著者
安藤 準
出版者
鶴見大学
雑誌
鶴見大学紀要. 第4部, 人文・社会・自然科学編 = The bulletin of Tsurumi University. Pt. 4, Studies in humanities, social and natural sciences (ISSN:03898032)
巻号頁・発行日
no.55, pp.145-151, 2018-02

Newtonの運動方程式は、F=maともma=Fとも表記される。等式の左右には意味があるので、加速度aと力Fの因果関係からすればma=Fだというのは納得できる。教育現場でも利便性が高い。しかしma=Fが見られるのは日本のみで、海外ではもっぱらF=maである。ma=Fには欠点もあり、質量mについての因果関係を考えると、mが左辺に位置するのは不自然である。いっぽうF=maにも、W=mgとの対応関係など利点がある。運動方程式が力の定義式か加速度の定義式か、という議論は世界中で行われているのだが、国際的にはこれが方程式の表記法に反映されない理由は、今のところ分からない。
著者
宗臺 秀明
出版者
鶴見大学
雑誌
鶴見大学紀要. 第4部, 人文・社会・自然科学編 = The bulletin of Tsurumi University. Pt. 4, Studies in humanities, social and natural sciences (ISSN:03898032)
巻号頁・発行日
no.55, pp.191-223, 2018-02

中世都市鎌倉の諸遺跡から出土する「かわらけ」には、古代末の土師質土器の系譜を引くと思われるロクロ成形のものと、京都から伝播したと考えられている手づくね成形の 2 系統がある。その「かわらけ」をめぐっては編年案が複数提示されているが、それぞれにロクロ成形「かわら」の成立と手づくねの導入年代が異なり、またその変遷の画期についても若干の異同がある。本稿では中世鎌倉出土「かわらけ」の編年とともに、「かわらけ」の名称に込められた非日常性について京都や平泉出土「かわらけ」との比較から探り、その背景にある中世社会の推移について考察することを目的とする。そのため、鎌倉をはじめ京都と平泉での研究史から論点を導き出した。今回は、土師質土器系譜の「かわらけ」と以後の「かわらけ」をどのように見極めるべきか、そして京都からの手づくね「かわらけ」の導入背景の考察にあたっては、受け入れ側の意図、すなわち京都「かわらけ」のどの部分を重要視したのかという認知論的視点が必要であるとの見解にいたった。こうした視点をもとに、次回は編年を組み立てながら考察を進めることとする。
著者
宗臺 秀明
出版者
鶴見大学
雑誌
鶴見大学紀要. 第4部, 人文・社会・自然科学篇 = The bulletin of Tsurumi University. Pt. 4, Studies in humanities, social and natural sciences (ISSN:03898032)
巻号頁・発行日
no.56, pp.39-96, 2019-03

かわらけの型式分類とその変遷を遺跡内層序と遺跡間年代差から探り、かわらけは土師質土器が器種単純化と法量の二分化をとげる12 世紀前半から中頃に生じたと考えた。12 世紀第3 四半期までには在地土器がかわらけに収斂するのと併行して器種ごとに産地が異なる焼物を搬入する中世土器様式が成立した。その背景には京都における院政の開始と同様に東国社会に家の成立があり、惣領を核とする武士団が海上と陸上の物資流通に大きくかかわっていたことが要因としてあげられる。また、かわらけの変遷に年代を与えるには、共伴遺物よりも伴出遺物の最新年代が有効で、それも生産から廃棄までの期間が短い消耗品である東海系の山茶碗や瀬戸・常滑窯製品の内、碗・皿や鉢の年代を用いた。これらの検討を経て、かつて筆者が示したかわらけの編年に大きな変更を加える必要のないことを確認する一方で、土師質土器からかわらけが生じる点を重視して、かつてのⅠ期とⅡ期をⅠ期のab 小期に統合し、以後Ⅲ期をⅡ期へと一段階づつ段階を減少させた。鎌倉におけるかわらけの変遷において、大きな意味をもつのが「薄手丸深」と呼称されていたG型である。G 型はそれまでの皿形から埦形への移行と大・中・小の法量の3 分化を特徴とする。この特徴は併存する他型式のかわらけにも影響を与えた。13 世紀第3 四半期に登場し、1300 年前後に確立して14 世紀いっぱい生産され続けるG 型を「東国の武家政権のかわらけ」と措定した。ただし、G 型の形成には従来あまり注視されていなかったX 型が影響を与えていたのではないかと考えられるが、今回その証跡を確認することはできなかった。
著者
安藤 準
出版者
鶴見大学
雑誌
鶴見大学紀要. 第4部, 人文・社会・自然科学編 (ISSN:03898032)
巻号頁・発行日
no.55, pp.145-151, 2018-02

Newtonの運動方程式は、F=maともma=Fとも表記される。等式の左右には意味があるので、加速度aと力Fの因果関係からすればma=Fだというのは納得できる。教育現場でも利便性が高い。しかしma=Fが見られるのは日本のみで、海外ではもっぱらF=maである。ma=Fには欠点もあり、質量mについての因果関係を考えると、mが左辺に位置するのは不自然である。いっぽうF=maにも、W=mgとの対応関係など利点がある。運動方程式が力の定義式か加速度の定義式か、という議論は世界中で行われているのだが、国際的にはこれが方程式の表記法に反映されない理由は、今のところ分からない。
著者
小茄子川 歩 宗臺 秀明 遠藤 仁 木村 聡
出版者
鶴見大学
雑誌
鶴見大学紀要. 第4部, 人文・社会・自然科学編 = The bulletin of Tsurumi University. Pt. 4, Studies in humanities, social and natural sciences (ISSN:03898032)
巻号頁・発行日
no.49, pp.141-158, 2012-03

本稿は、愛知県陶磁資料館に寄託されている彩文土器に関する調査報告である。前稿(Kaonasukawa et al. 2011; Shudai et al. 2009, 2010)で述べたように、総数133点におよぶ彩文土器は、現在のパキスタン・イスラーム共和国の南西部、バーロチスータン丘陵部に展開した先史文化の所産であると考えられる。この土器群は、紀元前4千年紀後半から前2千年紀初頭までの長期にわたる時間幅と、それぞれに個性豊かな彩文と製作技法によってバローチスターン先・原史文化の多様性を示し、バローチスターン丘陵部で長期間にわたり展開した地域間交流と土器製作技法の復元に多大な考古学的情報を提供するものである。こうした理由から、筆者らは愛知県陶磁資料館に寄託されているこれらの土器群をいち早く共有・活用できるデータとするために、その資料化を進めてきた。 前回までにナール式土器(Shudai et al. 2009)、クッリ式土器(Shudai et al. 2010)、エミール式土器およびクエッタ土器様式(Kaonasukawa et al. 2011)を報告してきたが、今回報告するのは、ケチ・ベーグ式土器やトガウ式土器を含むその他の土器群である。いずれの土器型式も紀元前4千年紀後半頃に位置づけられるバローチスターン先・原史文化における最古級の彩文土器であると考えられている。前者は黒色スリップ上に白色で描く幾何学文様を特徴とし、後者は鳥やコブウシの文様を横一列に連続的に描く彩文手法を特徴とする。ただし、筆者らでは、型式を識別できない一群も含まれており、それらについては個別に土器の特徴を記述するに留めた。資料の増加を待ち、再検討することが妥当であろう。 以下では、愛知県陶磁資料館に寄託されているケチ・ベーグ式土器やトガウ式土器と帰属型式不明の土器群について、特に彩文要素とその構成パターン、および製作技法に着目して報告する。 なお、今回の報告で行なうとしていたエミール式土器とクエッタ土器様式の文化的意味合いを含めた、バローチスターン先・原史文化における土器編年についての検討は、次号にて詳細に考えてみることにしたい。 また、愛知県陶磁資料館に寄託される人物や動物を中心とする土偶に関しては、機会を改めて報告する予定である。