著者
太田 麻希子 福澤 康典 川満 芳信 Ota Makiko Fukuzawa Yasunori Kawamitsu Yoshinobu 琉球大学農学部 Faculty of Agriculture University of the Ryukyus
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.27-53, 2007-08

本研究の目的は,ピタヤのCAM型光合成特性を調べ,最適栽培環境を明らかにすることである.温度,光強度,CO_2濃度を種々組み合わせて設定し,各条件下におけるCER,気孔伝導度を連続測定した.得られた結果の概要は次のとおりである.1.ピタヤのCERと気孔伝導度を連続測定した結果,CAM型光合成植物特有の日変化パターンであった.また,茎中に含まれる有機酸の内,リンゴ酸だけが暗期に上昇し明期に減少する日変化を示した.これより,ピタヤはCAM型光合成植物である.2.ピタヤのCERは温度によって大きく変動し,最も高くなる温度は30/20℃で,17/13℃では著しく低下した.3.ピタヤのCO_2収支量は光強度の上昇に伴い増加し,600~800μmol m^<-2>s^<-1>で定常値に達した.光強度に対するCER反応は茎の発達段階によって異なり,表皮が未発達な薄い未成熟茎は,成熟茎に比べて最適光強度域が低かった.4.異なる温度,光強度条件下でCO_2施肥を行ったところCO_2収支量は増加した.特に,弱光下,低温条件におけるCO_2収支量の増大が顕著であり,ピタヤの生育において不利な条件下のほうがCO_2施用効果は大きかった.5.ピタヤの栽培現場で発生している剪定茎の有効利用を検討するため,その無機成分含有量などを調査した結果,ピタヤの茎部にはMg,Ca,Kといった元素が多く含まれているとわかった.また,土壌に施用する資材とするため,茎部を用いて炭化物を生成した.結果としては,ピタヤの廃棄茎は炭化することで大きく減容できた.また,生成された炭化物にもKやMgといった有用な無機成分が多く含まれていたことから,廃棄されるピタヤ茎は堆肥化,もしくは炭化によって有効利用が望める可能性がある.6.ピタヤの沖縄での栽培を考慮すると,冬季は温度と日射が不足するためピタヤの生育に不利である.しかし,高CO_2濃度によってCO_2吸収は回復したためCO_2施用が有効な対策である考えられる.特に,ピタヤのCO_2収支量は環境によって大きく影響されたことから,きめ細かな環境制御ができるよう施設における栽培が望ましい.
著者
寺本(稲福) さゆり 住 秀和 金城 秀安 川満 芳信 Inafuku-Teramoto Sayuri SUMI Hidekazu KINJYO Hideyasu KAWAMITSU Yoshinobu 琉球大学農学部 大宜味村シークヮーサー振興室 沖縄県北部農林水産振興センター
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.73-81, 2010-08

琉球列島には多くのシークヮーサー遺伝資源が古くより栽培され,残されている.クガニーとは,これらのうちで果実形質の優良なシークヮーサー(C. depressa Hayata) 系統の総称であり,沖縄県で栽培される主要品種である.これらのうち,特に著名な4種のクガニーの品種(大宜味クガニー,勝山クガニ一,カーアチー,伊豆味クガニー)について,フラボノイド類,フェネチルアミン類,香気成分といった機能性成分を分析し,品種間差の調査を行なった.ポリメトキシフラボノイド類 (PMFs) のノピレチンはすべてのクガニーで高く,タンゲレチン,シネセチンとあわせて3種類のPMFsが未熟果皮に多く含まれていた.フェネチルアミンのシネフリンは,PMFs同様に未熟果皮に多く含まれていた.一方,香気成分とフラパノン類については,伊豆味クガニーにおいて他のクガニーには含まれない1,8-シネオールやネオヘスペリジンといった成分が多く含まれていた.品種間差異は特に香気成分において大きく現れる傾向があり,最も主要な経済栽培品種となっている大宜味クガニーと勝山クガニーとの差は小さかった.これらの結果をもとに,沖縄独自の貴重な地方資源として,今後クガニ一品種毎の特性を活かした加工品開発の進展が期待される.Shiikuwahsa (C. depressa Hayata) that has been cultivated for long time and there are many accessions in Ryukyu Islands. Kuganii is the name of the superior cultivars of shiikuwasha that are also major cultivars in present Okinawa. Among of them, we selected 4 famous cultivars of kuganii and analyzed polymethoxyflavones, flavanones, phenethylamine (synephrine) and volatile constitutions to identify the difference between each cultivar. Nobiletin, it was the most abundant polymethoxyflavone in all of kuganii. Three of PMFs (nobiletin, sinensetin and tangeretin) detected in all kucanii, and they were contained high in immature peels. Synephrine, categorized phenylethylamine, was also high in immature peels of all kuganii. However, the difference had shown clearly in the content of flavanones and aromatic constitution. 'Izumikuganii' contained high percentages of 1,8-cineole in volatile components and flavanone neohesperidin, they were not contained in other kuganii peels. 'Ogimikuganii', the main cultivars in Okinawa was closely similar to 'Katsuyamakuganii' in all phytochemicals that analyzed in this study. These phytochemicals data will be contribute to develop various applications in each cultivar that is the important local resources for further utilization.
著者
寳川 拓生 薮田 伸 冨永 淳 渡邉 健太 荒木 秀雄 川満 芳信 たからがわ ひろお やぶた しん とみなが じゅん わたなべ けんた あらき ひでお かわみつ よしのぶ Takaragawa Hiroo Yabuta shin Tominaga Jun Watanabe Kenta Araki Hideo Kawamitsu Yoshinobu 琉球大学農学部 不二製油
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.27-34, 2015-02-12

沖縄県においてヒマワリは景観の良さから観光資源として,さらには,地力回復用の緑肥として注目されている.そのヒマワリ栽培を油糧生産と遊休農地の解消の一助となると考え,播種期の違いが収量に与える影響について比較検討した.春播き栽培では,栽培期間中の気温,日射量,降水量,台風接近数および開花に要する積算温度が高く,発芽日から開花日までの日数が短かった.また,花芽形成期から開花期の間のCGRおよびLAIが低く,乾物収量,子実収量はそれぞれ705,177 kg 10a_-1と秋播き栽培に比べて低くなった.これは夏季の高温・高日射により栄養成長が不十分なまま開花し,子実肥大が遅れたことが原因と考えられた.一方,秋播き栽培では,花芽形成期から開花期までのCGRおよびLAIが高く,乾物収量,子実収量はそれぞれ1274,246 kg 10a-1と高かった.太陽エネルギー利用効率が植物体全体および子実に関してそれぞれ2.11,0.64%といずれも春播き栽培に比べて2倍以上高くなった.これは開花期までの成長期間と低温・低日射でも高い葉面積を確保できたことが原因と考えられた.以上より,沖縄においては,秋冬に降雪・降霜がなく,夏季の高温・高日射・台風を避けられるため,秋播き栽培も有用であると考えられた.
著者
比屋根 真一 川満 芳信 村山 盛一 Hiyane Shinichi Kawamitsu Yoshinobu Murayama Seiichi 琉球大学農学部
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.2-8, 1998-08

サトウキビ4種を用いて,光合成速度の長時間連続測定から光合成支配要因を調べた.2000μmol m^<-2>s^<-1>の強光条件下では,測定後半に光合成速度の低下が認められた.特に,高い光合成速度を示したTainanおよびNiF4は,低いBadila,Yomitanzanと比較して急激な低下であった.しかし,1000μmol m^<-2>s^<-1>の条件下では,BadilaおよびYomitanzanは緩やかな山なりの曲線を描いたのに対し,Tainanは直線的に,NiF4においては時間の経過と共に緩やかに上昇した.気孔伝導度の日変化は光合成速度と同様のパターンを示した.光強度2000μmol m^<-2>s^<-1>の条件における葉内CO_2濃度は,測定開始から8~10時間経過後上昇した.CO_2濃度900ppm条件下において光合成速度を長時間連続測定し,気孔の影響を省き光合成速度の制限を明らかにした.その結果,900ppm区の光合成速度は350ppm区に比べ若干高めで推移したものの,両区とも測定開始後約5時間目以降に低下した.従って,光合成速度に対する気孔の制限程度は低いと考えられた.日変化を基礎にCO_2収支量の"光―光合成曲線"を作成したところ,1000μmol m^<-2>S^<-1>に飽和点を持つ飽和型曲線を示し,瞬時の測定の"光―光合成曲線"とは著しく異なる結果となった.以上から,光強度2000μmol m^<-2>s^<-1>の条件における光合成速度の低下は,気孔閉鎖に伴う葉内への炭酸ガス供給量の低下に起因したものではなく,葉の内部要因の活性低下が主な原因と推察された.