著者
荷川取 佑記 原口 大 仲宗根 弘晃 儀間 靖 平良 秀平 砂川 喜信 比屋根 真一 黒沢 高秀 浅井 元朗
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.35-40, 2021 (Released:2021-07-13)
参考文献数
11

メキシコ原産であるトウダイグサ科のカワリバトウダイ(Euphorbia graminea Jacq.)は,日本でも沖縄本島のうるま市で2004年に確認された外来種であり,近年においても,沖縄県の離島である宮古島の各所でカワリバトウダイの生育を観察し,サトウキビ圃場への侵入を確認した。そこで,宮古島地域でのサトウキビ圃場におけるカワリバトウダイの分布状況およびその推移を把握するため,標本調査,過去に行われた植生調査の確認を実施し,現地調査を2017~2018年および2019年の2回に渡って行った。その結果,宮古島地域では2007年に初めて確認され,5年ほどで分布を拡大しながらサトウキビ圃場に侵入し,10年ほどで一部の離島を除くほぼ全域に広がり,2019年には宮古島地域のサトウキビ圃場全体の20~30%で確認された。本調査結果から,宮古島地域ではカワリバトウダイが既にサトウキビ圃場における主要な雑草の一つとなっており,また本地域において短期間で急速に分布拡大をしたことから,他地域においてもサトウキビ圃場における主要な雑草となる可能性があり,注視していく必要がある。
著者
比屋根 真一 川満 芳信 村山 盛一 Hiyane Shinichi Kawamitsu Yoshinobu Murayama Seiichi 琉球大学農学部
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.2-8, 1998-08

サトウキビ4種を用いて,光合成速度の長時間連続測定から光合成支配要因を調べた.2000μmol m^<-2>s^<-1>の強光条件下では,測定後半に光合成速度の低下が認められた.特に,高い光合成速度を示したTainanおよびNiF4は,低いBadila,Yomitanzanと比較して急激な低下であった.しかし,1000μmol m^<-2>s^<-1>の条件下では,BadilaおよびYomitanzanは緩やかな山なりの曲線を描いたのに対し,Tainanは直線的に,NiF4においては時間の経過と共に緩やかに上昇した.気孔伝導度の日変化は光合成速度と同様のパターンを示した.光強度2000μmol m^<-2>s^<-1>の条件における葉内CO_2濃度は,測定開始から8~10時間経過後上昇した.CO_2濃度900ppm条件下において光合成速度を長時間連続測定し,気孔の影響を省き光合成速度の制限を明らかにした.その結果,900ppm区の光合成速度は350ppm区に比べ若干高めで推移したものの,両区とも測定開始後約5時間目以降に低下した.従って,光合成速度に対する気孔の制限程度は低いと考えられた.日変化を基礎にCO_2収支量の"光―光合成曲線"を作成したところ,1000μmol m^<-2>S^<-1>に飽和点を持つ飽和型曲線を示し,瞬時の測定の"光―光合成曲線"とは著しく異なる結果となった.以上から,光強度2000μmol m^<-2>s^<-1>の条件における光合成速度の低下は,気孔閉鎖に伴う葉内への炭酸ガス供給量の低下に起因したものではなく,葉の内部要因の活性低下が主な原因と推察された.
著者
比屋根 真一 真境名 元次 比嘉 明美 儀間 靖 新里 良章 生駒 泰基
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.74, pp.39-42, 2008-05-15

沖縄本島南部地域のサトウキビ畑における曝気処理水の散布時期と量を求めるため,ジャーガルにおいてタンクモデルを適応した.本モデルによる土壌水分量のRMSEは2.5%であり,タンクモデルによる土壌水分量や水収支量の推定は可能であると判断した.過去30年間の降水量をタンクモデルに入力し,作土層からの浸透水の発生時期を検討すると,梅雨時期の5〜6月と台風等の豪雨が認められる8〜9月に多く認められた.月あたりの浸透水量と降水量の関係を検討すると,両者の間に統計的に有意な正の相関関係が認められ,浸透水量=0.8061×降雨量-71.776の関係式が得られた.この式から浸透水が認められない降水量は89mm/月となった.日あたりの降水量と浸透水量の関係から,土壌水分の違いによる作土層から浸透水が認められない降水量は,初期しおれ点付近では27.2mm/日,圃場容水量から数日後のそれは4.5mmとなった.以上より,タンクモデルを用いてジャーガルにおける曝気処理水の散布時期と量が明らかとなった.