- 著者
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奥田 真也
松岡 成明
毛利 元彦
- 出版者
- 学校法人 産業医科大学
- 雑誌
- 産業医大誌 (ISSN:0387821X)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.3, pp.247-261, 1988
- 被引用文献数
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7
大陸棚海域の開発に必要な水深300mの海中作業技術の確立と安全潜水技術の確立を目的として行われた横須賀の海洋科学技術センターの潜水シミュレーション実験に過去5年間参加した. 我々は二次元脳電図法を用いて, 1)高圧神経症候群(HPNS)に特有な脳波変化があるか, 2)脳波の変化と潜水時のHe-O<SUB>2</SUB>環境下での加圧・減圧速度との関係, 3)脳波の変化と特徴ある神経症状との相関の有無を検討した. 対象として,300m飽和潜水には17名(加圧速度25m/hr), 180mに6名(12m/min), 130mに6名(12m/min), 60mに13名(12m/min)の健康な飽和潜水経験者を採用した. 加圧時の環境制御は, 酸素分圧0.79bar, ヘリウム分圧29.91bar. 特徴ある脳波所見とし, 前頭正中部にθ波, およびdiffuse α波を, ときに痙撃波を認めた. 臨床的には全例にHPNSを認め, 上記脳波出現時に, 笑い発作, 多幸感が特徴的であった. これは高圧下のヘリウム麻酔効果による影響と推察されるが, ダイバーにより個人差がみられた. 従ってダイバーの選択並びに生理学的反応を知るには脳波学的検査は重要なモニターとなりうる.