯肉線維腫症とは歯肉肥大の形態特徴が明らかに異なっていた.4例とも経口摂取の既往を認めなかった.</p>
著者
稲垣 幸司 内藤 徹 石原 裕一 金子 高士 中山 洋平 山本 龍生 吉成 伸夫 森田 学 栗原 英見
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.201-219, 2018-12-28 (Released:2018-12-28)
参考文献数
50
被引用文献数
1

日本歯周病学会では2006年に定めた歯周病分類システムの中で,「喫煙は歯周病の最大の環境リスクファクターである」という認識に基づき,リスクファクターによる歯周炎の分類の1つとして喫煙関連歯周炎を提示した。喫煙が関連する歯周炎に対する歯周治療において,患者の喫煙状況の確認,喫煙者への喫煙の健康障害についての情報提供による禁煙支援は,歯周治療の反応や予後を良好に維持するため,重要である。本論文では,喫煙に関連する国情,喫煙者の動向,禁煙支援教育の現状,歯科における禁煙支援の効果に関するエビデンスおよび歯周治療における禁煙支援の手順を概説する。
著者
稲垣 幸司 大島 康成 鈴木 秀人 藤城 治義 柳楽 たまき 吉成 伸夫 橋本 雅範 瀧川 融 小澤 晃 野口 俊英
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.220-225, 1996-06-28
被引用文献数
13 4

骨粗鬆症と歯周病の関係を把握する一助として,閉経後女性骨粗鬆症患者の口腔内所見,特に歯周病所見を調査した。対象は,骨粗鬆症のために通院中の女性患者35名(以下O群,腰椎骨密度測定者18名,橈骨骨密度測定者17名,63.0±1.5歳,以下平均±標準誤差)である。また,愛知学院大学歯学部附属病院歯周病科でランダムに選択した平成7年来院の骨粗鬆症を有さない60歳代歯周病女性患者20名(以下P群,63.6±0.6歳)の口腔内所見と比較した。骨密度は,二重エネルギーX線吸収法により測定した。O群の身体所見は正常であったが,骨密度は,平均で若年期標準値の60.5±1.3%に低下していた。しかし,両群の骨密度と歯周病所見との間に有意な相関は認められなかった。現在歯数と処置歯率の平均は,それぞれO群23.0±1.3歳,60.0±4.1%,P群22.6±1.5歯,53.2±6.2%で,ほぼ同一であった。一方,歯周病罹患歯率(4mm以上のPDをもつ歯の割合)とプロービング時の歯肉出血率(BOP率)は,それぞれO群46.2±6.3%,37.5±4.2%,P群39.6±6.3%,24.6±4.4%で,O群がやや悪化傾向を示した。従って,高度な骨粗鬆症患者では,歯周病が進行していることが示唆されたが,今後さらに対象症例を増やして詳細に検討する必要がある。