著者
上野 光弘
出版者
公益社団法人 日本水道協会
雑誌
水道協会雑誌 (ISSN:03710785)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.5-16, 2022-08-01 (Released:2023-08-01)
参考文献数
15

人口減少社会では、消火能力の確保と残留塩素濃度の確保がトレードオフの関係であるように、管網再 構築において従来型手法の踏襲だけでは対応が難しいものがあり、新たな考えを加え適応させていく必要がある。 本論文が導き出すのは、人口減少社会においてのトレードオフの関係も含まれる複数の要求事項である課題を複 合して達成できる具体的な手法である。管路の特徴として経済的、能力的なスケールメリットがあるが、実際の 管網の口径割合と組み合わせて検討し、この特徴を最大限に発揮させることで管網の水輸送能力(バックアップ 能力の向上、残留塩素の確保、直結給水区域の拡大、消火用水の確保)と経済性(総費用の抑制)を両立できる ものである。これは幹線の水輸送能力を維持または強化し、その能力によって末端側を減径する事で成り立つも のである。本論文では理論証明のほか、実管網のデータを用いたシミュレーションによって効果を検証した。また、 複数の要求事項の達成を目的とした水理解析は、より多くの作業時間が必要となることから、解析技術の効率化 を併せて研究し成果を得た。
著者
森内 裕香 市川 豊 橘高 雷太 大瀬 俊之 吉澤 健一 宮川 修
出版者
公益社団法人 日本水道協会
雑誌
水道協会雑誌 (ISSN:03710785)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.11-17, 2020-06-01 (Released:2021-06-01)
参考文献数
7

東京都水道局では、水道水の臭気異常への対応力強化を目的として、臭い嗅ぎ機能付きガスクロマトグラフ質量分析計を導入し、臭気原因物質の特定手法の開発を目指している。手法開発の手始めとして、当局において過去に甚大な被害を受けた玉ねぎ腐敗臭の原因物質をターゲットとして、分析条件の検討、MS スペクトルによる構造解析を踏まえ、原因物質の特定に至る手法を明らかにした。
著者
籔内 宣博 外山 義隆 吉村 誠司 平林 達也 北本 靖子
出版者
公益社団法人 日本水道協会
雑誌
水道協会雑誌 (ISSN:03710785)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.2-15, 2019-03-01 (Released:2020-11-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

要検討及びその他農薬48物質について大阪市の水源である淀川水系及び浄水処理過程における実態調査を行ったところ、本市水源に要検討及びその他農薬が流入していることが確認された。また、そのオゾン、塩素及び粒状活性炭(以下、GAC)による処理性を調査したところ、オゾン処理及び塩素処理では分解しにくい物質が多く存在した。GAC 処理では、水温によらず一定の除去が期待できた。よって、オゾン処理と粒状活性炭処理を組み合わせることで、農薬類を効果的に除去できることが確認できた。
著者
宮本 紫織 石井 卓也 白石 泰郎 望月 美菜子 井上 智 四宮 博人
出版者
公益社団法人 日本水道協会
雑誌
水道協会雑誌 (ISSN:03710785)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.2-12, 2020

水道水中ハロ酢酸類9種(水道水質基準項目:3物質、要検討項目:6物質)について、前処理を必要としない直接注入- LC/MS/MS による一斉分析法を検討した。ハロ酢酸類2μg/L に高濃度マトリックス(塩化物イオン:177mg/L、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、硫酸イオン、炭酸イオン:100mg/L、硝酸イオン:100mgN/L)をそれぞれ添加し回収率を求めた結果、9種すべてのハロ酢酸類で71~118%の回収率が得られた。また、標準液の溶媒としてtert -ブチルメチルエーテル、メタノール、エタノール及び精製水を用いて長期保存試験を実施した結果、メタノールはメチル化、エタノールはエチル化が進み、ハロ酢酸類原体の濃度が減少した。この濃度低下は、保存温度が高く、さらには混合標準液とすることで顕著であった。ハロ酢酸類は、メタノール溶液(-20℃)保存においてもメチル化反応が進むため、標準溶液に用いる溶媒はtert -ブチルメチルエーテルが最適であることを確認した。