著者
俵谷 好一 藤田 善正 西岡 毅 弘田 陽介
雑誌
大阪総合保育大学紀要 = Journal of Osaka University of Comprehensive Children Education (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-18, 2018-03-20

2017 年に告示された学習指導要領によって、各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントが導入された。そして、学校教育の改善・充実および評価のサイクルの実質化が各学校に求められるようになった。本稿では、この新しい流れを受けて、具体的な単元計画を提出し、体育と道徳の合科的な学習による身体と心をつなぐ二事例を提案したい。一つ目の事例である集団でのボールゲームでは、チームワークや他者への配慮を学ぶような道徳教材を組み入れて、個々の児童の立場や個性に応じた思考と技術が学べる単元計画を私たちは考えた。また二つ目には、私たちは個人の体操技術の向上のために、他の児童との対話が必要になるような設定と読み物を用意する。実技を行う児童と運動観察者の児童は、それぞれの運動についての工夫を考えるが、その際にどのように伝えるかというコミュニケーションの問題も含まれている。この二つの事例を通して、私たちは教科としての体育と道徳をつなぎ、その二つの教科の特性から複眼的に考え、対話するような授業実践(対話的実践)を構想する。このように、今日のカリキュラム・マネジメントの議論の文脈から、この事例を捉えなおし、より深い子どもたちの学びを促進するような提案をし、対話による心身のつながる実践を生み出していくことを本稿の目的としたい。
著者
弘田 陽介
雑誌
大阪総合保育大学紀要 = Osaka University of Comprehensive Children Education (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-16, 2017-03-20

要旨:2005 年の中央教育審議会の答申、2008 年の幼稚園教育要領の改訂を経て、幼児教育学・保育学の領域において、「協同」というキーワードが議論されるようになってきた。そして、現在、2018 年の幼稚園教育要領の改訂に向けて、新たな望ましい資質・能力としての「協同性」についての議論が深められている。このような経緯を踏まえ、本稿は、協同性概念を再定位しようとするものである。その際、これまでの一連の議論の主導者とも言える無藤隆の著作からその概念を抽出するが、そこから浮かび上がってくるのが「身体知としての協同性」である。この身体知という発想は、現在の幼児教育における協同性の捉え方にはあまり理論的には反映されていないものである。本稿論者は、今後身体から協同性を捉えなおしていくための準備作業として、この無藤の概念を手がかりに協同性概念の整理と経緯説明を行った。