著者
吉野 裕介
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.299-320, 2022-03-10

本稿の目的は、フリードリッヒ・ハイエクのカール・マルクスに対する評価の変遷を抽出し、その意義を闡明することである。ハイエクの長い執筆活動のほとんどは、自由主義(資本主義)の擁護と、社会主義の批判に費やされた。にもかかわらず、膨大な書き物のうち、マルクスあるいはマルクス主義に関する言及は、ほとんど断片的と言えるくらい限られている。この理由を探ることで、ハイエクの社会主義批判の意図がより明確になるのではないか。こうした問題意識に基づいて、本稿は、第1節で初期ハイエクの経済理論的考察、第2節で中期ハイエクの方法論的考察、第3節で後期ハイエクの社会哲学的考察の3つに活動時期を区切り、それぞれの時期におけるマルクスへの言及を抽出したうえでその意義を考察した。かくして、ハイエクによるマルクス批判は確かに徹底的とは言えないものだが、それはかれがマルクス思想の背後にある科学主義や合理主義を批判したことが一因だと結論付けた。

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