著者
大沼 眞廣 石崎 力久 北 愛里紗 北田 文華
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.8-12, 2020 (Released:2020-01-05)
参考文献数
19

毛巣洞は体毛の刺入などによって発生する疾患で,仙骨部に好発する。その手術方法に関してはさまざまな報告があるが,われわれは殿裂の平坦化を目的として transposition flap を施行している。今回この方法を施行した過去約6年間18例に関して,疫学的特徴とともにその術後経過を調査した。結果,当科で治療を行った患者は男性や若年者,肥満者が多く,職業に関しては一定の傾向を認めないという過去の報告と類似した特徴をもっていた。そして毛巣洞手術で最も焦点となる再発率は,18例中,6ヵ月以上の経過観察が可能であった11例で9.1%と十分に低く,transposition flap は有用な方法であると考えられた。一方で創離開を生じる割合は高く,今後はその割合を減少させる方法を検討する必要がある。
著者
山本 有祐 仲沢 弘明 櫻井 裕之
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.65-73, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
20

広範囲熱傷の治療には全身管理,局所療法,救命後の機能・整容的再建が必要となる。急性期に全身管理を担う救急医のみならず,一連の治療を通し,麻酔科医による疼痛管理,精神科医の睡眠調整・精神的介入,さらに専門看護師をはじめ,医療工学士,理学療法士,薬剤師などのコメディカルとのチーム医療が重要である。治療の当面のゴールは熱傷創閉鎖であり,一貫して治療に携わる創傷外科医がリーダーとなり,焼痂切除・皮膚移植を基軸とした治療計画を立案・実行することが重要であると考える。創傷外科医がリーダーになるには,1.創閉鎖のための確固たるスキルをもち,2.患者の全身状態を把握し,それに応じた局所管理を選択し,3.将来起こりうる障害を予測し,対応策を立案でき,4.関連各診療科・各部署と密なコミュニケーションをとれることなどがあげられる。
著者
中野 俊二
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.170-177, 2013 (Released:2013-07-01)
参考文献数
15

レーザー光による皮膚表面外科治療では,常にselective photothermolysisに基づいたthermal relaxation time(TRT)を考慮する必要がある。TRTより照射時間が長くなると,chromophoreに発生した熱の拡散により周囲の熱損傷が大きくなる。炭酸ガスレーザーではそのような危険度が大きく,蒸散組織周囲に必ず認められる蛋白変性層が厚いほど創傷治癒は遅れる。特に東洋人では創傷治癒遷延が2週間をこえると肥厚性瘢痕を形成することが多い。また,肉芽増殖が不十分にもかかわらず上皮化した,陥凹を伴う萎縮性瘢痕などにも注意を要する。今回は肥厚性瘢痕と萎縮性瘢痕に対し波長595nmのロングパルスダイレーザー(Vbeam®,Vbeam Perfecta®)を用い,パルス幅20~30msec,出力6J/cm2,cooling/delayを30/30ないし40/20とまったくの同条件下で治療した。肥厚性瘢痕は平低化し,萎縮性瘢痕の消失や軽減が観察された。さらに,肌理の出現などskin textureの改善が認められ,真皮浅層においてコラーゲンの再構築が行われたことが示唆された。
著者
黒川 正人 柳沢 曜 川崎 雅人 岩山 隆憲 長谷川 弘毅
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.167-173, 2012 (Released:2012-10-01)
参考文献数
9

われわれは巻き爪に対して, 全抜爪を行わず, 爪甲露出部のみの部分抜爪を行ったのちに手術を行っている。 両側の側爪郭に切開を加えて, 爪床骨膜弁は双茎皮弁として挙上する。 このときに, 中枢側に切開を延長して, 弯曲している部分の爪母は切除する。 次に, 骨ヤスリを用いて末節骨遠位部の骨棘を削り, 末節骨背側も平坦化する。 最後に, 側爪郭の皮膚を2~3mm の幅で脱上皮して, その上に双茎爪床骨膜皮弁を両側に開いて縫合する。 本法を9例22趾に対して施行し, 全例において形態は改善し, 症状も軽快した。 全抜爪を行わないために, 術後の爪甲変形は少なく, 爪甲が元の長さまで戻る期間も短かった。 また, 爪床骨膜弁は双茎皮弁として挙上するので, 血行は良好で, 創傷治癒にも有効であった。
著者
宮島 哲
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.160-166, 2012 (Released:2012-10-01)
参考文献数
8

巻き爪症例に対して,小坂らの術式 (1999年,日形会誌) を用いた手術を施行した。 2000年4月から2011年3月までの12年間に手術を施行した68症例125趾中, 6ヵ月以上経過観察できた60症例111趾を対象とした。 術後成績は, 爪変形もなく疼痛等の症状がないものは79趾 (71%), 軽度爪変形を残したが症状が軽快したものは16趾 (14%) で, 改善を認めたものは85% であった。 また陥入爪変形が生じたものは12趾 (11%) で, 再発を生じたものは3症例5趾 (4%) であった。 本手術法は85% の改善を認め, 有用な術式と考える。 down time が長いという短所があるが, 治療効果が良好であるので, 症例を選べば手術療法も有用と考える。
著者
戎谷 昭吾 稲川 喜一 長島 史明 木村 知己
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.47-53, 2015 (Released:2015-04-01)
参考文献数
12

下腿皮膚欠損創は下腿前面中央部では軟部組織に乏しく,骨露出や異物露出を伴う場合では治療に難渋することがある。1966 年に Ger が下肢潰瘍に対しヒラメ筋,腓腹筋内側頭を用いて再建を行って以来,今まで数多くの筋皮弁を用いて再建を行った報告がある。 今回われわれは下腿皮膚欠損創に対し,ヒラメ筋弁,内側腓腹筋弁,遠位茎の内側腓腹筋弁を用いて再建を行った 3 例を経験した。それぞれの筋弁に長所・短所があるが,特に遠位茎の内側腓腹筋弁の場合,血管茎が遠位側に存在するため,従来の腓腹筋弁では不可能であった下腿中央部での組織欠損に対しても使用することが可能であった。この方法はヒラメ筋弁のような煩雑な剥離作業がないため,手術手技は容易であり手術時間も短いため,多くの症例に対して使用することが可能である有用な筋弁であると考えられた。