著者
林 海平 楊 舒淇 山田 宏 粟野 隆 Hai-ping Lin Suchi Yang Hiroshi Yamada Takashi Awano
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 = Journal of agriculture science, Tokyo University of Agriculture (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.47-56, 2020-09

本論文では,日本統治時代における台湾の日本人住宅・宿舎の庭園の保存・修復の今後に資することを目的に,残存事例が台湾でも数多い台北の日本人住宅・宿舎の庭園について調査した。その結果,以下のことを明らかにした。庭園規模は,建物面積の2~7倍が理想とされ,現地調査では多くの庭園が2倍程度であり,平均では2.2倍であったこと。庭園配置は,台北市内の風向きと住宅への通風が考慮された結果,南北方向,あるいは南西・北東方向に前庭・主庭を配置する傾向があったこと。庭園構成は,芝生が太陽の輻射熱を緩和し,植栽は建物の壁体への直射日光を緩和する役割を担い,ベランダ,テラス,パーゴラが防暑のための特徴的な施設であったこと。外囲いは住宅敷地内の通風を考慮して生垣が推奨されたこと。床下通風の観点から床は高床に設定され,沓脱には自然石ではなく人造石が多用されたこと。
著者
町田 怜子 石川 一憲 川口 洋一 小嶋 隆治 保戸塚 里香 中森 千佳 福田 奈緒子 Reiko Machida Kazunori Ishikawa Yoichi Kawaguchi Ryuji Kojima Rika Hotozuka Chika Nakamori Naoko Fukuda
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 = Journal of agriculture science, Tokyo University of Agriculture (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.42-48, 2018-06

本研究では,東京農業大学農学分野の教員・技術員と幼稚園教諭とが連携し,野菜や果樹栽培の教育研究を活かした環境教育プログラムを試みた。本研究では,プログラムのねらいに応じて伊勢原農場内で教育素材を選定し,環境教育プログラムを実施した。環境教育プログラムでは,ステビア,レモングラス,コキアを五感で体験し植物の用途や効用を学ぶ環境教育プログラムを実施した。加えて,幼児が日常生活で親しんでいる野菜・果樹としてブドウ,ブルーベリー,ミニトマトの栽培技術や品種の違いを学ぶ環境教育プログラムを実施した。本プログラムの教育効果として,伊勢原農場の多様な果樹・野菜とその栽培技術は幼児たちに身近な野菜や果樹への発見,楽しさ,感動を与え,観察した物事を記録できる観察力や理解力の向上を確認できた。
著者
立岩 寿一 Toshikazu Tateiwa
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 = Journal of agriculture science, Tokyo University of Agriculture (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-8, 2020-06

カリフォルニアの商業的稲作には多くの移民日本人達が最初から深く関わっていた。日本人差別と排斥が強まる中で移民日本人たちが現地社会とどのような関係をつくり地域に根付いていったのかは,アメリカ農業史と日本人移民史をクロスさせた研究となる。しかし差別と排斥ゆえに資料的制約が大きい。本稿はこの制約を乗り越えるため,「動産抵当証書」,「入国カード」,現地雑誌・ジャーナル,「日米年鑑」等の意義と分析方法を考察し,英語表記と日本語表記(漢字)の対照,移民日本人の特定方法を明らかにした。それにより20世紀初頭日本人移民の農村での定着過程が明らかになる。
著者
小山 七海 荒井 歩 Nanami Oyama Ayumi Arai
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 = Journal of agriculture science, Tokyo University of Agriculture (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.65-75, 2020-12

神奈川県大磯は,その温暖な気候により近代に別荘地として注目された。1885(明治18)年に陸軍軍医である松本順によって海水浴場が開設されたことで別荘地としての発展が始まる。1887(明治20)年には国鉄東海道本線の大磯駅が開業し,1896(明治29)年に初代総理大臣伊藤博文が大磯に住んだことで多くの著名人が大磯に別荘地を設置した。本研究は,別荘居住者の職業属性と別荘地の所在地を調査した上で,別荘居住者間の関係性を明らかにした。加えて別荘居住者の大磯における行動状況も整理した。さらに,職業属性および入居年代毎に別荘地の立地場所の傾向を分析し,大磯の景観的特性との関係について考察を行った。調査の結果,別荘地では政治家を中心としたコミュニティが形成され,伊藤博文,陸奥宗光,西園寺公望,加藤高明,山県有朋の5名が別荘地形成のキーパーソンとして挙げられた。また別荘居住者は大磯において政治的交流や病気療養を行っていたほか,地域のために寄付行動を行っていた。別荘地の範囲を地形特性に基づき8つの領域に区分し,各領域内における別荘地の分布状況を調べた結果,居住年代毎に別荘地の立地傾向に特徴があることが明らかとなった。