著者
富田 昌平 藤野 和也 TOMITA Shohei FUJINO Kazuya
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.161-167, 2016-03-22

幼児期における下品な笑いの発達について、2~6歳児の親188名を対象に質問紙調査を行った。その結果、下品な笑いは男女共通に見られ、4歳から6歳にかけて多く見られることが示された。また、ギャグによる笑いは、流行のギャグをそのまま反復するだけであったが、下ネタによる笑いは、「おしり」「うんち」「おなら」などの単語と「フリフリ」「プー」「ブリッ」などのオノマトペとを結合させる、他者との対話を通して笑いを成立させるなど、子ども独自の生活世界から生み出されるユニークさを伴っていた。下品な笑いに対する親の態度は、厳格か寛容かで分けられたが、親がどちらの意見を持つかに年齢や性別による違いは見られず、どこまで許せるかという程度の差こそあるものの、その具体的な対応や指針は基本的には同様であった。以上の結果は、4、5歳児期における自己意識と仲間関係の発達という観点から考察された。
著者
富田 昌平 藤野 和也 TOMITA Shohei FUJINO Kazuya
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.161-167, 2016-03-22

幼児期における下品な笑いの発達について、2~6歳児の親188名を対象に質問紙調査を行った。その結果、下品な笑いは男女共通に見られ、4歳から6歳にかけて多く見られることが示された。また、ギャグによる笑いは、流行のギャグをそのまま反復するだけであったが、下ネタによる笑いは、「おしり」「うんち」「おなら」などの単語と「フリフリ」「プー」「ブリッ」などのオノマトペとを結合させる、他者との対話を通して笑いを成立させるなど、子ども独自の生活世界から生み出されるユニークさを伴っていた。下品な笑いに対する親の態度は、厳格か寛容かで分けられたが、親がどちらの意見を持つかに年齢や性別による違いは見られず、どこまで許せるかという程度の差こそあるものの、その具体的な対応や指針は基本的には同様であった。以上の結果は、4、5歳児期における自己意識と仲間関係の発達という観点から考察された。
著者
富田 昌平 久世 彩加 河内 純子 Tomita Shohei Kuze Ayaka Kawachi Junko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
no.72, pp.335-350, 2021-02-26

本研究では,幼児はかっぱおやじというローカルな空想上の存在のリアリティをどのように生成し共有するのかについて探った。年中クラスの11月から年長クラスの11月までの1年間,かっぱおやじをめぐる子どもたちの語りや行動を観察とインタビューで詳細に記録し,分析した。その結果,存在のリアリティの生成と共有に関しては,次の5つの特徴が見出された。第1に,その存在は子どもにとって不可解な結果に遭遇した時,その原因を説明しようと動機づけられて生じていた。第2に,その存在は本来的に観察不可能であるが,一瞬の経験(見る,聞く,触れるなど)に関する目撃談が仲間内で共有されることによって,観察可能な確かな存在へと認識が変化した。第3に,その存在は超自然的能力(姿の消失,瞬間移動,固形物の通り抜けなど)を持ち,その能力を使って他者を驚かせたり悪さしたりできると考えられていた。第4に,その存在の超自然的能力に基づく行動は,張り紙(護符)やお守りの活用によって制限できると考えられていた。第5に,その存在を含む集団の中には悪い者だけでなく良い者もおり,コミュニケーション可能であり,付き合い方によっては幸運をもたらしてくれると考えられていた。また,発達と遊びの展開に関しては,年長クラスとは異なり,年中クラスでは保育者の手を借りずに独力でアイデア同士をつなげ,特定のストーリーラインをつくり出し,遊びを展開させることが困難であることが示唆された。最後に,幼児が想像によってつくり出す空想世界の意味について議論された。
著者
富田 昌平 TOMITA Shohei
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.149-158, 2014-03-31

本研究では、子どもはなぜサンタクロースを信じ、やがて信じなくなるのかについて、大学生を対象とした。回想的な質問紙調査により得られた事例をもとに考察を行った。その結果、以下のことが示唆された。子どもは幼児期の間にプレゼントにまつわる神秘的体験をもとに超自然的な力を持つ行為者としてのサンタクロースの概念を明確にしていく。幼児期の終わりから児童期中頃になると、子どもは論理的思考力や懐疑主義を身に着けるようになり、サンタクロース神話をめぐる数々の矛盾点に疑いの目を向け、それらを見破るようになる。具体的には、プレゼントの隠し場所や包み紙に関する見破り、プレゼントを置く瞬間の目撃、サンタクロースへの手紙の発見、手紙やプレゼントの内容に対する疑惑などが挙げられる。また、親や年長のきょうだい、友達からの証言もサンタクロースに対する不信に拍車をかける。そのようにしてサンタクロースを信じなくなる一方で、サンタクロースを信じようとする心も併せ持っており、子どもの心は両者の間を揺れ動いている。従って、親をはじめとする大人がそうした子どもの揺れ動く心にていねいに寄り添い、誠実に対応することがこの時期大切なこととして考えられる。さらに、「サンタクロースは本当はいない」という真実を知った時、子どもは怒りや悲しみ、憤りなど様々な感情的反応を示すが、大切なのはその時その瞬間ではなく、その後それをどのように意味づけ、振り返るかではないかと考察された。
著者
富田 昌平 TOMITA Shohei
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.129-136, 2017-03-31

本研究では、幼児期における恐怖対象の発達的変化について検討した。研究1では、保育園年中児29名、年長児26名を対象に、恐怖対象の有無やその内容と理由、5つの一般的な恐怖対象(お化け、動物・虫、暗闇、幽霊、注射)に対する感情評価について尋ねた。その結果、子どもの恐怖対象の数は加齢に伴い減少すること、女児は男児よりも恐怖対象を持つ傾向にあることが示された。研究2では、幼稚園児の保護者66名を対象に、子どもの恐怖傾向とその強さ、恐怖対象の内容と発達的変化について尋ねた。その結果、恐怖対象の発達差や性差に関して、研究1の結果が概ね繰り返された。また、内容的には年齢や男女問わず、お化け、動物・虫、幽霊、暗闇、1人でいることなどが多く挙げられ、加齢に伴い想像的なものに対する恐怖が増加することが示唆された。考察では、幼児期における恐怖対象とその発達的変化を踏まえた上で、「怖い」を楽しむ実践を育児や保育においてどのように位置づけ、展開していくかが議論された。【キーワード】恐怖対象、想像、幼児
著者
富田 昌平 TOMITA Shohei
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.129-136, 2017-03-31

本研究では、幼児期における恐怖対象の発達的変化について検討した。研究1では、保育園年中児29名、年長児26名を対象に、恐怖対象の有無やその内容と理由、5つの一般的な恐怖対象(お化け、動物・虫、暗闇、幽霊、注射)に対する感情評価について尋ねた。その結果、子どもの恐怖対象の数は加齢に伴い減少すること、女児は男児よりも恐怖対象を持つ傾向にあることが示された。研究2では、幼稚園児の保護者66名を対象に、子どもの恐怖傾向とその強さ、恐怖対象の内容と発達的変化について尋ねた。その結果、恐怖対象の発達差や性差に関して、研究1の結果が概ね繰り返された。また、内容的には年齢や男女問わず、お化け、動物・虫、幽霊、暗闇、1人でいることなどが多く挙げられ、加齢に伴い想像的なものに対する恐怖が増加することが示唆された。考察では、幼児期における恐怖対象とその発達的変化を踏まえた上で、「怖い」を楽しむ実践を育児や保育においてどのように位置づけ、展開していくかが議論された。
著者
富田 昌平 TOMITA Shohei
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
no.65, pp.149-158, 2014-03-31

本研究では、子どもはなぜサンタクロースを信じ、やがて信じなくなるのかについて、大学生を対象とした。回想的な質問紙調査により得られた事例をもとに考察を行った。その結果、以下のことが示唆された。子どもは幼児期の間にプレゼントにまつわる神秘的体験をもとに超自然的な力を持つ行為者としてのサンタクロースの概念を明確にしていく。幼児期の終わりから児童期中頃になると、子どもは論理的思考力や懐疑主義を身に着けるようになり、サンタクロース神話をめぐる数々の矛盾点に疑いの目を向け、それらを見破るようになる。具体的には、プレゼントの隠し場所や包み紙に関する見破り、プレゼントを置く瞬間の目撃、サンタクロースへの手紙の発見、手紙やプレゼントの内容に対する疑惑などが挙げられる。また、親や年長のきょうだい、友達からの証言もサンタクロースに対する不信に拍車をかける。そのようにしてサンタクロースを信じなくなる一方で、サンタクロースを信じようとする心も併せ持っており、子どもの心は両者の間を揺れ動いている。従って、親をはじめとする大人がそうした子どもの揺れ動く心にていねいに寄り添い、誠実に対応することがこの時期大切なこととして考えられる。さらに、「サンタクロースは本当はいない」という真実を知った時、子どもは怒りや悲しみ、憤りなど様々な感情的反応を示すが、大切なのはその時その瞬間ではなく、その後それをどのように意味づけ、振り返るかではないかと考察された。
著者
富田 昌平 田中 伸明 松本 昭彦 杉澤 久美子 河内 純子 辻 彰士 湯田 綾乃 松尾 美保奈 松浦 忍 松岡 ちなみ Tomita Shohei Tanaka Nobuaki Matsumoto Akihiko Sugisawa Kumiko kawachi Junko Tsuji Akihito Yuta Ayano Matsuo Mihona Matsuura Shinobu Matsuoka Chinami
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.493-502, 2020-02-28

本研究では,幼稚園のカリキュラムの中にさりげなく埋め込まれている数学的活動に焦点を当て,幼児教育と数学教育という2つの異なる専門的視点から,幼児による経験や学び,実践の意味について分析し考察した。具体的には,幼稚園のクリスマス行事におけるサンタクロースからの贈り物に見られる幼児の分配行動を観察し,その記録を分析の対象とした。3歳児では1対1対応の分離量の分配,4歳児では集合した分離量の分配,5歳児では連続量の分配が課題として与えられた。新しい幼稚園教育要領(2017年3月改訂,2018年4月施行)のもと,「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」の設定に見られるように,幼児教育と小学校教育との円滑な接続はより一層求められている。本稿で取り上げた数学的活動は,10の姿のうちの「数量や図形,標識や文字などへの関心・感覚」に関わるものであり,そこで見られた幼児の姿は小学校以降の算数教育へとつながっていく姿である。本稿では,小学校教育とは異なる幼児教育の独自性について改めて確認するとともに,今後,こうした具体的な姿を小学校側にいかに伝え,つなげていくかがが議論された。
著者
富田 昌平 近藤 彩乃 TOMITA Shohei KONDO Ayano
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.235-244, 2018-01-04

本研究では、魔術的結果の実現可能性が示唆されるような状況下における、幼児の想像と現実との揺らぎについて検討した。具体的には、従来行われてきた空箱課題(Harris, Brown, Marriott, Whittall, & Harmer, 1991)、または、恐竜の卵課題を幼児(4-5 歳児26 名)に実施し、想像した事柄(箱の中に想像した赤ちゃん恐竜/恐竜の卵)に対する幼児の現実性判断を言語面と行動面から探った。実験の結果、事前の段階では大部分の幼児が恐竜について何らかの知識を持ち、それを少なくとも身近な場所にはいないものとして位置づけていたにもかかわらず、恐竜誕生という魔術的結果の実現可能性を示唆するような状況に置かれると、少なからぬ幼児が信じない方向から信じる方向へと自らの立場を変化させた。そのことは空箱条件よりも恐竜の卵条件において顕著であった。恐竜の卵条件では7割以上の幼児が「本物」と判断し、部屋に1人で残されると半数の幼児が複数の実践のバリエーションで魔術的結果の実現を試みた。これらの結果は、物語と実在物との結び付き及び想像を支える実在物という2つの観点から考察された。
著者
富田 昌平 TOMITA Shohei
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.265-272, 2015-03-31

本研究では、サンタクロースとクリスマス行事に対する大人の態度と支援について、2つの質問紙調査によって検討した。研究1では、大学生110名を対象に調査を行った結果、サンタクロースの実在性に対する信念は児童期中頃に肯定から否定へと大きく変化し、その発達変化は子どもに対する期待年齢でもほぼ同様であることが示された。また、サンタクロースの実在性について5歳児と12歳児に質問された場合の回答では、基本的にいずれの年齢の子どもに対しても肯定的回答をするものの、12歳児では5歳児と比較して逆質問(「あなたはどう思う?」)や信念重視(「信じる子どものもとに現れる」)の回答がわずかであるが増加した。研究2では、公立幼稚園・保育園104園を対象に調査を行った結果、クリスマス行事は一部「お楽しみ会」などに名称を変えながらもほとんどの園で実施されており、扮装サンタが子どもの目の前に登場する演出を行っていることが示された。また、扮装サンタ登場の是非については、子どもの夢を壊す可能性や恐怖誘発の可能性、宗教色の強さ、商業主義的傾向などのリスク要因が挙げられたものの、多くは肯定的意見であり、その理由として、サンタクロースやクリスマス行事が持つ象徴的意味合いや、想像世界への没入、経験の多様性、リアリティ感覚、幸福感情や驚異の念、異文化や地域社会との交流機会などを子どもに提供し得ることが指摘された。大人の多くはサンタクロースやクリスマス行事の積極的な意味を認め、肯定的な態度を示し、子どもの体験がより豊かになるように支援していることが示唆された。