著者
ミルチャ アントン
出版者
[大阪市立大学大学院生活科学研究科・生活科学部]『生活科学研究誌』編集委員会
雑誌
生活科学研究誌 = Journal of human life science (ISSN:13486926)
巻号頁・発行日
no.14, pp.29-44, 2015

本研究の目的はソビエト期の1917-1936年の家族政策に焦点を当てることで, 反宗教活動を背景として策定された法律や布告の特徴を考察することである. そのうえで, ビジュアルイメージを通して社会意識をどのように変革する試みがあったのかを明らかにしつつ分析することである. 革命後の家族政策は家父長制に基づいた社会秩序の変革に重要な役割を果たしていた. 家族をめぐる法律を分析した結果, 政策のアクターであるソビエト政府の目的に, 女性の文化的・経済的な社会位置を向上する試みがあった. 一方で政府はまた, 女性を解放させる法律と布告を発布することで, 教会の勢力を弱めようとした. そしてソビエト政府には, 女性の解放を目指すと同時に労働階級の男女の自由と平等といった新しい共産主義の価値観を社会意に導入し確定する意図があった. その意図は, ビジュアル社会学の方法を用い, 当時のポスターの分析を行うことで確認できた.