著者
小林 成彦 荒井 歩
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.707-710, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
10

This paper focuses on the stage of annual maintenance of weeding levee slope of terraced paddy fields called Kurumeki-no-tanada, in Inasa-chou, Hamamatsu , Shizuoka prefecture. In this study, we characterize ridges between rice fields and grassy fields as ‘fields for weeding’. First, we survey cultivated paddies and fields for weeding. Secondly we presents some results concerning the relation between the management systems and farmers. Finally, we consider some arrangements for sustainable conservation on these rice terraces. It was concluded that 1. The fields for weeding have been classified into five types, 1) Cultivated paddies of 35 groups has been weeding, 2) Abandoned paddies of 38 groups has been weeding, 3) Abandoned paddies there are not weeded is 21 groups, 4) Grassy fields of 21 groups has been weeding, and 5) Grassy fields there are not weeded is 21 groups. 2. There are four rules for maintenance of fields for weeding, 1) Border division of the management range, 2) Range of duties of restoration, 3) Right to weeding range, and 4) Work support of the mutual help by village residents for large-scale restoration.
著者
小林 成彦 荒井 歩
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.639-642, 2014 (Released:2015-05-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

This paper focuses on the irrigation systems necessary for conserving the rice terraces and investigates Kurumeki-no-tanada in Hikisa-chou,Hamamatsu,Shizuoka to clarify the irrigation facilities and their operation and maintenance. First, we survey irrigation channels system and record of their locates on a map. It also presents some results concerning the relation between the irrigation systems and their operation. Second, we classify water rights on irrigation facilities. Finally, we consider some arrangements for sustainable conservation on these rice terraces. As a result of the investigation, it was concluded that 1.We analyzed relationship of the agreements, related the water management system for irrigation, established among several cultivators, the directions of water’s current and the point where irrigation channels converge. And the irrigation system is broadly separated into7 systems. 2. The rule on intake composed of three water rights on irrigation facilities, 1) the right for taking in water directly from irrigation channel, 2) the permission for using water priority from them, 3) the permission for getting water near them.
著者
荒井 歩
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
日本造園学会 全国大会 研究発表論文集 抄録 平成14年度日本造園学会全国大会
巻号頁・発行日
pp.72, 2002 (Released:2003-06-20)

岐阜県の郡上八幡は現在でも日常生活に水路網を利用している旧城下町である。本研究は郡上八幡の水路網の整備過程を整理し、水システムの特徴が現れる水調整装置とその環境音との関係を分析した。その結果、昭和初期までに構築された6系統の水路網が現在も利用されていること、水調整装置の形態等によって系統毎の特徴が異なり、それに応じて水調整装置が発する環境音の分布状況や騒音レベルも異なることがわかった。これらのことから水調整装置が発する環境音は伝統的な水システムを音環境の側面から知覚できる伝統的環境音であることが明らかとなった。
著者
奥泉 由有 町田 彰久 荒井 歩 Yu Okuizumi Akihisa Machida Ayumi Arai
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.58-65, 2019-09-24

埼玉県川口市安行は江戸時代から続く伝統的植木生産地域であり,恵まれた地形・地質と東京近郊の立地性が相まって,現在も植木生産業が続いている。本研究では,安行の植木生産地としての歴史的背景を踏まえた上で,植木畑の立地特性及び利用特性を解明し,安行の植木生産地としての文化的景観の景観構造を明らかにすることを目的とした。安行は標高15 mの台地と標高5 mの低地が入り組んだ複雑な地形を有する。調査の結果,台地の平面形状及び断面形状より区分した5つの地域を,景観単位として設定した。各景観単位の特徴より,安行の植木生産業における文化的景観の景観構造の特徴として,①景観構造を構成する地形は台地・低地・斜面であること,②植木畑は台地に立地し,かつ低地または台地につながる緩斜面に立地すること,③斜面には樹林が存在すること,④台地には井戸,低地の植木畑付近には水路がみられることの4点があげられた。
著者
小山 七海 荒井 歩 Nanami Oyama Ayumi Arai
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 = Journal of agriculture science, Tokyo University of Agriculture (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.65-75, 2020-12

神奈川県大磯は,その温暖な気候により近代に別荘地として注目された。1885(明治18)年に陸軍軍医である松本順によって海水浴場が開設されたことで別荘地としての発展が始まる。1887(明治20)年には国鉄東海道本線の大磯駅が開業し,1896(明治29)年に初代総理大臣伊藤博文が大磯に住んだことで多くの著名人が大磯に別荘地を設置した。本研究は,別荘居住者の職業属性と別荘地の所在地を調査した上で,別荘居住者間の関係性を明らかにした。加えて別荘居住者の大磯における行動状況も整理した。さらに,職業属性および入居年代毎に別荘地の立地場所の傾向を分析し,大磯の景観的特性との関係について考察を行った。調査の結果,別荘地では政治家を中心としたコミュニティが形成され,伊藤博文,陸奥宗光,西園寺公望,加藤高明,山県有朋の5名が別荘地形成のキーパーソンとして挙げられた。また別荘居住者は大磯において政治的交流や病気療養を行っていたほか,地域のために寄付行動を行っていた。別荘地の範囲を地形特性に基づき8つの領域に区分し,各領域内における別荘地の分布状況を調べた結果,居住年代毎に別荘地の立地傾向に特徴があることが明らかとなった。
著者
水庭 千鶴子 荒井 歩 國井 洋一 栗田 和弥 鈴木 貢次郎 MIZUNIWA Chizuko Ayumi ARAI Yoichi KUNII Kazuya KURITA Kojiro SUZUKI
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.171-182, 2011-09

造園学において,「自然とのふれあい」や「ものづくり」は,造園の計画および設計,実際の施工等を学ぶための動機付けとして極めて重要な体験である。近年,生活環境の都市化に伴い,自然とのふれあいやものづくりの体験ができる機会は減少する一方である。このような現状の中,造園学を学ぶ学生の自然とのふれあいやものづくり体験の実態はいかなる状況であるのかを把握するために造園学を学ぶ大学生625人に対するアンケート調査を行った。その結果,自然とのふれあいに関しては,幼少期から学童期まで日常的に体験するような川魚,海洋生物等の採取,カブト虫等の昆虫採取,昆虫や植物の標本づくりは男子で5~6割,女子で7~8割はほとんど体験がなかった。ものづくり体験のうちの,ものづくり体験は,「2~3回程度の体験」を「体験無し」に含まれるとすると, 2割~5割の学生はものづくり体験がほとんどないことが明らかとなった。ケガの体験については,自然とのふれあいやものづくりの体験をほとんどしていないこともあり,カマで手を切ったり,重い石を落としたこと,脚立から落ちたり,木登りをしていて落ちたりしたことはほとんど体験がなかった。以上より,「自然とのふれあい」や「ものづくり」の体験の機会は,終戦後,空間の消失と共に減少してきたといわれていることが確認できた。これらの結果を踏まえ,造園科学科として2010年産より大学教育のカリキュラムへ動機付けの基礎となる「造園体験実習」の教科を新たに組み込む必要性が生じた。
著者
荒井 歩 植田 寛
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.307-314, 2010-03-15
被引用文献数
1

茶は時代により異なる社会需要に応じて,産地を変化させ,茶の栽培・製茶技術をつくりだしてきた。また,茶の生産に適した自然環境が,茶産地の形成に深く関わっている。そこで本研究では,日本における茶産地の発祥状況や形成過程を整理すると共に,地形・水系を把握した上で,茶産地における景観構造を明らかにすることを目的とした。研究対象地として,茶の生産に適した自然環境状態により栽培地が選定されていた近代以前からの産地25地区を選定した。調査分析の結果,茶産地の発祥要因は,発祥の祖の相違により4タイプに分類された。また,茶産地の形成過程は,主導者や生産・流通体制などの茶産業のあり方の相違により5タイプに分類された。茶産地の地形構造は,茶産地と河川の立地関係により4タイプに,茶産地と傾斜分布関係から3タイプに整理された。最後に景観構造のタイプ分類を行い,茶産地の景観構造は発祥時期や発祥要因によって特徴づけられると共に,これらの要因が茶産地としての選定にも影響を及ぼしていることが明らかとなった。
著者
石川 有生 荒井 歩 ISHIKAWA Nao Ayumi ARAI 東京農業大学大学院農学研究科造園学専攻 東京農業大学地域環境科学部造園科学科 Department of Landscape Architecture Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Landscape Architecture Science Faculty of Regional Enviroment Science Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.190-198,

現・千葉県我孫子市内に位置していた旧我孫子町南部周辺は,大正時代に入ると主に手賀沼沿いの斜面地に文化人の別荘や住居が建てられ,一種の文化人コロニーを形成した。本研究では,コロニーの概要及び構成文化人を明らかにした上で,文化人の作品に描かれたコロニーの景観構成要素を抽出し,その特徴を分析することを目的とした。描かれた景観構成要素の特徴として以下の結果を得た。(1)身近な動植物や,日常生活における眺望を構成する景観構成要素が多数確認された 。(2)白樺派の構成文化人は,彼らが思想的に求めた美しさや豊かさを,我孫子の 「一般的で身近な自然」の中に見出していた。Abiko city is located in the northwest of Chiba Prefecture. Lying between the Tonegawa River to the north and Lake Teganuma to the south, Abiko is rich in natural features. In the Taisho era, many intellectuals from Tokyo had their cottages on the south-facing slope by Lake Teganuma. The aim of this study is to grasp how intellectuals recognized landscape elements of Abiko in the Taisho era. First, we outline a colony of intellectuals who lived in Abiko. Second, we survey literature by intellectuals that might provide insights into the environment in Abiko. Third, we analyze landscape elements in the literature that was written by intellectuals. Finally, we consider features of the landscape elements of the lakeside environment in Abiko. As for the features of landscape elements that intellectuals wrote about, we obtained the following : the animals and plants living near a colony and one which be able to see in everyday by intellectuals. Especially Shirakaba school, the main group of intellectuals, found out the ideal beauty and happiness through their life in Abiko.