著者
百瀬 響
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:13442562)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.93-108, 2020-08

本稿は,近代以前にアイヌ-和人間に行われていた様々な物資の交換に関し,余市場所を例に検討したものである。資料は『余市町史』資料編1収録の「林家文書」の解読済み文書を用い,特に1857(安政4)年におけるアイヌ-和人間の交換レートについて分析した。さらに,アイヌによる漁場労働に対し,威信財を含む「物々交換」として支払われる対価を試算したほか,和人が和人に対し売却した価格と比較した。その結果,対アイヌ,対和人間の各交換レートには,大きな相違はほぼ見られなかったものの,アイヌ-和人間交易において,対価として支払われた食料(米)と嗜好品(煙草)との交換レートに,いわゆる二重レートが存在する可能性が判明した。この二重レートの存在と運用実態は今後解明する必要があるが,このような近世の商習慣を通して,近世末から近代初期にかけてアイヌ-和人間で行われた交換の実態とその関係性を明確化しようと試みた。
著者
角 一典
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:13442562)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.33-45, 2020-08

本稿は,ジブリ映画,主に宮崎作品における,象徴としての四元素(風火水地)の意味について考察を加えたものである。本稿では,宮崎作品においては,風は自由・孤独,火は産業文明・近代国家・科学技術・武器等,水は,女性原理・自由奔放さ,地は生命を支える基礎でありながら,強度に汚染されてむしろ生命を脅かす存在と化しているものとして,象徴的に表現されていることを確認した。また,四元素は,風・水・地が相互に密接に関わりあいながら均衡を保っているが,唯一火だけがこれらに敵対する関係となっていることをみた。