著者
川満 芳信 川元 知行 吉原 徹 村山 盛一
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.91-105, 1997-12-01

マングローブ構成樹種であるメヒルギ, オヒルギ, ヤエヤマヒルギをポット栽培し根系に400mMNaCl処理を施した後, 各器官のイオン組成の変化を調べた。また, 光合成速度, 葉厚, 根の乾物重も併せて調べた。自然環境下のヒルギ3種およびマヤプシキ, ヒルギダマシの葉部のイオン組成も調査した。これらの結果を基礎に, イオン動態からみたヒルギ3種の耐塩性について検討した。結果を要約すると以下になる。1)400mMNaCl処理によって3種ヒルギの光合成速度は低下し, その割合はメヒルギ, オヒルギ, ヤエヤマヒルギの順で大きかった(第1表)。2)400mMNaCl処理によって3種ヒルギの各器官で顕著に増加したイオンはNa^+であり, 葉部および根系における増加割合に種間差がみられ, 葉部ではメヒルギが最も大きく, 細根ではメヒルギ, オヒルギ, ヤエヤマヒルギの順であった(第3図)。3)400mMNaCl処理に伴う根の乾物重の変化とNa^+, 全窒素の増加割合から, オヒルギの主根は他の2種にはみられない特異的な機構を持つことが示唆された(第2表, 第3,11図)。4)オヒルギの葉は他の2種に比べK^+/Na^+比が低いことから, 細胞の浸透圧調節機構が異なるタイプであると推察された(第12,14図, 第3,4表)。5)ヤエヤマヒルギはNa^+の含量および増加割合は低いが, 主根のCl^-含量が高く, 自然環境下の葉の含量も高いことから, Na^+に対する根の水の選択能は優れているが, Cl^-については葉まで移送させることが示唆された(第3,4図, 第3,4表)。ヤエヤマヒルギは他の2種に比べてMg^<2+>含量が著しく高かった(第7図)。6)葉のCa^<2+>の含量に種間差がみられ, ヤエヤマヒルギ, オヒルギ, メヒルギの順で高い値を示した(第6図)。7)自然環境下のヒルギ3種は葉位におけるNa^+と全窒素に高い相関関係が認められた。
著者
ウデイン S. M. モスレム 村山 盛一 石嶺 行男 続 栄治 原田 二郎
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.747-753, 1995-12-01
参考文献数
19
被引用文献数
2

木酢液・木炭混合物(サンネカE)が夏植サトウキビの乾物生産および根の生育に及ぼす影響を明らかにするために, サトウキビ品種NCo310を供試し, サンネッカE施用量を0(対照区), 200, 400および800kg/10aの4水準設定して5反復で実験を実施した. その結果, サンネッカE施肥により茎重, 茎長, 茎径, 糖含量等のサトウキビの収量構成要素が増大した. サンネッカE施用区におけるCGR, NARおよびLAIは対照区より高い値を示し, CGRとNARおよびLAIの相関は有意であった. 原料茎収量, 葉糖収量および全乾物重もサンネッカE区が対照区よりそれぞれ13-24%, 19-31%および14-20%増加した. また, 原料茎収量, 蔗糖収量および全乾物重の最高値は400kg/10aサンネッカE区で得られた. サンネッカE区の根系の分布は水平方向, 垂直方向とも各分布域における根重密度はサンネッカE区が高かった.
著者
村山 盛一 大村 武 ・宮里 清松
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.287-290, 1974-12-31
被引用文献数
4

栽培条件によってヘテロシスの発現がどのように変化するかを検討するために,筆者らが従来調査した交配組合せの中から組合せ能力の高いものと低いもの11組合せを選び,実用品種の経済的栽培条件の範囲に含まれる標肥普通植区・標肥密植区・多肥普通植区および多肥密植区の4条件で試験し,つぎのような結果をえた。 1)一般に組合せ能力の高い組合せはどの栽培条件でも高いヘテロシスを示し,組合せ能力の低い組合せはどの栽培条件でも低かった(表1)。 2)各形質のヘテロシスについて栽培条件間の相関係数を求めたところ,千粒重以外の形質については相関は極めて高く,ほとんどが1%水準で有意であった(表2)。 3)平均収量について有意性の検定を行たうと,鈴成×Zenith CI 7787は現品種および対照品種を通じて最高収量を示したベニセンゴクよりも3579/m^2(42%)の増収を示し,統計的に有意であった。愛国×Zenith CI 7787および農林22号×荒木も有意ではないがベニセンゴクよりもかなりの増収を示した(表3)。 以上の結果から,もしF_1種子を容易に大量に採種できる方法が開発されれば,イネの実際栽培におけるF_1雑種利用の可能性が考えられる。
著者
ウデイン S.M.モスレム 村山 盛一 石嶺 行男 続 栄治 原田 二郎
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.747-753, 1995
被引用文献数
14

木酢液・木炭混合物(サンネカE)が夏植サトウキビの乾物生産および根の生育に及ぼす影響を明らかにするために, サトウキビ品種NCo310を供試し, サンネッカE施用量を0(対照区), 200, 400および800kg/10aの4水準設定して5反復で実験を実施した. その結果, サンネッカE施肥により茎重, 茎長, 茎径, 糖含量等のサトウキビの収量構成要素が増大した. サンネッカE施用区におけるCGR, NARおよびLAIは対照区より高い値を示し, CGRとNARおよびLAIの相関は有意であった. 原料茎収量, 葉糖収量および全乾物重もサンネッカE区が対照区よりそれぞれ13-24%, 19-31%および14-20%増加した. また, 原料茎収量, 蔗糖収量および全乾物重の最高値は400kg/10aサンネッカE区で得られた. サンネッカE区の根系の分布は水平方向, 垂直方向とも各分布域における根重密度はサンネッカE区が高かった.
著者
ホサイン M. A. 石嶺 行男 倉持 仁志 赤嶺 光 村山 盛一 近内 誠登
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.197-205, 1997-11-25
被引用文献数
3

ハイキビ(Panicum repens L.)は熱帯・亜熱帯に分布するイネ科の多年生雑草で, その主な繁殖型が地下茎であるため, 防除困難な雑草の1つとして教えられており, 熱帯・亜熱帯の農耕地, ゴルフ場ならびに休耕地等でその雑草害が報告されている。今回は沖縄市高原のハイキビ自生地はおいて, 既存の薬剤でハイキビ防除に有望と考えられた作用性の異なる除草剤計27剤を選抜し(Table. 1), それらの使用基準薬量の上下に試験薬量を設定し, ハイキビの生育期において有効な薬剤の選抜試験を行った結果, 以下の知見が得られた。薬剤処理後21日目の調査時で, ハイキビの茎葉部に対して高い除草剤活性を示した薬剤はヘキサジノン, アシュラム, グリホサート, ビアラホスおよびグルホシネートの5剤であり, それぞれ47〜60, 60〜87, 40〜67, 57〜67, 80〜90%の除草活性を示した(Table 1 2)。次にこの5剤のハイキビに対する再生抑制効果を調べるために薬剤処理後35日目に地下茎と球茎を掘上げ, シャーレ試験を行った。まず地下茎を用いた試験では, ヘキサジノンで95〜100%, アシュラムで92〜95%, グリホサートで82〜97%, ビアラホスで56〜72%, グルホシネートで91〜100%の発芽阻害活性を示した(Table 3, 4)。また球茎を用いた試験では, ヘキサジノンで48〜59%, アシュラムで90〜92%, グリホサートで62〜65%, ビアラホスで25〜50%, グルホシネートで49〜88%の発芽阻害活性を示し(Table 3, 4), この5剤がハイキビに対して有効な薬剤であることが示された。
著者
比屋根 真一 川満 芳信 村山 盛一 Hiyane Shinichi Kawamitsu Yoshinobu Murayama Seiichi 琉球大学農学部
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.2-8, 1998-08

サトウキビ4種を用いて,光合成速度の長時間連続測定から光合成支配要因を調べた.2000μmol m^<-2>s^<-1>の強光条件下では,測定後半に光合成速度の低下が認められた.特に,高い光合成速度を示したTainanおよびNiF4は,低いBadila,Yomitanzanと比較して急激な低下であった.しかし,1000μmol m^<-2>s^<-1>の条件下では,BadilaおよびYomitanzanは緩やかな山なりの曲線を描いたのに対し,Tainanは直線的に,NiF4においては時間の経過と共に緩やかに上昇した.気孔伝導度の日変化は光合成速度と同様のパターンを示した.光強度2000μmol m^<-2>s^<-1>の条件における葉内CO_2濃度は,測定開始から8~10時間経過後上昇した.CO_2濃度900ppm条件下において光合成速度を長時間連続測定し,気孔の影響を省き光合成速度の制限を明らかにした.その結果,900ppm区の光合成速度は350ppm区に比べ若干高めで推移したものの,両区とも測定開始後約5時間目以降に低下した.従って,光合成速度に対する気孔の制限程度は低いと考えられた.日変化を基礎にCO_2収支量の"光―光合成曲線"を作成したところ,1000μmol m^<-2>S^<-1>に飽和点を持つ飽和型曲線を示し,瞬時の測定の"光―光合成曲線"とは著しく異なる結果となった.以上から,光強度2000μmol m^<-2>s^<-1>の条件における光合成速度の低下は,気孔閉鎖に伴う葉内への炭酸ガス供給量の低下に起因したものではなく,葉の内部要因の活性低下が主な原因と推察された.
著者
川満 芳信 重久 利枝子 福澤 康典 村山 盛一
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-14, 2002-12-01

CAM植物であるパインアップルのCO_2収支量を増大させるためには明期の気孔を更に開孔させる必要があると考え,気孔開閉を制限している要因を検討した.1.暗期を短縮してCO_2固定を抑制してもリンゴ酸蓄積量は対照区とほぼ同じであった.暗期におけるリンゴ蓄積量とPhase-3の長さ,明期におけるリンゴ酸の消失と気孔開孔(ガス交換の開始)には関係は無く,Phase-4において葉内CO_2濃度が低下しても気孔は開かなかった.2.暗期短縮やCO_2-free air処理はリンゴ酸蓄積量を減少させたが,Phase-4の気孔開孔は著しく阻害された.3.葉のリンゴ酸含量が増加すると水ポテンシャルおよび浸透ポテンシャルは低下した.4.暗期を短縮した長日条件にすると明期のCO_2吸収は増加し,総CO_2収支量は僅かに増加した.更に明期が長くなると,C_3回路よりもリンゴ酸を精製するC,ジカルボン酸回路が活発に働き,総CO_2収支量の増加は期待できなかった.