著者
福士 堯
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.70-74, 1986

皮膚アスペルギルス症, 皮膚クリプトコックス症, 皮膚アルテルナリア症, 皮膚ムーコル症について, 主として, 皮膚原発症例を文献的に検討し, 日和見感染に関与すると解される因子を中心に検討した.<br>1. 皮膚アスペルギル症: 浅在型の36例について検討し, 以下の結果を得た. 初発症状は膿疱が圧倒的に多数であり, 発赤, ビランがこれについだ. 時間の経過につれて, 潰瘍, 浸潤局面, 肉芽腫等がみられた. 部位は背部大腿, 前腕, 下腿, 腰部の順に好発していた. 日和見感染を誘発したと解される要因として臥床, 手術後臥床, ギプス装着, 点滴固定等が多くみられ, 更に, X-ray照射, 植皮固定, ステロイド外用剤ODT等もみられた. それらの基礎疾患は外傷, 悪性腫瘍など長期療養を要するものが多かった.<br>2. 皮膚クリプトコックス症: 皮膚原発の18例について検討した. 部位的には, 顔面, 頭部, 四肢, 躯幹にみられた. 初発症状は, 座瘡様丘疹, 膿疱が多く, 後に結節, 硬結, 肉芽腫等の形成がみられていた. 基礎疾患としてロイマ, 糖尿病, SLE, 腎結核がみられたが6例にすぎなかった. 治療剤では, ステロイド内服, イムラン投与が3例であった. 他に外傷が1例あった.<br>3. 皮膚アルテルナリア症: 深在型の5例の部位は顔面と上肢であった. 症状は虫蝕状, 丘疹, 膿疱であった. 誘因については詳かでなかった.<br>4. 皮膚ムーコル症: 5例の部位は全身, 四肢, 腹等で, 症状は丘疹, 膿疱, 結節, 肉芽腫等がみられた. 基礎疾患, 誘因として, 白血病, ギプス固定, 点滴固定, 古釘刺傷等があげられていた.<br>5. 今後注目されるものとして, 皮膚クルブラリア症, 皮膚ペシロミセス症等があげられる.
著者
石橋 康久 松本 雄二郎
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.188-192, 1985-09-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
13

わが国における角膜真菌症について検討するため1983年1月より12月までに角膜真菌症と診断された症例の有無, およびそれらがどのように診断, 治療されているかなどについてアンケート調査を行なった. 対象は昭和59年2月現在で日本眼科学会の専門医制度の研修施設に認定されている619施設である.1. 回答は344施設 (55.6%) より得られた344施設のうち症例のあったものが97施設 (28.2%) で合計176症例であった. これらの日本における分布を示した.2. 角膜真菌症と診断された176例のうち角膜実質の鏡検によるものが12.5%, 培養によるものが13.1%, 鏡検および培養によるものが21.0%, 経過および治療などによるものが53.4%であった.3. 治療に用いられた薬剤はピマリシンが最も多く82.4%であり, 次いでアムホテリシンB32.4%, 5-FC12.5%であった. その他ミコナゾール, ナイスタチン, ケトコナゾール, クロトリマゾールが少数使われていた.4. 診断については88.1%が難しい. 7.6%が容易であると答えた. 治療については難しいが93.3%であり, 容易であるが3.2%であった. 眼科用の抗真菌剤の必要性についてはほとんどが必要であると回答した.
著者
阿部 章彦 加藤 匡志 稲葉 鋭
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.254-259, 1989-12-25 (Released:2009-12-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1

鉄と真菌の相互作用について著者らが行ってきた実験結果をもとに深在性真菌症の組織応答の面から検討した.1) 鉄過剰状態による易感染性: 鉄過剰状態後のICRマウスに Candida albicans を接種すると, 早期に腎膿瘍が形成され, 仮性菌糸が認められたが, 対照群ではその時点で膿瘍内に真菌要素はみられなかった. すなわち, 鉄過剰は真菌症の組織学的所見には本質的な差異をもたらさなかったが, 真菌要素の発育促進に大きな影響を与えていた. 白血病マウスを用いた実験でも同様の結果であった.2) 血清鉄低下による感染抵抗性: Lipopolysaccharide あるいは muramyl dipeptide を前処置して血清鉄を低下させた後, アスペルギルスを接種すると, その発育速度の低下がみられ, 真菌病変の形成に時相のずれをきたした.3) UIBC (不飽和鉄結合能) の低下による易感染性: 糖尿病性ケトアシドーシスによるUIBCの低下は, Rhizopus oryzae の発育を促進した.4) トランスフェリン量低下による易感染性: D (+) galactosamine 肝障害は, トランスフェリン量を低下させ, カンジダの発育を促進した.以上の鉄代謝の変化による深在性真菌症の組織応答は, それぞれの対照群と比べ, 本質的な差異はなかったが, 鉄代謝の変化は真菌の発育の速さと病変の広がりに影響を与えていた.
著者
岩田 和夫 内田 勝久 奥平 雅彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.95-107, 1969-06-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1