著者
佐藤 章 Sato Akira
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-15, 2013

本稿は、アフリカ開発にとって不可避の課題として認識されている紛争解決と平和構築の問題に関して、とくに国連や欧米諸国などのアフリカ域外の主体によって行われてきた軍事的取り組みの歴史と現状を考察しようとするものである。紛争解決・平和構築を目的として域外主体によって行われてきた軍事的取り組みは、1990年代のソマリアとルワンダでの経験を踏まえて試行錯誤が積み重ねられてきた。これを経て近年では、域外主体がアフリカ諸国の平和構築能力の強化を支援しつつ、国連PKOに代表される域外の軍事要員がアフリカ側と連携する体制が確立されてきている。本稿ではこのような歴史を整理したのち、アフリカの紛争解決・平和構築に深く関わる新しい考え方として注目されている「保護する責任」をめぐる問題を論ずる。具体的には、「保護する責任」に依拠して2011年4月にコートジボワールで行われた国連PKOによる軍事行動を取り上げ、「保護する責任」をめぐり提起されてきた諸論点が、この現実の軍事行動においてどのように現れていたかを検討したい。
著者
小野 晃一 勝又 達也 菅原 泉 上原 巌 佐藤 明 Kouichi Ono Katsumata Tatsuya Sugawara Izumi UEHARA Iwao Sato Akira
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.60-67, 2011-06

森林施業に関わる野ネズミ類の役割を明らかにする一環として,林相の異なる針葉樹人工林と広葉樹二次林を跨ぐ形で林内に生息する野ネズミ類を捕獲・放獣する方法により2006年から2009年まで個体群の変動を調査した。その結果,調査対象としたアカネズミ(Apodemus speciosus),ヒメネズミ(Apodemus argenteus)の捕獲個体数は2006年9月には延べワナ数675個で157個体,422回と最高の高密度状態を記録したが,11月から急激な減少が認められ,その後は1年以上ひと月の捕獲個体が数頭という低密度で推移したことから,野ネズミ類個体群にクラッシュが生じたものと判断した。アカネズミとヒメネズミの捕獲個体数の変動を比較すると,それぞれの生息特性を反映して急減の時期に3か月の時間的差異が見られた。しかし,全体的な変動の傾向は両種とも同様の推移を示した。針葉樹林と広葉樹林での生息状況を見ると,アカネズミでは広葉樹林の利用頻度が高く,秋季から冬季にかけて針葉樹林の依存度が増す傾向にあった。ヒメネズミでは針葉樹林のみの利用個体が多いものの,年によっては夏季に広葉樹林のみ利用する個体が増加した。また,いずれの種とも両方の林分を同時に利用している個体は少ないという傾向を得た。行動範囲に関しては,高密度下では大きく,ランダムに分布し,低密度下では小さく,限定的になる傾向が見られた。