著者
井本 萌 宮川 修一 フォン フラークシュタイン アレクサンドラ 川窪 伸光 加藤 正吾 岩澤 淳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.36-42, 2014

ドイツにおける「森の幼稚園」を市民による森林空間と資源の利用という観点から評価する目的で, ヘッセン州ベンスハイム市において2種類のアンケート調査を行った。まず, 幼稚園児の保護者による森の利用状況を調査した。子供が森の幼稚園, 一般の幼稚園のどちらに通っているかに関わらず, 週12回, 家族で, 散歩を目的に森を訪れる保護者が最も多く, 幼稚園児を持つ家族が近隣の森を訪れることは, 日常的な営みの一つと考えられた。次に, 地域と森の幼稚園における森林資源利用を比較した。地域住民が歴史的に食用, 茶・薬用, 工作・装飾, 燃料, 子供時代の遊びなどに用いてきた森林資源の利用は131例あった。自身の子供時代の遊びを除いた112例のうち90が現在も住民に利用されており, 90のうち64は森の幼稚園でも利用されていた。地域で現在利用されない22例のうち7例は森の幼稚園では自然教育を目的に利用されていた。一方, 森の幼稚園における利用例86のうち, 地域での利用履歴がないのは5例のみであった。このことから, 森の幼稚園における森林資源の利用は, 地域の森林資源利用の歴史を反映したものとなっていると考えられた。
著者
森内 裕香 市川 豊 橘高 雷太 大瀬 俊之 吉澤 健一 宮川 修
出版者
公益社団法人 日本水道協会
雑誌
水道協会雑誌 (ISSN:03710785)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.11-17, 2020-06-01 (Released:2021-06-01)
参考文献数
7

東京都水道局では、水道水の臭気異常への対応力強化を目的として、臭い嗅ぎ機能付きガスクロマトグラフ質量分析計を導入し、臭気原因物質の特定手法の開発を目指している。手法開発の手始めとして、当局において過去に甚大な被害を受けた玉ねぎ腐敗臭の原因物質をターゲットとして、分析条件の検討、MS スペクトルによる構造解析を踏まえ、原因物質の特定に至る手法を明らかにした。
著者
宮川 修作
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.252-253, 2017 (Released:2017-03-01)

「ホータイのいらない液状絆創膏」でおなじみのコロスキンには、70年以上の歴史がある。塗ると一瞬しみるが、乾燥後、水仕事でもはがれにくい透明な被膜が傷を守るため、主婦層を中心に長年愛され続けている。本稿では、コロスキン誕生から現在までの経緯、名前の由来、特徴などについて紹介する。
著者
足達 慶尚 小野 映介 宮川 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.493-509, 2010-09-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
38
被引用文献数
2 5

本稿では,ラオス中部のヴィエンチャン平野に立地するドンクワーイ村を対象として,1952年以降の水田の拡大過程と世帯増加・自然条件・農業政策との関連性を検討した.同村では,2005年時点で約90%の世帯が自給的な天水田稲作に従事している.天水田の開田は世帯数の増加に対応して進められ,その面積は1952年から2006年の54年間に約4.3倍に増加した.特に1980年代から1990年代にかけて急速に開田が進行し,雨季の河川の増水による湛水リスクのある低地へも天水田域が拡大した.政府による農業の集団化政策を受けて,村では1979年に農業組織の一形態である水田協同組合が組織されたが,生産米の分配方法に対する不満から大半の世帯は1年で脱退したため,同政策による天水田面積の増減は生じなかった.ただし,組合に残った一部の世帯は河川の氾濫原を利用した浮稲栽培や乾季の灌漑水田稲作を開始し,稲作形態が多様化した.浮稲栽培や灌漑水田稲作は,組合の解散後も受け継がれ,多くの村民が携わるようになったが,1997年以降の灌漑水田面積は微増にとどまっている.乾季作の作付面積は,割高な灌漑設備の維持・使用の費用と,雨季作の収穫状況を踏まえて増減調整がなされており,雨季作の不作時におけるセーフティー・ネットとしての性格を有する.
著者
宮川 修 金谷 貢 大川 成剛
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

微細な非晶質シリカを含む歯磨剤(ETL)と,比較的に粗大な結晶質のリン酸水素カルシウム二水塩を含む歯磨剤(NSA)とによってブラッシングしたチタン表面の微細形態,化学組成,不動態皮膜の化学構造,および歯磨剤中に取り去られたチタンの性状をXGT, EPMA, SPM, XPS, XRDによって調べた.得られた結果を総括すると以下になる.1)ETLではcomet tail様の,またNSAでは平行線状の条痕がそれぞれ,ブラッシングされた面に観察され,後者のほうが表面粗さは格段に大きかった.どちらもpH値が下がるにつれて条痕が不明瞭になっていった.2)ETLではcomet tail状条痕に対応してSiが存在し,Siに対応して高濃度の酸素の存在が認められた.またNSAでは平行線状条痕にそってCaとPが存在し,これらに呼応して高濃度の酸素も存在した.どちらもpH値が下がるにつれて,歯磨剤中の砥粒由来のこれら元素は減少した.3)XPS分析によると,ETLでブラッシングした面のSiは,不動態酸化皮膜中にのみ存在し,最表面近傍においてチタンケイ酸塩として存在することが示唆された.4)NSAでブラッシングした面のCaとPはかなり深くからも検出され最表面近傍ではCaとPを含む複雑なチタン酸塩が生成したことが示唆された.5)プラッシシグに使われた歯磨剤スラリー中には,0.2〜0.3μmの微細なチタン研磨屑が単独の遊離した形で,また砥粒に付着した形で見いだされた.5)ペースト中チタンからのTi_<2p3/2>ピークは弱くて広範囲にブロードしていたが,TiO_2のTi_<2p3/2>より高い結合エネルギーを有する化学種の存在も示唆された.6)XRDはNSA中のリン酸水素カルシウム二水塩のCaイオンがTiイオンで置換される可能性を示唆した.
著者
宮川 修 渡辺 孝一 大川 成剛 中野 周二 塩川 延洋 小林 正義 田村 久司
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.653-661, 1989-09-25
被引用文献数
1

ビトリファイドホィールで13%Crを含む歯科鋳造用Ni合金を能率良く研削するための研削方法と砥石構成要素を確立することを目的として, 被削材に送りを与えながら一定荷重で研削できるように前報の天秤型研削試験装置を改造し, これによって市販のホィール2種と砥石構成要素の異なる試作ホィール11種の研削性能を評価した.アルミナホィールは砥粒が一様に著しく摩滅した.少なくとも軟質のNi-Cr合金に対しては, カーボランダムホィールが有効である.ホィールを被削材に単に押しつける研削ではホィールの性能を十分発揮できない.ホィールの回転方向にハンドピースを動かしながら比較的大きな力で研削することが大切である.研削荷重が50と100gfでは試作カーボランダムホィールの研削性能は市販ホィールのそれと大同小異であったが, 150, 200gfに増すと, 結合剤が19%で粒度#150のカーボランダムホィールだけが市販ホィールの約2倍の性能を発揮した.安定した高い研削性能の持続はホィールの損耗による砥粒の新出のためと考えられる.
著者
宮川 修 渡辺 孝一 大川 成剛 中野 周二 塩川 延洋 小林 正義 田村 久司
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械. Special issue, 日本歯科理工学会学術講演会講演集 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.7, no.11, pp.187-188, 1988-03-31

砥粒の種類、粒度、および結合度を変えた各種のビトリファイドホィールを試作し、一定重で研削する天秤型の装置を用いてホイールの回転数24, 000rpmで1時間の連続乾式研削を行い、通法により鋳造した13%Cr-Ni合金に対する研削性能とその持続性を調べた。Ni合金の研削にアルミナホィールは不向きであるが、カーボランダムホィールの場合、ある程度の損耗は度外視して比較的大きな力で研削するならば、かなり良好な性能を発揮するホィールを得ることができた。この場合、被削材にホィールを単に押しつけるのではなく、被削材とホィールの間に相対的な動き(被削材の送り)を与えることが重要である。
著者
宮川 修 渡辺 孝一 大川 成剛 中野 周二 塩川 延洋 佐々木 俊道 田村 久司
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械. Special issue, 日本歯科理工学会学術講演会講演集 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.79-80, 1985-04-01

Ni-CrやCo-Crなどの非貴金属系合金の研削の困難さは以前からよく知られている。とくに、鋳造用Ni-Cr合金が保険に採用されたことから、この種の合金の研削能率の向上を急ぎはかる必要にせまられている。よって本研究は、難削性合金の研削に適した工具とその研削条件を検討することを目的とする。今回はまず、研削能率を評価するために試作した試験装置について述べるとともに、市販のビトリファイド系アルミナホィール2種とCBN電着ホィールについて試験した結果を報告する。
著者
野間 晴雄 野中 健一 宮川 修一 岡本 耕平 堀越 昌子 舟橋 和夫 池口 明子 加藤 久美子 加納 寛 星川 和俊 西村 雄一郎 鰺坂 哲朗 竹中 千里 小野 映介 SIVILAY Sendeaune 榊原 加恵 SOULIDETH DR.MR. Khamamany BOURIDAM MS. Somkhith ONSY Salika CHAIJAROEN Sumalee 岡田 良平 的場 貴之 柴田 恵介 瀬古 万木 足達 慶尚 YANATAN Isara 板橋 紀人 渡辺 一生
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

東南アジア大陸部に位置する天水田農業を主体とした不安定な自然環境における平原地帯(東北タイドンデーン村とラオスのヴィエンチャン平野ドンクワーイ村)における多品種の稲や植物,魚介類や昆虫など様々な動植物資源の栽培・採集・販売などの複合的な資源利用の実態とその変化の態様を地域の学際的・総合的共同調査で明らかにした。両村ともグローバル市場経済の影響が認められるが,ドンデーン村ではかつて存在した複合的な資源利用が平地林の消滅や都市近郊村落化によって失われており,ドンクワーイ村はグローバル化や森林伐採で変容を遂げつつあるが,インフラの未整備によって伝統は保持されている。
著者
宮川 修 渡辺 孝一 大川 成剛 中野 周二 塩川 延洋 田村 久司
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.645-656, 1985-11-25

一定速度で被削材を送り, 与えた工具の切り込みにたいしてくりかえし研削で得られる実研削量によって研削工具の性能を評価する試験装置を試作した.これにより13%Cr-Ni合金を被削材として研削試験を行ない, CBN電着ホィールの研削性能を市販のビトリファイド系アルミナホィール2種と比較した.ホィールの振れまわりが影響して, 22, 000rpmの高速回転と18, 000rpm以下の低速回転とで異なった研削挙動が現われた.高速回転では, 研削面のうねりが激しく, 最終研削量も設定した切り込み量を越えた.低速回転では, 研削面のうねりは比較的小さかったが, 設定した切り込み量が完全に削りきれなくなる傾向がみられた.その上, 送り速度を大きくすると一定量を削るまでに何回も何回も研削をくりかえすことが必要になり, 削り残しも大きくなった.振れまわりの影響を考慮して, CBN電着ホィールは低速回転についてのみ実験した.それでもなおこれは, 送り速度が大きい場合でも優れた研削性能を示した.
著者
宮川 修 渡辺 孝一 大川 成剛 中野 周二 小林 正義 塩川 延洋
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.175-185, 285, 1989-12-25
被引用文献数
44 69

燐酸塩を結合剤とし,アルミナ/シリカを耐火材とする埋没材の鋳型に市販のチタンを鋳造した。鋳造体の表層構造をEPMAによって調べ,それが次の4層からなることを明らかにした。すなわち,第1は反応層(焼き付き層),第2は酸素とAlで安定化したα相の層,第3はSi, P, C及び酸素が所々に濃縮された層,そして第4は針状または板状結晶の集合体である。鋳造体の体積が大きいほど,また鋳型温度が高いと,各層が厚くなり,針状結晶も粗大になる。 この多層構造は鋳込みの際に埋没材が溶湯に巻き込まれてできたものではないことは実験結果から明らかである。埋没材の還元されやすい成分の分解によって生じた元素が鋳造体の内部へ拡散してできたものと考えられる。
著者
宮川 修一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部会報
巻号頁・発行日
no.124, pp.19-26, 1997-12-10
被引用文献数
1
著者
金谷 貢 渡辺 孝一 宮川 修
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.227-237, 2001-04-10
被引用文献数
11 6

目的: 本研究ではブリッジと有床義歯に関する教育, 研究および臨床の将来計画立案の-助とするために, 将来使用されるそれら補綴物数の推計を試みた.<BR>方法: 研究対象は65歳以上の高齢者および要援護高齢者とした. 将来における一人平均のブリツジ数と有床義歯数を歯科疾患実態調査報告をもとにした単純回帰分析より推定した. 回帰分析においては, 推定回帰線の交差および上限に対する補正を加えた. 推定された一人平均のブリッジ数, 有床義歯数, および将来推計人口から, 将来使用される補綴物数を予測した.<BR>結果: 高齢者が使用するブリッジと有床義歯の総数は, 今後20年間で2.0倍 (2.2~1.1倍, 95%信頼区間より算出) と1.5倍 (1.8~1.0倍) にそれぞれ増加し, その後10年間は両者ともにほぼ一定で推移すると推定された.ブリッジ数と有床義歯数の増加率はともに年齢階層が高くなるほど大きくなっていた. また, 要援護高齢者が必要とするブリッジと有床義歯の総数は, 今後25年間で2.7倍 (3.2~1.0倍) と1.8倍 (2.2~1.0倍) にそれぞれ増加すると推定された.<BR>結論: 以上より, 高齢者および要援護高齢者を対象としたブリッジあるいは有床義歯に関する教育, 研究および臨床はこれまで以上に必要性が増してくると考えられた.
著者
若月 利之 石田 英子 増田 美砂 林 幸博 広瀬 昌平 TRAORE S.K.B ALLURI K. OTOO E. OLANIYAN G.O IGBOANUGO A. FAGBAMI A. 小池 浩一郎 宮川 修一 鹿野 一厚 中条 広義 福井 捷朗
出版者
島根大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

ナイジェリア中部ニジェール洲、ビダ市付近のエミクパタ川集水域のヌペ人の村落から農民の参加意欲と土と水条件より5ケ村のベンチマーク村落を選んだ。アジア的な水田稲作とヌペの伝統的低地稲作システムを融合させながら展開するための実証試験をニジェール洲農業開発公社の普及研究員と国立作物研究所の研究員の協力を得ながら、農民参加により実施した。又、多目的樹種を中心にした育苗畑の整備と管理法及び成熟苗を利用したアップランドにおけるアグロフォレストリーの実証試験も実施した。東北タイより収集した品種特性の異なるタマリンドの種より育苗した。次年度には移植する予定。ガーナのクマシ付近のドインヤマ川小低地集水域でも、同様の水田農業とアグロフォレストリーを農民参加により実施することにより、劣化集水域を再生するための実証試験を実施するに当たって必要な土と水と気象条件、在来の農林業システム、村落の社会経済的条件等、各種の基礎的調査を実施した。一部では水田造成と稲作、村落育苗畑等の小規模実証試験を行った。ニジェールのドッソ付近のマタンカリ村付近のサヘル帯の小低地集水域でも同様の基礎調査を実施した。タイとインドネシアでは西アフリカに応用可能な農林業システムの文献資科や、上述のように樹木のタネ等を収集した。アジアと西アフリカの研究者と意見交換し、農林業システム融合の条件を検討した。又、タイで採取した樹木種子はナイジェリアの苗畑で発芽生育させ、生育は順調なので移植を準備中である。フィリピンでは世界の稲作システムに関する既存の資料を収集した。
著者
宮川 修一 Konchan Somkiat
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.p255-259, 1990-12

東北タイ, ドンデーン村における菜園の重要作目であるトウガラシの生産性を1983年7月から1984年2月まで調査した.対象とした16の菜園での平均収量は生重で3kg/100m^2/月, ないし2kg/100株/月であったが, 菜園間の差異はおおきかった.9,10月の収量が最も高く, 11月以降は更新によって若齢株が多くなるため収量は低下した.7,8月の低収量は大雨による着花不良や田植作業との労力競合が原因と推定された。面積当たり収量は株当たりの収量に強く支配されており, 旺盛な生育が得られるように管理方法を改良してゆくことが重要と考えられる.
著者
宮川 修一 コンチャン ソムキアット 河野 泰之
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.248-256, 1998-12-01
被引用文献数
7

東北タイの稲作地帯において近年盛んになりつつある直播栽培(主に乾田)の収量性を伝統的な移植栽培法と比較するため, 1994年には69筆(直播24,移植45), 1995年には103筆(直播41,移植62)の農家圃場の収量並びに収量構成要素を坪刈りによって比較した.降雨の比較的少なかった1994年には直播栽培の平均収量は移植栽培より劣った.この場合, 灌漑田では収量の方法間差異は認められず, 天水田A型(最も干ばつ被害を受けやすい)並びにB型(比較的干ばつや洪水の被害が小さい)の両者を合わせた際の平均収量では明らかに直播栽培の収量が劣っていた.これは移植栽培よりも少ない一穂穎花数並びに面積当たり穎花数に起因していた.降雨の比較的多かった1995年には, 全体でも, また水条件別に見ても両方法間の収量差はなかった.直播栽培の収量は穎花数以外にもわら重や稈長との相関が強く, 補助的灌漑, 穂肥を中心とした肥料の投入, 早期播種, 直播向き適品種の選抜普及が収量向上に貢献すると考えられた.以上のことから多雨年や灌漑田では現在の直播栽培は省力的栽培方法として移植栽培に代替可能であると評価しうるものの, 天水田ではなお技術改良を要するといえる.