著者
角 一典
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:13442562)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.47-62, 2021-02

本稿では,河川行政において激動の時代であった1990年代に河川局長を務めた近藤徹および青山俊樹の二氏の言説を手掛かりにして,河川官僚の考え・思想を読み解こうと試みた。以下では,長良川河口堰問題以前の河川行政に対する振り返り,従来の河川行政に欠いていたもの(=これからの河川行政に求められるもの),3つの個別政策(総合治水・利水安全度・スーパー堤防)に対する認識の三点について検討を加えた。そこからは,脱ダム時代に批判の対象となった河川官僚たちが,少なくとも意識の上ではきわめて開明的であり,官僚的な独善を脱して民主的なプロセスを重視していかなければならないという認識を有し,また,環境や生態系を重視することを当然と捉えていたことが明らかとなった。その一方で,治水や利水においては,巨大構造物がその基礎をなすという意識を強く持っていることも垣間見えた。