著者
高村 哲郎
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.67-72, 2013-03-20 (Released:2019-04-25)
参考文献数
2

知的障害のある自閉症児の場合、行動のレパートリーの狭さから、教師の注目を得たい場合も、なんらかの意思表示の場合も、自傷・他傷など危険を伴う、チャレンジング行動を示す場合があるが、それは、その教師との関係でそれらの行動が繰り返されがちになっている、つまり誤学習が積み重なっていると考えられる場合が多い。本論文は、主担当者でなく、誤学習とも先入観とも無縁の立場を生かし、チャレンジング行動を頻発していた自閉症の高等部女子生徒に、短時間ながら「対立行動分化強化」を用いて適切な行動を導き、そこで得た変容の成果を当該児が属する作業班のみならず、学年・学級に波及させ、その後の学校生活に役立てることができた実践研究である。
著者
長南 幸恵
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.29-39, 2014

<p>自閉症スペクトラム児者の感覚の特性に対する支援を検討するために、過去30 年間の国内研究のレビューを行った。医中誌Web 版にて「自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder: 以下ASD)」と「感覚」を検索キーワードとし、対象や内容が関連のないものを除外した結果、52 件であった。これまで医学的診断基準に感覚の特性(過敏や鈍麻:以下特性)が盛り込まれていなかったことが影響していると思われたが、今後は増加していくと予測される。感覚の特性に関する研究では、文献数および扱っている感覚数共に最多であった作業療法分野がその中心を担っていると思われた。ASD 児の半数以上に感覚の特性が生じ、生活の困難と結びつき、その程度や種類も個別性が高い。したがって、個々にアセスメントする必要があるが、誰がいつどのようにアセスメントしていくのかは、今後の課題の1 つである。さらにASD 児の母親は、早期から感覚の特性に気がついていることが多く、それが母親の感じる育てにくさにつながっている可能性がある。したがって、母親の感じる育てにくさから支援を開始することがASD 児の早期診断、早期支援に繋がる可能性があるだろう。</p>