著者
千葉 修 小林 文明 金田 昌樹
出版者
高知大学大学院黒潮圏海洋科学研究科
雑誌
黒潮圏科学 = Kuroshio Science (ISSN:1882823X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.169-174, 2012-03-25

To survey the weather at the time of the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake occurred on 11 March,2011, meteorological data were used for analysis.In particular, we examined the influence that the massive tsunami that came in the Sendai plains gave the atmosphere, based on AMEDAS data of the East Japan in addition to the weather data at 10-second intervalsof the Sendai district meteorological observatory. As a result, the southeastern wind blown in the coast of inland (Natori, Watari) from Sendai Bay is more likely to bewind with the tsunamis.
著者
市村 高男
出版者
高知大学大学院黒潮圏海洋科学研究科
雑誌
黒潮圏科学 (ISSN:1882823X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.174-187, 2013-03

鹿児島県三島村は、薩摩半島の南西海上に浮かぶ離島であり、竹島・硫黄島・黒島の三つの島からなる。これらの三つの島はトカラ列島とともに、中世日本の西の境界領域であった。この点に着目し、私は三つの島の文書・遺物の調査と遺跡の調査を実施した。本稿は、それらの成果を報告し、西の境界領域研究の新たな発展の基礎を固めた。また、本研究と黒潮トライアングルとの関係についても言及した。この研究によって、私は次ぎの点を明らかにした。まず第1に、三つの島の歴史的変遷を明らかにした。三つの島は、12世紀後半、13世紀末~14世紀前半、15世紀後半~16世紀後半に大きな画期があり、第3の画期が近世の島社会の出発点となった。第2に、硫黄島の三回目の変化は、島外からの新たな移住者である長浜家や岩切家らの活動によってもたらされた。長浜家は海の有力な商人であり、岩切家は硫黄採掘に関わる技術者であった。やがて長浜家は硫黄島の支配権を掌握し、君臨した。 第3に、竹島・硫黄島・黒島やトカラ列島がある海域は、多くの部分が黒潮の流れに洗われており、そこに点在する島は、航海する船の寄港地として重要な役割を果たしていた。島津氏や種子島氏らは、島の支配と商船の支配を一体的に考えていた。この海域の島々は、九州と沖縄との間の航海において、不可欠の存在であった。 第4に、この研究がフィールドとした島々や海域は、大半が黒潮トライアングルと重なっている。そこは人やモノの行き交う場であり、日本と琉球のせめぎ合いの場でもあった。それゆえ、この海域や島々の研究は、人文科学から黒潮トライアングルを考えることと深く関連する。自然科学と人文科学・社会科学との協働による研究の進展が望まれる。
著者
永野 一郎 吉富 文司 大嶋 俊一郎
出版者
高知大学大学院総合人間自然科学研究科黒潮圏総合科学専攻黒潮圏科学編集委員会
雑誌
黒潮圏科学 (ISSN:1882823X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.130-136, 2010-02

世界的な人口増加にともない食料の需要が増大し、水産資源の安定的な供給が求められている。天然魚に次ぐ供給源である養殖魚に期待が集まっているが、周辺環境におよぼす影響や持続的な餌資源の開拓など、解決すべき問題を多く抱えている。本研究では、生態学的特徴から飼育環境と餌の問題を解決しうる魚種としてピラルクー Arapaima gigas に着目し、将来的な持続型養殖魚としての可能性を検討した。まず、閉鎖型飼育設備での成長率と飼料変換効率を調べたところ、短期間で高い成長率と飼料変換効率が得られた。つぎに、従来の魚粉依存型飼料の代替として植物性タンパク質を含有した餌での成長率を測定したところ、高い成長率を得た。以上の結果から、ピラルクーは閉鎖型循環設備において、魚粉に依存しない餌により飼育することができ、持続型養殖魚種として将来的に人類の動物性タンパク源となりうると考えられた。Aquaculture has attracted a great deal of attention due to ongoing decline in natural fish stocks. However, aquaculture has problems that need to be resolved, such as the impacts of the culture system on the environment, sources and methods of obtaining feed and so on. It said that pirarucu (Arapaima gigas) grow up much faster than other fishes. Therefore, this study investigated the potential of pirarucu as a fish culture species. First, experimental fish were cultured in an enclosed culture system using a commercial feed. Second, fish were cultured using a feed that contained plant protein. The growth rate and feed conversion efficiency of pirarucu were high in an enclosed system. The fish also had an adequate growth rate with the plant protein feed. Pirarucu is a suitable fish species for aquaculture.
著者
佐藤 大紀 加藤 元海
出版者
高知大学大学院総合人間自然科学研究科黒潮圏総合科学専攻黒潮圏科学編集委員会
雑誌
黒潮圏科学 (ISSN:1882823X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.218-228, 2013-03

ニホンカワウソは、生息範囲が山から川、そして海に至るまで広く、生態系において上位捕食者に位置することから保全生態学的に重要な種である。日本で最後にニホンカワウソが確認された高知県の新荘川を対象に、生態学的な観点から現在と過去の河川環境を調べた。現在の河川環境に関しては、源流域から河口域に至る流程の8地点で河川地形や水質などの物理化学的環境、付着藻類や底生動物などの生物相の調査を行なった。過去の河川環境に関しては、文献調査と聞き込み調査を行なった。現在の河川環境は、上流域から下流域にかけて物理化学的環境と生物相に関して、流程に沿った顕著な変化の傾向はみられなかった。水質に関しては、過去から現在にかけてはわずかであるが改善する傾向にあり、水質の悪化がカワウソ絶滅の直接の要因ではなかったことが示唆される。明治初期から昭和初期にかけて乱獲で個体数が減少し、河川内にある堰の改修で主要な餌である魚類が減少した。河川周辺の植林やハウス栽培が原因で、水量が減少しさらなる魚類の減少をもたらした。乱獲に加え、1960年代以降、河川内改修や周辺環境の変化の人為的な3つの要因が重複したことがニホンカワウソの生息環境の著しい劣化を招き、1973年頃の気象災害による巣の破壊が新荘川からニホンカワウソの姿を消した決定的な要因と考えられる。