著者
蜂須 貢 貝谷 久宜
出版者
昭和大学薬学雑誌編集委員会
雑誌
昭和大学薬学雑誌 (ISSN:18847854)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.17-28, 2010-03

不安障害の治療において、従来のベンゾジアゼピン系抗不安薬に加え、セロトニン1A(5-HT1A)部分作動薬や選択的セロトニン再取り込み阻害剤が使用されている。更に、最近臨床応用された抗鬱薬ミルタザピンも5-HT2A/5-HT2C受容体拮抗作用を持つことから、重症な不安障害に対する効果が期待される。これらの薬剤の特性をよく理解し治療を行うことにより、高い治療効果が得られる。
著者
中島 美紀
出版者
昭和大学薬学雑誌編集委員会
雑誌
昭和大学薬学雑誌 (ISSN:18847854)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.129-141, 2013-12

タバコの主成分であるニコチンには依存性があり、喫煙者は体内のニコチン濃度を一定に保とうとして喫煙する。体内に摂取されたニコチンがそのまま尿中に排泄されるのは10%程度であり、ニコチンの体内からの消失には肝臓における代謝が大きく寄与している。主な代謝経路はCYP2A6によるコチニンとそれに続くトランス-3'-水酸化コチニンへの酸化反応である。また、ニコチンとコチニンは主にUGT2B10によりN-グルクロニドへ、トランス-3'-水酸化コチニンは主にUGT2B17によりO-グルクロニドへ代謝される。ニコチンの代謝能には大きな個人差や人種差が認められ、CYP2A6、UGT2B10やUGT2B17の遺伝子多型に起因するところが大きい。特に、酵素活性を低下または欠失させるCYP2A6遺伝子変異型を有するヒトでは、ニコチンの消失半減期が延長し、代謝プロファイルも大きく変化する。CYP2A6遺伝子変異は喫煙習癖性や発がん感受性に影響を与えることも示されている。日本人は欧米人や韓国人に比べてニコチン代謝能が低く、その要因としてCYP2A6欠損型および変異型の遺伝子頻度が高いことが大きいが、食事や環境など非遺伝的要因も関わっている。CYP2A6の発現はエストロゲン受容体、酸化ストレス応答転写因子NF-E2 related factor 2、プレグナンX受容体などの転写因子によって調節されており、その転写活性化機構もニコチン代謝能の個人差や性差の原因となっている。禁煙補助剤としてニコチンガムやニコチンパッチを使用する際、ニコチン代謝能が低いヒトではニコチンの血中濃度が高くなり、有害作用が現れる可能性があり、注意が必要である。(著者抄録)
著者
蜂須 貢
出版者
昭和大学薬学雑誌編集委員会
雑誌
昭和大学薬学雑誌 (ISSN:18847854)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.57-70, 2011-06

2011年現在、新規抗うつ薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)としてフルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)としてミルナシプランおよびデュロキセチン、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)としてミルタザピンの計6剤が日本国内で使用可能である。これらはいずれもモノアミンの遊離を脳内で促進し、うつ病に効果をもたらすと考えられている。その中でもミルタザピンは特異な薬理作用を持っており、アドレナリンα2受容体を阻害する結果ノルアドレナリンとセロトニンの遊離を促進する(詳細は本文参照)。SSRIやSNRIは抗うつ効果発現までに服薬開始後2~4週間を要するが、NaSSAミルタザピンは抗うつ効果発現は約1週間と速やかである。これはモノアミン再取り込み阻害作用と受容体拮抗作用の違いで説明される。また、うつ病では前頭前野や海馬の機能および容積の低下が認められている。一方、抗うつ薬および抗うつ作用を示す療法(電気けいれん療法など)では海馬などで神経新生が認められている。抗うつ薬の長期投与ではうつ病の再発予防効果が認められており、抗うつ薬による神経新生がうつ病患者の脳機能を強化していると考えられるに至っている。これらの作用について経時的な神経系の活性化とモノアミン受容体の役割についてSSRIとNaSSAを比較しながら概説した。(著者抄録)
著者
畠中 岳 伊藤 良 小林 靖奈 山元 俊憲
出版者
昭和大学薬学雑誌編集委員会
雑誌
昭和大学薬学雑誌 (ISSN:18847854)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.85-90, 2012-07

東日本大震災の発生時は、電気・ガス・水道などのライフラインが寸断され、食料や医薬品などの物流も途絶えたため、孤立した地域が多く発生した。薬局業務では、ライフラインの復旧まで、被災を免れた医薬品を有効に活用する必要性に迫られた。また、長時間の停電のため、電子天秤による秤量が困難となった。さらに、飲料水の確保も困難で、限られた水量で調剤や服薬を維持しなければならなかった。被災者の中には、調剤や服薬における最低限の水量の確保、状態に応じた少量の散剤の秤量を必要とする患者がみられた。そのため、秤量が困難で、確保できる水量が限られた震災時には、服薬の継続ができなくなった患者の病状悪化が懸念された。本症例報告では、昨年の東日本大震災時、薬剤師の提案により、本来経管投与に利用される簡易懸濁法を経口投与で活用し、嚥下障害を有する患者に対して服薬援助が継続できたので報告する。(著者抄録)
著者
渥美 聡孝:筆頭著者 八木 仁史 木内 祐二
出版者
昭和大学薬学雑誌編集委員会
雑誌
昭和大学薬学雑誌 (ISSN:18847854)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.175-183, 2011-12

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、地震後に発生した津波によって東北地方沿岸部に多大な被害をもたらした。昭和大学では、岩手県下閉伊郡山田町に3月15日~4月16日までの計33日間、医療救援隊を派遣し、活動期間内にのべ約3,000人の診療を行った。また、避難所の衛生管理も行うことで被災者の健康管理に寄与することができた。薬剤師は主に医薬品の管理・調剤と往診時の薬の選択(代替薬や新規処方)と患者情報の収集を行い、さらにはバイタルサインの測定など、患者データも自ら収集した。往診時には、医薬品バックを自作し、持ち運ぶ医薬品として必要最小限の薬を選ぶことに最も苦心した。調剤以外に薬剤師の職能を活かす場としては、公衆衛生の管理があり、実際に薬剤師達は感染症を防ぐために手洗い・うがいなどの励行、避難所のトイレ掃除を行った。普段の業務と同様、緊急時にも薬剤師の活動の場は多数あり、チーム医療の中で無くてはならない存在だということを実感した。薬学生が今後、チーム医療の一員として活躍するためにも、教職員は学生に対して他職種とのコミュニケーション能力を重点的に育成し、医療系の知識・技能においては卒後教育を含めて取り組んでいく必要がある。(著者抄録)