著者
和田 宏幸 青木 美智子 田宮 千春
出版者
医療法人茜会 昭和病院
雑誌
昭和病院雑誌 (ISSN:18801528)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.57-60, 2005 (Released:2005-09-13)
参考文献数
7

病棟にポータブル撮影に行くと、急いで遠くに逃げる人や、部屋の中にいるときに撮影すると、かなり離れていても「ああ、放射線あびちゃった」などと落胆する人がいます。このように、放射線が恐いと思っている人や、不安に思っている人が多いようです。それでは、ポータブル撮影はそんなに恐いものなのでしょうか。そして、どのくらい周囲にいる人に影響があるのでしょうか。 結論的には、胸部ポータブル撮影では2m、腹部でも3m離れていれば問題ないことが分かりました。それ故、本人が退室を希望される場合以外は、お見舞いに来られた方の退室の必要はありません。近年、報道されている原子力発電所の事故による大量被曝と医療被曝の違いを認識していれば、ポータブル撮影時の被曝を恐がる必要はないといえます。
著者
朝長 健太 櫻井 康雅 矢寺 和博 川波 敏則 西田 千夏 山崎 啓 中村 武博 吉井 千春 城戸 優光 佐多 竹良
出版者
医療法人茜会・社会福祉法人暁会学術委員会
雑誌
昭和病院雑誌 (ISSN:18801528)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.060-064, 2007-10-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
7

症例は1日25本×50年間の喫煙歴のある67歳男性。15年前から糖尿病の治療歴あり。健診での胸部レントゲン写真異常と労作時呼吸困難のため来院。受診時に低酸素血症(room air SpO2 86%)を認め、胸部レントゲン写真では、両肺野全域にわたる斑状網状影、胸部computed tomography (CT)では気管支周囲の間質を中心としたびまん性の斑状網状影、すりガラス影を認めた。経気管支肺生検にてcellular NSIPに矛盾しない所見が認められ、総合的に非特異的間質性肺炎(NSIP)と診断し、副腎皮質ステロイドパルス療法を含む治療を行い、軽快退院に至った。
著者
日野 篤 森永 康則 吉水 卓見 井上 友一
出版者
医療法人茜会 昭和病院
雑誌
昭和病院雑誌 (ISSN:18801528)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.141-147, 2007-03-01 (Released:2008-02-19)
参考文献数
5

医療法人茜会昭和病院は、介護療養型病棟240床、一般病棟68床、特殊疾患療養病棟38床、回復期リハビリテーション病棟56床の402床からなり、病床構成では全体の80%近くが療養型である。診療報酬体系の見直しにより、包括性への移行が推進されたことで、いくら経費を使おうと収入は決められていることから経費の把握と管理の必要性がでてきたため、当院では原価計算を用いて各病棟の損益を把握することとした。病院の各部署(病棟単位に部門を設定)を主部門、補助部門、費用部門の3種類の部門に分類し、主部門以外の収益・経費は、配賦基準値を算出し、その基準値に基づいて配賦を行うこととした。病棟以外の収益・経費を主部門に配賦することで、各病棟の採算性が把握できるようになった。また、原価計算を行うことで病院内での経費が細部まで把握できるようになったため、病院内の種々の不要経費を明らかにすることが可能となった。
著者
前田 夏子 吉水 卓見
出版者
医療法人茜会 昭和病院
雑誌
昭和病院雑誌 (ISSN:18801528)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.45-47, 2004 (Released:2005-05-20)
参考文献数
3

高齢者医療の現場では、患者さんで物忘れや、反応の鈍化、論理的理解の困難状況、新しい知識の理解と適応等において痴呆や知能の低下が来ていることをうかがわせる症例が多い。しかしながらこれ等が年齢相応の変化なのか、脳の障害が進んできたための症状なのかを、経験によって感覚的に理解するのは本人の意思や人権をも考えた場合、あまりよい診断方法ではないと考えられる。そこで登場してきたのが長谷川式知能テストであり、MMSEでもあった。これらも大変優れた方法であるが、本人が知能低下症との診断に拒否的になることもあり、真実を見出せないこともしばしば臨床で起こっていた。そこで我々は、知能検査と抑うつや心の変化に基づく異常等との関係を時計描画検査と、GDSを用いて比較評価を行った。結果: CDの導入は協力的で、実施は簡単、判定は早いが、投薬を受けている場合知能検査と抑うつ度については関連性を見出せないことが判った。
著者
松岡 成明 久澄 太一 吉水 卓見 福井 仁 松本 一弥
出版者
医療法人茜会・社会福祉法人暁会学術委員会
雑誌
昭和病院雑誌 (ISSN:18801528)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.7-11, 2004 (Released:2005-05-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1

松果体は、メラトニンを産生し、睡眠に関係していると考えられています。しかし、手術による松果体切除が、睡眠障害を生ずるか否かについて今日迄はっきりとした記載はありません。私たちは、松果体嚢腫および松果体細胞腫(pineocytoma)の2例の全摘出例について、その影響を検討したので、松果体腫瘍を全摘出した患者のメラトニン分泌とactigraphと睡眠日誌からみた睡眠・覚醒リズムについて報告します。症例1の術後1ヵ月および症例2の術前・術後のメラトニン分泌量は、いずれも2.5pg/dl以下で、日内変動もみられなかった。症例1の術後におけるactigraphからみた睡眠・覚醒リズムの乱れは基本的にみられなかった。14日間における夜間時の各睡眠パラメーターの平均(標準偏差)についてみると、就床時間が406.3分(75.6)、全睡眠時間が369.2分(75.2)、睡眠効率が90.8%(5.4)、中途覚醒時間が37.1分(22.7)、入眠潜時が7.2分(3.1)および昼寝時間が45.1分(39.1)であった。日々の睡眠パラメーターの変動も比較的小さかった。活動量のコサイナー分析の結果、Acrophaseは15~18時の範囲にあり、14日間の平均では、15:32(1:55)、Amplitudeは106.5(19.2)、Mesorは162.9(42.3)であった。最大エントロピー法による解析の結果、第1周期はほぼ24時間、第2周期は12時間であった。睡眠日誌から求めた睡眠パラメータは、actigraphから判定したものより、良く眠れていたと報告していた。症例1でみたように、症候性松果体嚢腫の全摘出術を受けたにもかかわらず、睡眠・覚醒サイクルは、ほぼ正常なリズムを維持していたものと推測された。しかし、症例2のように、術前のメラトニンの分泌レベルは、症例1の術後と同じレベルで日内変動もみられなかった。先行研究では、術前の高メラトニン濃度が松果体腫瘍の診断基準となると言われているので、今後さらに症例を重ねて検討したい。