著者
塚本 まゆみ
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13477781)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.103-114, 2003-03-20

ハリウツド映画に登場した新しいタイプの行動的なヒロイン像の分析を通じて,性別役割分担論や女性の社会的地位に関する現実と理念の変容を読む。そこに現われた女性の自己決定への強い意志は,他方では身体を通じて表象されてきた「女性らしさ/男性らしさ」というジェンダー規範そのものの変容として表現されようとしており,そのような規範に対する根本的な疑問の出発点ともなり得るだろう。
著者
藤澤 益夫
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13477781)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-49, 2003-03-20

絶対に一過性の時間の流れのなかで,その速度を相対的に緩める努力の典型が情報の領域をめぐってみられる。それは,伝達速度改善の永い道程をへて,いまでは情報の生産と処理の全面におよぶが,情報伝達の即時性を高めるさまざまな工夫の文化史を近世日本を中心にして具体的にふりかえり,現代の情報社会のもつ社会的意味を考える。それを通じて,時間という資源の利用効率の飛躍的向上が拓く広大な可能性を評価し,反面で,管理社会での情報の集中的な支配と操作がもたらす危うさを問いかける。
著者
渡邉 亜子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13477781)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.21-30, 2004-03-20

対照分析仮説では、学習者は母語の影響を強く受け、言語間の類似点には正の転移、非類似点には、負の転移が働くととらえられてきた。しかし、1970年代以降、対照分析仮説に対する批判が強まり、現在は学習者には母語の違いにかかわらず共通の言語体系が存在するという中間言語理論にもとづく研究が増加している。本研究は、対照分析仮説と中間言語理論の両者に対する疑問点を、韓国語を母語とする日本語学習者の助詞「に」と「で」、「は」と「が」の運用の実態から考察し、正の転移についての新たな考え方を提案するものである。
著者
高野 敏樹
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13477781)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-19, 2004-03-20

憲法制定権力論は国家の基本法である憲法を制定する始源的な権力である。本稿ではこの理論を体系化したフランス革命期のシェイエスの理論をとりあげて,その理論の法的・政治思想的意味を,アンシャン・レジームの思想基盤であった神権主権論および統治契約理論と対比して考察し,シェイエスの憲法制定権力論の「主意的」側面が近代憲法理論の形成の原動力となったことを指摘した。