著者
永田 大輔
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.321-337, 2022-10-31

本稿では、批評的な言論の中で二次創作がいかなる文脈において「消費」と呼ばれてきたのかについて議論する。なかでも大塚英志の「物語消費」とそれを引き継いだ東浩紀の「データベース消費」がどのような文脈で論じられるようになったのかを指摘する。とりわけ大塚の議論は東を経由して理解されることが多く、大塚の議論そのものが注目されることは少ない。 これらはオタクというファン集団の「受容の様式」として論じられており、キャラクターに着目するのか、物語の受容の様式にあるのかといった形で議論されてきた。だが、そもそも「二次創作」という「創作」行為が「消費」と語られてきたのはなぜなのか、という問題については議論がなされて来なかった。実際にあるものを作ることが「生産」ではなく「消費」と呼ばれることは自明ではない。また、生計に必要なものを作っていないという意味でそれは「趣味」とも呼ばれうるが、二次創作に関しては「消費」という受動的な概念で呼ばれている。本稿では「物語消費論」において「消費」という語が用いられたことの意味を考察する。 「物語消費」において真に重要なのは、これまで制作と見なされていた行為が消費と見えるような形で、巨大企業の新たな市場戦略が現れてきたということである。それによってただ新しいものを作るだけでは生産活動という送り手側に立つことにはならず、受容者の一部になっているに過ぎないという批判的な意味が込められたものだったのである。東の「データベース消費」も実はその問題系を正確に引き継ぎつつ、もはやそうした「生産者」というものは不可視になり、誰もが受容者(「消費者」)になっているのではないかという意味で議論を展開したのである。その上で両者の論争は「生産者/消費者」という線引きがどこで行われるかを論じるものであったのである。この創作を消費と呼ぶこと、それを納得させることが可能になるような文脈を踏まえた上で、どこで「消費」と「生産」の線を引こうとしているかに個々に着目することがこれらの概念を継承していく上では重要なのである。

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https://t.co/3oUZ4fJllj こちらの論文1000ダウンロード超えておりました。半年にしてはまずまずお読みいただいているのではないでしょうか。引き続きよろしくお願いいたします。 https://t.co/oPJfn1hqBc
「二次創作」はいかなる意味で「消費」であるのか https://t.co/1cjfAen4FZ 900ダウンロード超えました 半年ではよいペースな気がします 引き続き1000ダウンロードに向けてぜひよろしくお願いします
<研究論文>「二次創作」はいかなる意味で「消費」であるのか : 大塚英志の消費論を中心に https://t.co/bHrDVmi7dn
https://t.co/3oUZ4fJllj 「二次創作」はいかなる意味で「消費」であるのか : 大塚英志の消費論を中心に『日本研究』65 4か月で800ダウンロードくらいいただいたようです。引き続きよろしくお願いいたします。
https://t.co/3oUZ4fJllj 「二次創作」はいかなる意味で「消費」であるのか こちら600ダウンロード超えていました。引き続きよろしくお願いいたします。
【拡散希望】『日本研究』第65集に「二次創作はいかなる意味で消費であるのか」という論文を書きました。二次創作が「消費」として論じられてきた議論を素材に生産と消費の関係について考察した論文になります。https://t.co/3oUZ4fJllj
#寝る前に論文読む  永田大輔/「二次創作」はいかなる意味で「消費」であるのか : 大塚英志の消費論を中心に https://t.co/CopFus0ZlF 東浩紀のデータベース消費と大塚英志の物語消費の文脈と差異を述べ、物語消費の議論を究明し、受容と消費について詳しく論じます。 大変勉強になりました

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