著者
ロング ダニエル 磯野 英治 塚原 佑紀
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.31, pp.31-40, 2007

本論で小笠原諸島の欧米島民が持つ日本語アクセント体系の実態を記述する。調査した結果、返還前に言語形成期を迎えた中年層と返還後にそれを迎えた若年層との間に顕著な違いが見られた。中年層話者はアクセントの型による単語の意味区別をしない無型アクセントとなっている。一方、若年層のアクセントは東京式アクセントとほぼ一致している。返還前に生まれ育った話者が無型アクセントになっている原因は、英語を母語とする人が日本語を習得したときに類別語彙が完全には習得できなかったことと、一型アクセントとなっている八丈方言を欧米系が耳にしていたこと、の2つが重なったことだと考えられる。世間で言われているような「テレビの影響」によって無型アクセントの話者の「有型化」が起こり類別語彙ごとに東京式アクセントを獲得する例は、これまでの研究では実証されておらず、不可能と思われる。むしろ東京など関東地方から島に移り住んで来た多くの東京式アクセント話者と日常的に面と向かってことばを交わしているという言語接触によってアクセントの有型化が起きたのではないかという結論に至る。
著者
石井 良則
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.53-73, 2007-03

京都府船井郡園部町出身の猪子氏豊は、戦前の小笠原諸島母島に渡って幼児保育事業を開始し、長男で沖村世話掛の猪子徹雄の支援を得て、1928(昭和3)年4月15日の開園から1942(昭和17)年3月21日の閉園までの14年間にわたり、「小笠原尚美園」という名称の幼稚園を経営した。当時の様子を卒園生に聞いたり、東京都公文書館所蔵の『視察関係書類(八丈島・小笠原・館知事)冊の48』等を参考にしたりして論述した。
著者
一木 重夫 海津 ゆりえ
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.37-51, 2006-03-31

本研究は、地域全体で取り組むエコツアーが持続的に運営されるために求められる条件を明らかにすることを目的に、東京都が実施した小笠原諸島におけるエコツアーへの参加者(以下、エコツーリストと呼ぶ)をモニターにしたアンケート結果に基づき、エコツアーの満足度を評価したものである。その結果、ガイドのコミュニケーション・エンターテイメント能力(以下、CE能力と呼ぶ)がエコツーリストの満足度に最も影響を及ぼすことが示唆された。一方で、エコツーリストは、ガイドのCE能力を高く評価しているにも関わらずさらなる改善を求めていること、及びガイドにさらなる知識力を強く求めていることが示唆された。また、ガイドのプログラムの企画力をより向上させることは、緊急性の高い課題であることが示唆された。満足度は、エコツアーを実施する地域の間で格差があり、男性よりも女性の方が、若干満足度が高くなることが示唆された。また、年代が上がるに連れて満足度が減少することが示唆された。