著者
Moyer Jack T. Zaiser Martha J.
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.466-468, 1982

1980年8月15日16時30分, 三宅島の水深12mの地点で全長約90cmの2尾のウツボ<I>Gymnotborax kidaka</I>が産卵しているのを観察した.両者は尾部をゆるくからませていたが, 突然腹部を押しつけ合ってから離れた.その瞬間精子による水の白濁が観察された.卵は直径約2mmの丸い浮性卵で, 親魚による卵の保護は観察されなかった.1980年7月29目19時30分には, 岸近くの水深2.5mの地点で, 全長約25cmの<I>Uropterygtus necturus</I>4尾が群がって行動しているのを観察した.これは産卵直前の行動と思われた.
著者
Zaiser Martha J. Moyer Jack T.
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.95-98, 1981

三宅島沿岸で観察されたエソ科魚類<I>Synodus ulae</I>の産卵行動について報告する.本科魚類の産卵習性は未知であった.本種の産卵は1980年9月7日18時04分に三宅島伊ケ谷湾水深14mで観察された.産卵時の水温は29℃, 潮流はほとんどなかった.彦卵は雌雄一対 (全長約20cm) によってなされたが, 雌雄の外見による識別は困難であった.雌雄は海底から約1m上昇し体側または腹部を互いに接触させたまま約4m急上昇して旋回し, 雌雄別々に海底に戻る.急上昇の頂点で産卵が行われ雲状の生殖体が多量に放出される.産卵観察は1例だけであったが, 求愛行動はしばしば目撃された.即ち雌雄が砂底上に体を接触させて静止し, 雄はときどき咽喉部をふくらませて雌の周囲をまわる.薄暮時の急上昇による本種の産卵行動は産卵時の捕食圧を防ぐための適応と考えられ, この点について論議を行った.
著者
Moyer Jack T.
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.34-36, 1974

1973年8月24日~28日に三宅島でニシキベラの産卵行動を観察した.産卵行動は毎日午前10時までに終了した.水温は27℃ であった.産卵に際しては岩の近くに多数の個体が群がり, 海底から30~40cmほどのところに泳ぎ上っては生殖物質を放出するのが観察された.
著者
川嶋 尚正 Moyer Jack T.
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.260-266, 1982

琉球列島の石垣島, 沖縄本島より得られたスズメダイ科魚類の2種<I>Pristotis jerdoni, Pomacentrus vaiuli</I>を記載した.<BR><I>Pristotis jerdoni</I>は日本からの初報告となるので, オキスズメダイの和名を提唱する.本種のペルシア湾, 南シナ海, 本邦近海の標本を比較すると, 幾つかの比較長に僅かな地域差が見られた.一方コハクスズメダイ (新称) <I>Pomacentrus vaiuli</I>の中部太平洋からの報告のうちマーシャル諸島以北からの報告は, 近年三宅島からなされたものだけであるが, 本邦産のものについての詳しい記載はなされていなかった.本種は琉球列島ではかなり普通に見られたが, 本報が初記録である.三宅島ではまれであった.しかし三宅島での越冬と産卵が確認されているので, 本種の分布の北限は三宅島近海である.
著者
Moyer Jack T.
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.76-81, 1987

浮性卵を産む礁魚の多くは, 産卵の際に雌雄が上方へ突進する (spawning rush).この行動は親魚と卵が捕食されないための防衛行動であると考えられているが, 未だ検証されていない.本研究では1981年に三宅島においてニシキベラのグループ産卵を461回観察し, 他魚種による親魚の捕食を定量的に調べた.その結果, 7種の魚が合計206回親魚を襲うのが観察された.この内171回はspawning rush中の魚に対して行われたが, 一度も成功しなかった.spawning rush前のbobbingやmilling中の親魚に対しては35回の攻撃があったが, これにより4尾の親魚が捕食された.すなわち, 全体としての捕食者の成功率は1.9%にすぎなかった.これに対し, 卵は9種のプランクトン食性魚類の捕食を受け, その頻度は213回中90回 (42.3%) に達した.以上の結果から, spawning rushは親魚の捕食者に対する防衛としては有効であるが, 卵の捕食者に対してはほとんど効果のないことが判明した.この他7種の礁魚のspawning rushと卵捕食との関係についても述べた.