著者
奥泉 由有 町田 彰久 荒井 歩 Yu Okuizumi Akihisa Machida Ayumi Arai
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.58-65, 2019-09-24

埼玉県川口市安行は江戸時代から続く伝統的植木生産地域であり,恵まれた地形・地質と東京近郊の立地性が相まって,現在も植木生産業が続いている。本研究では,安行の植木生産地としての歴史的背景を踏まえた上で,植木畑の立地特性及び利用特性を解明し,安行の植木生産地としての文化的景観の景観構造を明らかにすることを目的とした。安行は標高15 mの台地と標高5 mの低地が入り組んだ複雑な地形を有する。調査の結果,台地の平面形状及び断面形状より区分した5つの地域を,景観単位として設定した。各景観単位の特徴より,安行の植木生産業における文化的景観の景観構造の特徴として,①景観構造を構成する地形は台地・低地・斜面であること,②植木畑は台地に立地し,かつ低地または台地につながる緩斜面に立地すること,③斜面には樹林が存在すること,④台地には井戸,低地の植木畑付近には水路がみられることの4点があげられた。
著者
小山 七海 荒井 歩 Nanami Oyama Ayumi Arai
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 = Journal of agriculture science, Tokyo University of Agriculture (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.65-75, 2020-12

神奈川県大磯は,その温暖な気候により近代に別荘地として注目された。1885(明治18)年に陸軍軍医である松本順によって海水浴場が開設されたことで別荘地としての発展が始まる。1887(明治20)年には国鉄東海道本線の大磯駅が開業し,1896(明治29)年に初代総理大臣伊藤博文が大磯に住んだことで多くの著名人が大磯に別荘地を設置した。本研究は,別荘居住者の職業属性と別荘地の所在地を調査した上で,別荘居住者間の関係性を明らかにした。加えて別荘居住者の大磯における行動状況も整理した。さらに,職業属性および入居年代毎に別荘地の立地場所の傾向を分析し,大磯の景観的特性との関係について考察を行った。調査の結果,別荘地では政治家を中心としたコミュニティが形成され,伊藤博文,陸奥宗光,西園寺公望,加藤高明,山県有朋の5名が別荘地形成のキーパーソンとして挙げられた。また別荘居住者は大磯において政治的交流や病気療養を行っていたほか,地域のために寄付行動を行っていた。別荘地の範囲を地形特性に基づき8つの領域に区分し,各領域内における別荘地の分布状況を調べた結果,居住年代毎に別荘地の立地傾向に特徴があることが明らかとなった。
著者
水庭 千鶴子 荒井 歩 國井 洋一 栗田 和弥 鈴木 貢次郎 MIZUNIWA Chizuko Ayumi ARAI Yoichi KUNII Kazuya KURITA Kojiro SUZUKI
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.171-182, 2011-09

造園学において,「自然とのふれあい」や「ものづくり」は,造園の計画および設計,実際の施工等を学ぶための動機付けとして極めて重要な体験である。近年,生活環境の都市化に伴い,自然とのふれあいやものづくりの体験ができる機会は減少する一方である。このような現状の中,造園学を学ぶ学生の自然とのふれあいやものづくり体験の実態はいかなる状況であるのかを把握するために造園学を学ぶ大学生625人に対するアンケート調査を行った。その結果,自然とのふれあいに関しては,幼少期から学童期まで日常的に体験するような川魚,海洋生物等の採取,カブト虫等の昆虫採取,昆虫や植物の標本づくりは男子で5~6割,女子で7~8割はほとんど体験がなかった。ものづくり体験のうちの,ものづくり体験は,「2~3回程度の体験」を「体験無し」に含まれるとすると, 2割~5割の学生はものづくり体験がほとんどないことが明らかとなった。ケガの体験については,自然とのふれあいやものづくりの体験をほとんどしていないこともあり,カマで手を切ったり,重い石を落としたこと,脚立から落ちたり,木登りをしていて落ちたりしたことはほとんど体験がなかった。以上より,「自然とのふれあい」や「ものづくり」の体験の機会は,終戦後,空間の消失と共に減少してきたといわれていることが確認できた。これらの結果を踏まえ,造園科学科として2010年産より大学教育のカリキュラムへ動機付けの基礎となる「造園体験実習」の教科を新たに組み込む必要性が生じた。
著者
石川 有生 荒井 歩 ISHIKAWA Nao Ayumi ARAI 東京農業大学大学院農学研究科造園学専攻 東京農業大学地域環境科学部造園科学科 Department of Landscape Architecture Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Landscape Architecture Science Faculty of Regional Enviroment Science Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.190-198,

現・千葉県我孫子市内に位置していた旧我孫子町南部周辺は,大正時代に入ると主に手賀沼沿いの斜面地に文化人の別荘や住居が建てられ,一種の文化人コロニーを形成した。本研究では,コロニーの概要及び構成文化人を明らかにした上で,文化人の作品に描かれたコロニーの景観構成要素を抽出し,その特徴を分析することを目的とした。描かれた景観構成要素の特徴として以下の結果を得た。(1)身近な動植物や,日常生活における眺望を構成する景観構成要素が多数確認された 。(2)白樺派の構成文化人は,彼らが思想的に求めた美しさや豊かさを,我孫子の 「一般的で身近な自然」の中に見出していた。Abiko city is located in the northwest of Chiba Prefecture. Lying between the Tonegawa River to the north and Lake Teganuma to the south, Abiko is rich in natural features. In the Taisho era, many intellectuals from Tokyo had their cottages on the south-facing slope by Lake Teganuma. The aim of this study is to grasp how intellectuals recognized landscape elements of Abiko in the Taisho era. First, we outline a colony of intellectuals who lived in Abiko. Second, we survey literature by intellectuals that might provide insights into the environment in Abiko. Third, we analyze landscape elements in the literature that was written by intellectuals. Finally, we consider features of the landscape elements of the lakeside environment in Abiko. As for the features of landscape elements that intellectuals wrote about, we obtained the following : the animals and plants living near a colony and one which be able to see in everyday by intellectuals. Especially Shirakaba school, the main group of intellectuals, found out the ideal beauty and happiness through their life in Abiko.