著者
高波 澄子
出版者
旭川大学保健福祉学部
雑誌
旭川大学保健福祉学部研究紀要 = The journal of Faculty of Health and Welfare Science, Asahikawa University (ISSN:18837247)
巻号頁・発行日
no.13, pp.15-22, 2021-03-31

人は,年齢を重ねるごとに心身機能の衰退や,病状の進行によって医療や介護を受けるために医療機関や介護施設への入院,入所を余儀なくされる。このような状況下,医療機関・介護施設における看護師による患者・入所者への身体拘束に関わる訴訟が提起されるようになった。【目的及び方法】本論文では最高裁が,看護師による高齢者への身体拘束の違法性を正面から判断した初めての事例を取り上げた。本判決は,本事案における看護師の看護のあり様をどのように判断しているのかを探り,そこから高齢者の尊厳を基盤とする看護には何が求められるかを考察した。【結果】身体拘束によって奪われるものは「個人の尊厳」である。抑制をしない看護の追及が個人の尊厳を基盤とする看護につながる。その看護とは,(1)患者・入所者の意思を尊重し,患者の意向に沿う看護,(2)高齢者のアイデンティティに依拠する尊厳を基盤とした看護;一人の患者としてのアイデンティティ(自己認識)から派生する尊厳をとおして患者が,自分自身を表出できるような関わりをもつ。(3)患者の内に在る尊厳(人としての価値)を見据えて患者と看護師の関係性を構築する,の3つである。【結論】「抑制のない看護」を模索するということは,一人の患者・入所者に真摯に向き合い,親身に対応し,その人の意思を尊重しようとする看護のあり様である。そして患者一人ひとりの尊厳を基盤とする看護につながることが期待される。
著者
鎌田 とし子 鎌田 哲宏 大野 剛志 栗田 克実 羽原 美奈子 高波 澄子 信木 晴雄 佐々木 悟 豊島 琴恵 嶋崎 東子 松浦 智和 松岡 昌則 北島 滋 山下 由紀夫 中澤 香織 石川 紀子 菅原 千鶴子
出版者
旭川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、北海道北部地域にある集落を3か所(北海道中川郡音威子府村、増毛郡増毛町、上川郡東川町)選び、①限界集落、②維持集落、③再生・発展集落とし、3者の比較を行うことで、集落の限界化が進行する社会的要因を探求する実態調査を行った。その結果、人口流出を阻止する要因は5万円程度の雇用機会であり、最低生活を維持できる自給経済と、無償の相互援助関係の存在であった。生産性の高い農地は、借り手と買い手がいるため、農業企業が出現し、周辺地域に雇用市場が発生した。また、子育て支援策と団地造成で人口流入が進むことが明らかになった。