著者
齋藤 とも子 豊嶋 浩之 久保田 倍生 森 浩一 徳永 紗織 岩下 智之 安部 睦美
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.89-93, 2008 (Released:2019-08-05)
参考文献数
13

家庭でも汎用される防水スプレーは、直接吸入、さらには熱分解産物で毒性を増した成分の吸入により肺障害が引き起こされる。今回我々は、40+X 歳の男性が締め切った室内で防水スプレーを使用したところ呼吸困難を自覚し、約48 時間後に呼吸苦、咳嗽の悪化を認め防水スプレー吸入による化学性肺炎と診断した症例を経験した。その病態生理としては、撥水剤として用いられているフッ素樹脂により肺の表面活性物質が拮抗されて肺胞虚脱を生じ、一部が肺炎に移行する可能性が示唆されている。今回我々は暴露後数日たってから化学性肺炎を発症し、ステロイド、好中球エラスターゼ選択的阻害薬の投与、BiPAP(bi-level positive airway pressure)による呼吸管理を行うことで症状改善を得ることができた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。初発症状が軽微でも呼吸器症状の経過を詳細に観察することが重要であると考える。
著者
齋藤 とも子 錦戸 典子 松木 秀明
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.117-129, 2015 (Released:2015-08-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

目的:産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援状況,保有している知識・技術,自己研鑽・学習環境等の状況ならびにそれらの関連を明らかにする.さらに,支援についての関連要因モデルを作成し,産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援を推進するための示唆を得る.方法:日本産業衛生学会会員で,企業または単一型健康保険組合に所属する産業看護職を対象に,無記名郵送式質問紙調査を実施した.356名(回収率46.4%)からの回答のうち,主要な項目に無回答がない産業看護職329名(有効回答率92.4%)を分析対象とした.心理社会的職場環境改善の支援7項目について因子分析を行い,抽出された支援因子ごとのモデルを作成し,共分散構造分析を行った.結果:因子分析より【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】と 【職場参加型の環境改善の支援】の支援因子が抽出され,平均実施割合は,それぞれ約5~8割,および4割未満であった.【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】には,「管理職へ,理解を促すための説明を行う」や「ストレス調査結果を部署毎に集計・分析する」からなる支援技術が関連し,これには「個人のストレス調査票」や「一般的な職場のストレス要因」からなる支援知識が関連していた.支援知識・支援技術には,「日頃の職場環境改善活動を振り返り,活動報告を行う」,「論文を読む」からなる自己研鑽が関連していた.【職場参加型の環境改善の支援】には,「キーパーソンを中心とした職場討議を間接的に支援する」や「職場のストレス調査結果を管理職へフィードバックする」からなる支援技術が関連し,それには「職場環境改善のツール」や,「職場のストレス調査票の活用方法」からなる支援知識が関連していた.支援知識・支援技術には,「グループワークを効果的に行うための研修会への参加」,「大学や研究機関の指導者からサポートや助言を受けられる」からなる自己研鑽・学習環境が関連していた.考察:産業看護職による心理社会的職場環境改善支援の内容およびその関連要因が明らかとなった.支援の実施割合より,特に 【職場参加型の環境改善の支援】を推進する必要性が示唆された.今後は,支援推進のために,支援との関連が明らかとなった支援知識・支援技術の獲得を促していく必要がある.
著者
齋藤 とも子 豊嶋 浩之 久保田 倍生 森 浩一 徳永 紗織 岩下 智之 安部 睦美
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.89-93, 2008

家庭でも汎用される防水スプレーは、直接吸入、さらには熱分解産物で毒性を増した成分の吸入により肺障害が引き起こされる。今回我々は、40+X 歳の男性が締め切った室内で防水スプレーを使用したところ呼吸困難を自覚し、約48 時間後に呼吸苦、咳嗽の悪化を認め防水スプレー吸入による化学性肺炎と診断した症例を経験した。その病態生理としては、撥水剤として用いられているフッ素樹脂により肺の表面活性物質が拮抗されて肺胞虚脱を生じ、一部が肺炎に移行する可能性が示唆されている。今回我々は暴露後数日たってから化学性肺炎を発症し、ステロイド、好中球エラスターゼ選択的阻害薬の投与、BiPAP(bi-level positive airway pressure)による呼吸管理を行うことで症状改善を得ることができた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。初発症状が軽微でも呼吸器症状の経過を詳細に観察することが重要であると考える。