著者
嶋崎 東子
出版者
旭川大学保健福祉学部
雑誌
旭川大学保健福祉学部研究紀要 = The journal of Faculty of Health and Welfare Science, Asahikawa University (ISSN:18837247)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.37-44, 2018-03-31

少子高齢化,世帯規模の縮小が進むなか,「無縁」や「社会的孤立」,「孤独」といったことが社会問題化するとともに,高齢者をはじめとした大人の居場所づくりが課題とされるようになってきた。本稿においては,それらの概念とこれまで私が経験してきた都市を中心とした高齢者の生活調査で得られた知見とを結び付け,都市高齢者にとっての居場所や居場所づくりの意味を問い直すことが目的である。先行研究の中には,楽しめて気軽に交流できる場を「居場所」と捉えるものがみられる。もちろん,そのような居心地の良い場所としての「居場所」も必要であろう。しかし,要介護者や超高齢でない限りは,自らが関わって作っていく,自身の役割があり,他者に必要とされるような「居場所」も必要ではないだろうか。生活と生活空間の一部を共にする住まい方であるコレクティブハウジングや「ひろば」という共用空間を持ち,お茶や活動をしながら交流したり,自発的に助け合いのシステムを構築したりしていた高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)での居住者のあり方から,そのように考察した。
著者
宮﨑 理
出版者
旭川大学保健福祉学部
雑誌
旭川大学保健福祉学部研究紀要 = The journal of Faculty of Health and Welfare Science, Asahikawa University (ISSN:18837247)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-11, 2018-03-31

非自発的マイノリティは,アイデンティティや社会的ネットワークのあり方など,様々な事柄と深く関わる歴史的祖国をどのように位置付けているのであろうか。 本稿では,ウズベキスタンの朝鮮族を事例として,非自発的マイノリティにとっての歴史的祖国の位置付けについて検討することを目的とする。その目的のために,2017年5月,スターリン時代の1937年にロシア極東地域から中央アジアに強制移住させられた朝鮮族の子孫にインタビュー調査を実施した。 調査の結果,次のことが明らかになった。①一家がウズベキスタン社会に同化的に適応する戦略を採用してきた者のケースでは,歴史的祖国とのつながりは,私的な領域や心理的側面に限定されがちである。②一家がエスニック・マイノリティとして生き抜く戦略を採用してきた者のケースでは,ウズベキスタンで困難な社会的現実に直面しているなかにおいて,歴史的祖国は,生存の機会を展望する具体的な場所として位置付けられている。 非自発的マイノリティにとっての歴史的祖国の位置付けは,どのように社会に参入したかという歴史的背景だけでは捉え切れない。世代を重ねるにつれて,移動をめぐる祖先の物語よりも,ホスト社会で採用してきた戦略,直面している社会的現実,さらには歴史的祖国として想定される国の現状などの影響の方が大きくなる。そうした多様な影響を受けながら,人びとは自分なりに歴史的祖国との関係を再構築している。 Historical homeland is related to various things such as form of identity and pattern of social network.What kind of position is historical homeland for involuntary minorities that tend to be in difficult situations in host society? The purpose of this paper is to examine relation between involuntary minorities and historical homeland. The case in this paper is Korean in Uzbekistan. They are descendants of Koreans who were forced to move to Central Asia from the Russian Far East by Stalin in 1937. Interview surveys with two Koreans in Uzbekistan for this paper were conducted in May 2017. The results show : (1) in the case which family adopt the strategy that they assimilate in Uzbekistan society, relation with historical homeland are tend to be limited to the private sphere and psychological aspects; (2) in the case which family adopt the survival strategy that they are as ethnic minority, historical homeland is positioned as realistic place to have positive outlook on the chance of survival in the face of difficult social situation.
著者
吉澤 裕子
出版者
旭川大学保健福祉学部
雑誌
旭川大学保健福祉学部研究紀要 = The journal of Faculty of Health and Welfare Science, Asahikawa University (ISSN:18837247)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-5, 2019-03-31

本研究は,看護学生が学習課題や実習といったストレッサーに耐えられるような自己教育力の向上を目指した取り組みである。学生5~6人のグループ(グループ群)による授業のリフレクションと教員の介入(教員介入群)によるリフレクションの効果を,3分類14項目の側面から検証した。その結果,グループ群では14項目のうち13項目において,教員介入群では全項目において理論的中央値より有意に差があることが分かった。このことから,リフレクションが「創造的な学習」「コミュニケーション力」「学習に対する自覚的姿勢」の3分類において効果的であることが示唆された。また,グループ群と教員介入群の比較を行ったところ,グループ群よりも教員介入群の方がリフレクションの自己評価が高いことが明らかとなった。しかし,このリフレクションの目的は,学習効果の自覚的意識ではなく,自己教育力を養うことにある。そこで,自由記述を概観したところ,学習意欲が低く私語に流れる学生がいるなど,受身的傾向が強く,知識の定着や学びを深めるという自覚の希薄さが感じられる学生もみられた。また,グループディスカッションのねらいを理解して取り組んでいたとは言い難く,主体的な学びに繋がらない学生がいることも明らかとなった。これらのことから,本研究において,自己教育力を養うためにリフレクションの効果はあるものの,クラス全体の学習意欲を上げるなど参加型授業としての工夫が課題であることが分かった。