- 著者
-
山藤 馨
- 出版者
- 公益社団法人 高分子学会
- 雑誌
- 高分子 (ISSN:04541138)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.9, pp.458-462, 1972-09-01 (Released:2011-09-21)
- 参考文献数
- 44
超伝導現象は工学的見地からみて種々のすぐれた特徴を持ち,応用上豊富な可能性を秘めている。ただ残念なことに,超伝導状態は現在のところ21°K以下の極低温でしか得られないのであって,このため,超伝導現象の持つすぐれた特質も経済面から大きく割引ぎされてしまう。したがって,室温でなおかつ超伝導状態になっている物質が見つかればどんなにすばらしいことであろうというのが,超伝導が発見されて以来の人々の夢であった。そして,最近のLittleやGinzburgらによる高温超伝導体のモデルの出現は,この夢が間もなく実現されるのではないかという期待を人々に抱かせたのである、この底抜けに明るいムードは,たとえばLittleの解説(Sci.Am., 212,21(1965))を読んでいただくとよくわかる。しかしながら現実は意外に厳しく,この方面の研究は多くの人々の努力にもかかわらず,その後はかばかしい進展をみせないままでいる、この間の事情を述べるのが本稿の目的であるが,それを超伝導の機構にたち入らずにやさしく説明するのは筆者の力及ばざるところであって,結果として議論がかなり難解なものになってしまったことを,あらかじめおわびしておきたい。