著者
田中 和彦 Kazuhiko Tanaka
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.130, pp.31-43, 2014-03-31

アセスメントはソーシャルワークの要とされ,質の高いアセスメントができてこそ価値に基づくソーシャルワーク実践が展開できるといえる.若手PSWに対するソーシャルワーク実践力の向上を目的とした研修の方向性を探るために,アセスメントプロセスに着目し,若手PSWのアセスメントの特徴について,面接事例を用いた内容分析をおこなった.その結果,若手PSWのアセスメントプロセスにおける困難性として①PSWの枠組みでクライエントのスキルの査定を中心としていること,②変換ミス(クライエントの言葉についてクライエントの真意をくみ取れないまま,PSWの言葉で言い換えている),③話題の回避(クライエントが話したいと思われることについて避けている),④病理・欠損モデル(クライエントの問題点を抽出しようとする視点が強い),⑤直線的理解(状態の原因探しに視点が偏重である)という特徴がみられた.さらに上記5点は相互に影響しあい,アセスメントの本来の目的であるクライエントの全人的理解を困難にしていることがわかった.研修の方向性として,エキスパートのアセスメントスキルの抽出を踏まえ,体験の積み重ねだけにとどまらないアセスメントスキル獲得のための研修の必要性と,そのためのソーシャルワークの「職人技」の言語化の必要性が示唆された.