著者
小澤 正直 浜田 充 北島 雄一郎 西村 治道 Buscemi F.
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

【不確定性】ブランシアールの関係式を混合状態の任意の分解に適用する事で,混合状態に対する誤差擾乱関係を導く事ができる事を示し,2014年に本研究で導かれた,混合状態に対する誤差擾乱関係は最適な分解に対する誤差擾乱関係である事を示した。【相補性】測定過程が物理量の値を再現するのか,確率分布を再現するに過ぎないのかは未決着の問題であるが,定説では,Kochen-Specker の定理から測定は確率分布を再現するに過ぎないと考えられてきた。本研究では,定説に反して,任意の状態で確率分布を再現する事のできる2つの装置で同一の物理量を同時に測定するとそれらの測定値が常に一致することを示した。【情報理論的非局所性】量子通信路が他の通信路に分解可能であるための新しい必要十分条件を発見した。このような条件は,逆データ処理定理と呼ばれ,確率分布のマジョライゼーション順序を量子通信路に拡張している。【計算量理論的非局所性】量子対話型証明における検証者が多項式時間量子アルゴリズムを実行できることに加えて事後選択と呼ばれる能力を有する場合における検証能力を完全に特徴付けることに成功した。具体的には,このような量子対話型証明で検証可能な問題のクラスがPSPACEと一致することを示した。この成果はPSPACEという従来の計算量理論において重要な問題のクラスに対する新しい量子計算的特徴付けを与えるものである。【相対論的非局所性】非文脈依存的な隠れた変数の存在から導かれるKCBS不等式について研究し,非相対論的量子力学においてはすべての状態においてKCBS不等式が破れるわけではないのに対して,相対論的場の量子論においてKCBS不等式はすべての状態において破れるということを示した。【量子暗号】2014年発表のユニタリ演算子構成の定量的な限界式の一般化を行い,より広範囲の系に対して適用可能なものを提案した。