著者
田中 宣秀
出版者
日本インターンシップ学会
雑誌
インターンシップ研究年報 (ISSN:18811663)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.17-25, 2011

イギリスはガイダンスやキャリア教育の先進国である。その源流と系譜を探り、現状と課題を明らかにすることにより、導入されて間もないわが国キャリア教育の拡充についての知見を得たいとの願いから検証を重ねた。その結果、イギリスは、職業体験教育に力を入れるとともに日本の公教育制度を参考にしてナショナル・カリキュラムを設定し、達成度を検証するための全国統一テストを導入したことが教育改革の端緒となったと確信した。特に、職業教育の強化を目指して全国職業資格制度(NVQ)を導入し、キャリア教育を教科として義務化したことが大きい。学内ではキャリア教育を、学外ではガイダンスを通じて若年者支援を目的とするコネクションズ・サービスを行なうことが、キャリア教育・ガイダンスの一つの終着点になったと判断している。コネクションズ・サービスに至る道に焦点を当てれば、1973年の教育(職業体験)法や雇用・訓練法を土台とし、保守党のサッチャー、メジャー、それに続く労働党のブレア政権が連続性をもって教育改革を推進してきた成果ともいえる。その上で、EU共通の教育政策や資格制度を積極的に取り入れるイギリスの若年者雇用施策は、真のグローバル化に直面しているわが国教育機関にとって参考となる。一方で、2014年に向けて歳出を810億ポンド(約11兆円)減らす財政再建を推進するなかで、教育関連費用をどこまで削減していくか、これから注視していく必要がある。
著者
真鍋 和博
出版者
日本インターンシップ学会
雑誌
年報 (ISSN:18811663)
巻号頁・発行日
no.13, pp.9-17, 2010-09-25
被引用文献数
2

様々な形態のインターンシップが展開されるようになったが、本稿ではその効果に着目し、インターンシップ経験による社会人基礎力の伸長と、就職活動への活用状況について実証的に分析を行う。1週間程度企業で就業体験を行うインターンシップを「日常業務型」、企業等から与えられた課題を長期間にわたってチームで解決していくプロジェクト型のインターンシップを「課題設定型」とした上で、2つの分析を行った。まず、インターンシップ経験前後で社会人基礎力が伸長したかどうかを質問紙でたずねた「社会人基礎力伸長調査」では、「日常業務型」、「課題設定型」双方で社会人基礎力の伸長がみられたが、その伸長状況には差異があることが判明した。特に、「課題設定型」では主体性、実行力、課題発見力、発信力が有意に伸長していた。次に、その後の就職活動において、比較的早期に内々定を獲得できた調査対象者に半構造化面接を行い、インターンシップ経験を就職活動にどのように活かしたのかを、M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を用いて分析した。「日常業務型」では経験で得た社会人としての規範意識を自己PRに、職業的気づきを志望動機に活用していた。「課題設定型」では伸長させた社会人基礎力を「自己PR」に、伸長させたコンテキストを「学生時代に力を入れたこと」のエピソードとして活用していた。
著者
河野 志穂
出版者
日本インターンシップ学会
雑誌
インターンシップ研究年報 (ISSN:18811663)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.9-15, 2011-12-25 (Released:2017-11-13)
参考文献数
8

本論文は、従来、職業意識の涵養や就業力の育成という観点から語られることが多かったインターンシップ経験に関し、大学ならではの知や認知面の能力・スキルの獲得にそれがいかなる効果を及ぼしているのかを明らかにしようとするものである。インターンシップ経験者・未経験者に、白身の能力・スキルの自己評価等をアンケート調査で尋ねた。分析の結果3点が明らかになった。(1)インターンシップ経験者はその経験を通じて対人スキルや自己管理能力の獲得に効果を感じており、因果関係を推論する力や文章読解・表現力といった認知能力、大学での専攻に関係した専門知識等の獲得にはあまり効果を感していない。(2)インターンシップ経験者と未経験者とでは、現在の能力・スキル等に対する自己評価は経験者の方が高く、特に「主体的に大学の学習に取り組もうとする」「遅刻をしない」「心や身体をコントロールする」「資格・検定をとろうとする意欲・努力」といった、個人に内在する意欲に近い項目で両者に有意な差がみられた。(3)インターンシップ経験者は、未経験者に比べ、大学の授業に対しその活用法を知りたいと望み、インターンシップが大学の専攻と関わりがあると認識しているにも関わらず、インターンシップが大学での学びに与えるフィードバックは少ないというジレンマがある。以上の知見をもとに、学生の意識や大学が提供するインターンシッププログラムのあり方が、インターンシップの効果の実感に影響を与えている可能性があるという示唆を導きだした。
著者
古別府 ひづる
出版者
日本インターンシップ学会
雑誌
年報 (ISSN:18811663)
巻号頁・発行日
no.14, pp.27-34, 2011-12-25

本稿では、大学日本語教員養成における海外日本語アシスタントの「社会人基礎力」が、日本語アシスタントの段階及び社会に出て起業した段階において、どのように発揮されたかを、被調査者1名のケーススタディとして示すことを試みた。PAC分析(個人別態度構造分析)と半構造化面接の手法を用いて調査した結果、「社会人基礎力」を誘発し、継続させる内発的要因として、未知への関心、自分の才能、周囲の期待、志などの自尊心を支えるものと、失敗や現状不満が、注目すべき変数として抽出できた。さらに、海外日本語アシスタントの特性として、パラフレーズする(言い換える)ことや多様性への関心が挙げられた。また、海外日本語アシスタントの「社会人基礎力」の外発的誘因として、格闘せざるを得ない環境や期間が、「問題の埋め込まれた情況」を生み出し、「社会人基礎力」を育成すると考えられた。これらの結果は、大学における「社会人基礎力」育成の場面の創出の手掛かりとなると考える。