- 著者
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水庭 千鶴子
荒井 歩
國井 洋一
栗田 和弥
鈴木 貢次郎
MIZUNIWA Chizuko
Ayumi ARAI
Yoichi KUNII
Kazuya KURITA
Kojiro SUZUKI
- 出版者
- 東京農業大学
- 雑誌
- 東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.2, pp.171-182, 2011-09
造園学において,「自然とのふれあい」や「ものづくり」は,造園の計画および設計,実際の施工等を学ぶための動機付けとして極めて重要な体験である。近年,生活環境の都市化に伴い,自然とのふれあいやものづくりの体験ができる機会は減少する一方である。このような現状の中,造園学を学ぶ学生の自然とのふれあいやものづくり体験の実態はいかなる状況であるのかを把握するために造園学を学ぶ大学生625人に対するアンケート調査を行った。その結果,自然とのふれあいに関しては,幼少期から学童期まで日常的に体験するような川魚,海洋生物等の採取,カブト虫等の昆虫採取,昆虫や植物の標本づくりは男子で5~6割,女子で7~8割はほとんど体験がなかった。ものづくり体験のうちの,ものづくり体験は,「2~3回程度の体験」を「体験無し」に含まれるとすると, 2割~5割の学生はものづくり体験がほとんどないことが明らかとなった。ケガの体験については,自然とのふれあいやものづくりの体験をほとんどしていないこともあり,カマで手を切ったり,重い石を落としたこと,脚立から落ちたり,木登りをしていて落ちたりしたことはほとんど体験がなかった。以上より,「自然とのふれあい」や「ものづくり」の体験の機会は,終戦後,空間の消失と共に減少してきたといわれていることが確認できた。これらの結果を踏まえ,造園科学科として2010年産より大学教育のカリキュラムへ動機付けの基礎となる「造園体験実習」の教科を新たに組み込む必要性が生じた。