- 著者
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久住 武
久住 眞理
- 出版者
- 人間総合科学大学
- 雑誌
- 人間総合科学 (ISSN:13462598)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, pp.23-45, 2004-10-31
めまい患者が訴える症状には、自律神経の機能異常が関与していると考えられるものがある。そこで、我々はめまいと自律神経機能の関係をみる目的で起立で起こる収縮期血圧の変化を指標にして循環調節機能を検討した。この研究は、循環器疾患がないめまい患者125例を対象として行い、診断による分類と検査日のめまいの有無を基準に患者のグループ化を行った。検査方法は、Schellong testに準じて起立試験を行った。血圧は、非観血的連続血圧測定装置を用いて左右の中指で測定し、以下の3区間で結果を比較した。(1)起立直前の2分間、(2)起立後3-5分、(3)起立後8-10分。1解析パラメータは、RR間隔、収縮期血圧、血管運動性の交感神経活動、心臓の迷走神経活動、圧受容器反射とした。結果及び考察;(1)安静状態。RR間隔に及ぼす影響は、"診断分類"よりも"めまいの有無"の影響が強く、I群よりもH群が約100msec速かった。また、II群の収縮期血圧は、I群よりも約10mmHg高い値だった。(2)動的状態。起立試験でRR間隔は100-140msec短縮し起立後10分まで持続したが、正常者と患者群の差はなかった。起立試験で患者群の収縮期血圧は5-10mmHg上昇したが、正常者の変化より小さかった。しかし、一部の人は低下した。起立で上昇した血圧は正常者も患者群も10分後には少し元に戻る傾向があった。中でも、II群の血圧はほとんど変化が無く、II群のメニエール病の血圧は低下した。これらのことから、患者群の循環調節反応はRR間隔より収縮期血圧の反応が悪い事がわかった。この現象は、血管支配の交感神経活動の変化からも証明された。次に、起立に対する循環調節系の反応を△SYSを基準にして検討した。その結果、正常者の循環調節反応十は、以下に示す項目の相関係数が高かった。△SYS:△SYS-LF(r=0.86)、△SYS-LF:△BRS(r=-0.78)、△BRS:△RR-HF(r=0.59)、△RR-HF:△SYS(r=-0.58)。患者群は以下の通りである。△SYS-LF:△BRS(1群 r=-0.47、H群 r=-0.58)。更に、△SYS、△SYS-LF、△BRSの左右差について検討した。正常者はすべての項目で左右の相関関係が認められたが、患者群は△SYSだけだった。めまい患者の、静的な循環調節機能は動的な状態と異なっていると考えられる。安静時の高い心拍は副交感神経活動が低下していたことによる現象と考えられ、動的状態の血圧の変化は血管運動性の交感神経活動の興奮が低下していたための現象と考えられる。