著者
水谷 聖子 加藤 章子 大橋 裕子 丹羽 さゆり 岡部 千恵子 水谷 勇
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.33-41, 2005-03

性感染症、人工妊娠中絶件数の増加など思春期における性の現状は、適切な性教育が展開されていない火急の課題である。思春期における性教育の一方法としてピア(仲間)による方法の有効性は言われているが、B県ではピアによる性教育は実施されていなかった。ピアによる性教育の現状をふまえ、ピア・サポーターを養成しピア・サポーターによる生や性の教育を市民講座に設定して実施した。講座には、事例、グループワークやワンポイントリレー講義を導入した。受講生にとって事例を用いたグループワークは事例を通して客観的に話し合うことができ、その体験を自分自身の価値観と重ねて考える機会になっていた。また、アンケート結果からはグループで話し合うことで価値観の多様性に気づき、話し合いの過程においてわからなかったことや知りたいことが明確になり、ワンポイントリレー講義を通して知りたかった新たな知識を習得していた。ピアによる性教育が効果的に実施されるためには、地域社会で性に関する問題を共有していく基盤が不可欠であることはいうまでもないが、今後は、ピア・サポーターの養成やピア・サポーターによる教育の効果測定など一般化に向けての検証や修正をしていく必要がある。
著者
東野 督子
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.33-39, 2010-03

本調査は、イギリスの本学と同規模の看護大学での、成人看護学の教育現状とその中の「感染看護」について『どのような教育がされているのか』の示唆を得る目的で資料を収集した。Oxford Brookes University のAdult Nursing の担当教員へのインタビューや授業見学及び実習病院を見学して資料を収集した。Adult Nursing の実習目標は27 項目あり、この中に感染看護に関連するUniversal Precaution/Infection Control が含まれていた。実習記録のフレームは「実習指導者、単位認定者と学生とのコミュニケーション」、「実習実施の確認記録」、「学生自身が目標達成を計画する」の3 つの効果をねらって作成されていて、学生は「知識」、「技術」、「態度」の視点が示されている27 個の目標を「1.観察、2.監督下の元で看護を提供、3.手助けなく一人で行う」という段階を踏んで3 年間で目標を達成しながら学習する。のように年単位で積み上げていく記録を用いて看護の実践を体験することで、看護職を基盤として生涯にわたる学習をすることに繋がっていくと考える。
著者
中垣 紀子 川井 みつ子 神道 那実
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-40, 2007-03

近年、医療技術の進歩や医療機器の開発に伴い、周産期に亡くなる子どもの数は減少し、反面疾患により障害をもちながら成長し、学童期に達する子どもの数が増加している。本研究では、障害をもつ子どもがよりよい学校生活を送るために、養護学校と医療者や地域それぞれの役割と連携のあり方を検討する前段階として、養護学校における医療的ケアについての動向を概観した。その結果、以下の動向が明らかになった。1.かつては、障害をもつ子どもの教育において、就学猶予免除により医療的ケアが必要とされる障害をもつ子どもへの教育が大きく制約されていた。2.1979年、国は養護学校の義務制を実施したが、医療的ケアが必要な子どもを無理に通学させるのは危険であり、訪問教育にすべきであるという考え方が、教育・医療の中心であった。3.1980年代に普及したインクルージョン(共生)の概念は、生活年齢に相応する普通教育の環境を保障することに大きく影響した。4.看護師配置前は、医療的ケアが必要な子どもの通学は可能であるが、そのケアは家族が付き添い、実施することが条件であった。5.2003年以降、文部科学省と厚生労働省が連携して非常勤の看護師を配置するモデル事業を実施し、教育・医療・福祉における協力体制で整備しつつある。
著者
中垣 紀子 豊田 恭徳
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.5-11, 2005-03

本研究は、わが国における神経芽腫マススクリーニングにより、受診者は健康上の利益を得る可能性があるか、さらに得られる利益が損失を上回っているか、利益は費用を正当化できるかの医療経済的評価をすることを目的とした。1990年4月から1999年4月までに神経芽腫マススクリーニングを受診し、その後、首都圏のA小児専門病院を受診し生存している神経芽腫の小児67名とその両親を対象とした。医療費に関連するデータから、直接費、間接費などのパラメータを導入した分析を用い、個々および病期別に医療費を算出した。予後不良とされてはいるが神経芽腫マススクリーニングによって早期発見され治療を受けることにより、生存率が高いとみなされた進行例III期の場合の1人当たりの医療費(III期の小児を1人救命するための医療費)を推計した。この神経芽腫マススクリーニングの費用便益分析は、III期症例が神経芽腫マススクリーニングを受けることによって生存し得られる収入をシミュレーション結果によるサラリーマンの生涯収入合計3.1億円と仮定して分析をした。その結果、III期症例が神経芽腫マススクリーニングを受けることによって生存し得られる便益は、1人当たり1.6億円であった。しかし、この便益は、神経芽腫マススクリーニングをしなかった場合の節減される医療費34億円の経済的損失の上に成立しているとみなされた。