著者
多屋 馨子
出版者
メディカルレビュー社
巻号頁・発行日
pp.51-55, 2021-08-20

風疹はワクチンで予防可能な疾患であるが,過去の定期予防接種(以下,定期接種)制度の影響で,成人男性に多くの感受性者が蓄積されたままである。2019年から成人男性を対象として風疹の定期接種が導入されたが,接種率は低い状況が続いている。「KEY WORDS」第5期定期接種,先天性風疹症候群,感受性者,感染症発生動向調査,感染症流行予測調査
著者
松岡 敦子
出版者
メディカルレビュー社
巻号頁・発行日
pp.37-41, 2017-04-20

メトホルミンに代表されるビグアナイド薬はスルホニル尿素薬と並び,最も古くから使用されている糖尿病治療薬である。ビグアナイド薬はフレンチライラック(ガレガソウ)に多く含有するとされるグアニジンの誘導体であるが,すでに17世紀の薬草療法ガイドブックに「フレンチライラックは糖尿病によると考えられる口渇・多尿などの症状に効果がある」との記載があり1),グアニジンに血糖降下作用があることが1918年に報告されている2)。ビグアナイド薬は1950年代より販売され,1970年代にフェンホルミン服用者に乳酸アシドーシスの発症が報告されて以来,一時,使用頻度が減少したが,1990年代に行われた大規模臨床研究によりメトホルミンの有効性と安全性が確認され3)4),再評価の機運が高まった。2008年には米国糖尿病協会と欧州糖尿病学会の共同ステートメントにおいてメトホルミンは第1選択薬に位置づけられた5)。最近,メトホルミンの作用メカニズムについて新しい知見が相次いで報告され,基礎研究の観点から注目を浴びている。また心不全患者での有効性や安全性に加え,悪性腫瘍への影響に関しても興味深い報告がある。本稿ではこのようなメトホルミンに関する最近の基礎的,臨床的な話題について概説する。「KEY WORDS」メトホルミン,作用機序,悪性腫瘍,心不全
著者
植田 勇人
出版者
メディカルレビュー社
雑誌
Pharma medica (ISSN:02895803)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.176-178, 2003

レンノックス症候群は多彩なけいれん発作症状を示すてんかん症候群であり, 従来の抗てんかん薬(anti-epileptic drug ; AED)に対して治療抵抗性である場合が多い。今回クロバザムの追加投与が奏効し, けいれん発作頻度の減少に成功した2症例を経験したので報告する。症例はいずれも, 点頭てんかんで発症, 某小児科においてウエスト症候群と診断され, ビタミンB6・ACTH療法およびAEDの治療が行われたが, 点頭てんかん発作を完全にコントロールできず, レンノックス症候群に移行した症例である。当科において長年発作減少を試みていたが, 発作はきわめて難治性で, 各AEDを増量しても発作回数を減少させることはできなかった。そこでクロバザムを追加投与し漸次増加させたところ, 投与して間もなく発作頻度は著しく減少した。レンノックス症候群における発作抑制はきわめて困難な場合が多いが, 同症候群にクロバザムの追加投与が著効した症例を紹介する。
著者
長友 慶子 長町 茂樹 石田 康
出版者
メディカルレビュー社
雑誌
Pharma medica (ISSN:02895803)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.133-137, 2003

ウイルス増殖抑制物質として1950年代に発見されたインターフェロン(IFN)は,悪性腫場・ウイルス性肝炎を中心に頻用されており,1992年には本邦でC型慢性肝炎に対しての保険適応を得た。IFNには,その一般的な副作用としての頭痛・発熱・倦怠感・食思不振などのほか,不眠・抑うつ状態・操状態・幻覚妄想・意識障害などの精神症状も数多く報告されており,コンサルテーション・リエゾン精神医学の領域で重要な問題となっている。###今回のわれわれは,C型慢性肝炎に対するIFN投与の中止から約3週間後に顕性化したせん妄の症例の脳血流量の経時的変化を観察し,臨床像と比較検討した。また,この症例の治療経過中,非定型抗精神病薬の1つであるクエチアピン投与後に,過鎮静や錐体外路症状などの副作用も出現することなく,せん妄による幻覚・妄想・精神運動興奮などの精神症状が消失したことに関しても若干の考察を加える。